「ブモオオオオオ!」
「なっ!?」
俺の背後から飛び出してきたのはイノシシだった。それも元の世界では見たことないほどの大きさだ。
ドドドドドド
ものすごい速さで俺に向かって突っ込んでくる。それもなんて鋭いキバだ。確か元の世界でもイノシシに襲われた時に一番怖いのはあのキバだったはずだ!
こんな勢いであのキバが突き刺さったら、大怪我を負うことは間違いない。しかし身体がまったく動かない。イノシシが猛スピードで突っ込んできているのに、一歩たりとも動くことができない……
「ワイルドボアか。ロイヤ達にこの魔物からの護衛はまだ早いな」
「……へっ?」
猛スピードで突っ込んでくるイノシシと俺の間にリリアが割り込んできた。
「ふんっ!」
「ブモッ!?」
「んなっ!?」
突然俺の前に現れたリリアが巨大なイノシシの突進を片腕で止めた。多少はその勢いに後ずさったものの、物理の法則を完全に無視したかのような光景だ。その細身のどこにそんな力があるのかと疑ってしまう。
「ふっ!」
「ブモオ……」
そしてそのまま右腕でイノシシを弾き飛ばし、一瞬でイノシシへ向かって走りだしたと思ったら、次の瞬間にはイノシシの首から血が噴き出していた。俺にはまったく見えなかったが、いつの間にか剣を抜いてイノシシの喉元を斬り裂いたようだ。
「す、すげえ! あれがBランク冒険者の力か!」
「速すぎて全然見えなかったわ!」
「あの巨大なワイルドボアを一撃とは……」
俺もようやく硬直が解けたようだ。本当に命の危機を感じてしまった。ゴブリンに襲われそうになった時の比ではなかったぞ……リリアが助けてくれなければ、俺は死んでいたに違いない。
「リリア、ありがとう。本当に助かったよ!」
「気にするな。テツヤを守るのは護衛である私達の仕事だ。それに私ももらった依頼料分は働かないとな」
かっけえええ! リリアさんマジかっけえっす!
「ロイヤ、森の中では視界も悪い。それに敵のほうから今みたいに不意打ちを仕掛けてくる時もある。先程ニコレもファルも言っていたが、常に気は抜かないことだな」
「おす!」
「ニコレ、確かに獣人の感覚は鋭いが、あまりそれを過信しないことだ。先程のように会話をしている最中には、より周囲の状況を意識したほうがいいぞ」
「はい!」
「ファル、先程のワイルドボアの襲撃に一番反応できたのはお前だった。あとはそれと同時に武器の弓まで構えられていれば完璧だったな」
「うす!」
リリアがロイヤ達にアドバイスをしていく。強いだけでなく、人に教えることも得意なんだな。うん、リリアは教師に向いているかもしれない。
「よし、それじゃあこいつを近くの川まで持っていくか」
そう言うとリリアは巨大なイノシシを右腕一本で軽々と持ち上げた。スキルなのか、魔法なのか、純粋な力なのかはわからないが、ものすごい光景だな……
「……あれがBランク冒険者か。いつか絶対に俺も!」
「格好いい……」
「弓をすぐに構える……弓をすぐに構える……」
ロイヤ達にもいい刺激となったらしい。高ランク冒険者の戦闘は本当に凄まじいものだった。たぶんあれでも全然本気じゃないんだろうな。
そのまま森の入り口のほうにある川まで移動してきた。たぶん俺が異世界に来た初日に来た川だと思う。しかしこの森がこれほど大きいとは思わなかった。この森にやってきた時に逆方向に進んでいたらと思うとゾッとする。
「悪いが解体は任せてもいいか?」
「おす! もちろんです!」
ワイルドボアはゴブリンと違って食べることが可能だ。解体して必要な肉は街まで持ち帰るのだが、さすがのリリアも片腕での解体は難しいようだ。
ロイヤ達も先程のリリアの戦闘を見て、より一層リリアに敬意を表している。やはり冒険者にとって強さは重要な意味を持つらしい。
動物を解体するところを見たのは初めてだったが、なかなか精神的にくるものがある。特に内臓を取り出す際、俺には直視できるものではなかった。つくづく冒険者には向いてないんだろうな。
「よし、ここまで来ればもう大丈夫だろう」
「ふう〜、なんにもしていないのに凄い疲れたよ」
無事にイノシシの解体作業を終え、不要な部位を地面に埋めて、肉を担いで街の門の前まで戻ってきた。
「むしろよくついてきたほうだ。朝テツヤを見た時は、たぶん途中でへばるだろうなと思っていたぞ」
「おう……」
最近運動はしてなかったとはいえ、キャンプによく出かけていた甲斐はあったようだ。そして悲しいことに精神的な面ではかなり鍛えられていたからな、主にブラック企業にだが……
「しかし本当にワイルドボアの肉はいらないか?」
「うん、今は宿屋に泊まっていて食事が出るから大丈夫だよ」
ワイルドボアの肉についてはロイヤ達のパーティとリリアで半分に分けることになった。俺にも少し譲ってくれると言われたのだが、戦闘もしていないし、解体もイノシシを押さえるくらいしかしていなかったので、丁重にお断りした。
肉を少しだけもらって自炊をとも少し考えたが、今は宿に泊まっているし、香辛料も売ってしまったからな。もう少し身の回りが落ち着くまでは、屋台の食事や宿のご飯で我慢するとしよう。
ロイヤ達も今回の依頼でいろいろと勉強させてもらったから、自分達もいらないと断ったのだが、駆け出し冒険者はまだ大変だろうと半分にすることになった。リリアみたいな駆け出し冒険者に優しい人達がいるから、この街はとてもいい街なんだろう。
「なっ!?」
俺の背後から飛び出してきたのはイノシシだった。それも元の世界では見たことないほどの大きさだ。
ドドドドドド
ものすごい速さで俺に向かって突っ込んでくる。それもなんて鋭いキバだ。確か元の世界でもイノシシに襲われた時に一番怖いのはあのキバだったはずだ!
こんな勢いであのキバが突き刺さったら、大怪我を負うことは間違いない。しかし身体がまったく動かない。イノシシが猛スピードで突っ込んできているのに、一歩たりとも動くことができない……
「ワイルドボアか。ロイヤ達にこの魔物からの護衛はまだ早いな」
「……へっ?」
猛スピードで突っ込んでくるイノシシと俺の間にリリアが割り込んできた。
「ふんっ!」
「ブモッ!?」
「んなっ!?」
突然俺の前に現れたリリアが巨大なイノシシの突進を片腕で止めた。多少はその勢いに後ずさったものの、物理の法則を完全に無視したかのような光景だ。その細身のどこにそんな力があるのかと疑ってしまう。
「ふっ!」
「ブモオ……」
そしてそのまま右腕でイノシシを弾き飛ばし、一瞬でイノシシへ向かって走りだしたと思ったら、次の瞬間にはイノシシの首から血が噴き出していた。俺にはまったく見えなかったが、いつの間にか剣を抜いてイノシシの喉元を斬り裂いたようだ。
「す、すげえ! あれがBランク冒険者の力か!」
「速すぎて全然見えなかったわ!」
「あの巨大なワイルドボアを一撃とは……」
俺もようやく硬直が解けたようだ。本当に命の危機を感じてしまった。ゴブリンに襲われそうになった時の比ではなかったぞ……リリアが助けてくれなければ、俺は死んでいたに違いない。
「リリア、ありがとう。本当に助かったよ!」
「気にするな。テツヤを守るのは護衛である私達の仕事だ。それに私ももらった依頼料分は働かないとな」
かっけえええ! リリアさんマジかっけえっす!
「ロイヤ、森の中では視界も悪い。それに敵のほうから今みたいに不意打ちを仕掛けてくる時もある。先程ニコレもファルも言っていたが、常に気は抜かないことだな」
「おす!」
「ニコレ、確かに獣人の感覚は鋭いが、あまりそれを過信しないことだ。先程のように会話をしている最中には、より周囲の状況を意識したほうがいいぞ」
「はい!」
「ファル、先程のワイルドボアの襲撃に一番反応できたのはお前だった。あとはそれと同時に武器の弓まで構えられていれば完璧だったな」
「うす!」
リリアがロイヤ達にアドバイスをしていく。強いだけでなく、人に教えることも得意なんだな。うん、リリアは教師に向いているかもしれない。
「よし、それじゃあこいつを近くの川まで持っていくか」
そう言うとリリアは巨大なイノシシを右腕一本で軽々と持ち上げた。スキルなのか、魔法なのか、純粋な力なのかはわからないが、ものすごい光景だな……
「……あれがBランク冒険者か。いつか絶対に俺も!」
「格好いい……」
「弓をすぐに構える……弓をすぐに構える……」
ロイヤ達にもいい刺激となったらしい。高ランク冒険者の戦闘は本当に凄まじいものだった。たぶんあれでも全然本気じゃないんだろうな。
そのまま森の入り口のほうにある川まで移動してきた。たぶん俺が異世界に来た初日に来た川だと思う。しかしこの森がこれほど大きいとは思わなかった。この森にやってきた時に逆方向に進んでいたらと思うとゾッとする。
「悪いが解体は任せてもいいか?」
「おす! もちろんです!」
ワイルドボアはゴブリンと違って食べることが可能だ。解体して必要な肉は街まで持ち帰るのだが、さすがのリリアも片腕での解体は難しいようだ。
ロイヤ達も先程のリリアの戦闘を見て、より一層リリアに敬意を表している。やはり冒険者にとって強さは重要な意味を持つらしい。
動物を解体するところを見たのは初めてだったが、なかなか精神的にくるものがある。特に内臓を取り出す際、俺には直視できるものではなかった。つくづく冒険者には向いてないんだろうな。
「よし、ここまで来ればもう大丈夫だろう」
「ふう〜、なんにもしていないのに凄い疲れたよ」
無事にイノシシの解体作業を終え、不要な部位を地面に埋めて、肉を担いで街の門の前まで戻ってきた。
「むしろよくついてきたほうだ。朝テツヤを見た時は、たぶん途中でへばるだろうなと思っていたぞ」
「おう……」
最近運動はしてなかったとはいえ、キャンプによく出かけていた甲斐はあったようだ。そして悲しいことに精神的な面ではかなり鍛えられていたからな、主にブラック企業にだが……
「しかし本当にワイルドボアの肉はいらないか?」
「うん、今は宿屋に泊まっていて食事が出るから大丈夫だよ」
ワイルドボアの肉についてはロイヤ達のパーティとリリアで半分に分けることになった。俺にも少し譲ってくれると言われたのだが、戦闘もしていないし、解体もイノシシを押さえるくらいしかしていなかったので、丁重にお断りした。
肉を少しだけもらって自炊をとも少し考えたが、今は宿に泊まっているし、香辛料も売ってしまったからな。もう少し身の回りが落ち着くまでは、屋台の食事や宿のご飯で我慢するとしよう。
ロイヤ達も今回の依頼でいろいろと勉強させてもらったから、自分達もいらないと断ったのだが、駆け出し冒険者はまだ大変だろうと半分にすることになった。リリアみたいな駆け出し冒険者に優しい人達がいるから、この街はとてもいい街なんだろう。