「おおっ、これは柔らかくて便利だな!」
「おしりが痛くないよ!」
「うん、多少だけど効果はありそうだな」
アウトドアクッションあるいはアウトドアマットとはキャンプや登山などの際に使うクッションやマットのことである。用途によって座布団サイズのクッションから、寝るときに使用するマットほどのサイズのものがある。
そしてその中には3つの種類がある。
ひとつ目はインフレーターマットと呼ばれ、ウレタンという素材でできており、そこに空気を入れるとちょうどよい弾力性と反発性を兼ね備えている。厚さも10cm以上あるものなんかはとても柔らかく寝心地がよい。欠点として荷物としては大きく、重いという点だな。
ふたつ目はエアーマットと呼ばれ、空気を入れることによって膨らませて使用する。空気を抜いて持ち運べるのでとても軽く、弾力性もあるので寝心地もよい。欠点としては破れて破損しやすいことと、大きいものは空気を入れるのが大変という点だな。
最後はクローズドセルマットと呼ばれ、ポリエチレン製の折りたためるマットだ。とても軽くて上記ふたつのように破れて破損することはないので、登山の際などには重宝される。欠点としてはかさばることと、厚さがほどんどないのでクッション性は少し弱いという点だな。
今回は長い荷馬車の座席に合わせて分厚いインフレーターマットを3つ購入した。多少大きいが、ランジェさんやフェリーさんの収納魔法に十分入るからな。
「これは便利ですわね!」
「すごい、だいぶ楽になった!」
ちなみにベルナさんとフェリーさんには昨日俺のストアの能力のことについて話してある。2人にはこれから定期的に運搬をお願いするわけだし、今回も護衛のためについてきてくれるわけだからな。
もっと驚かれるのかとも思ったが、他のみんなと同じようにそこまで驚かれることはなかった。まあ、異世界といっても外国みたいなものだし、フェリーさんが使っていた召喚魔法のような仕組みの分からない魔法がある世界だものな……ストアの能力も魔法の延長線上として考えられているのかもしれない。
「寒い時には寝袋の下に敷くと断熱効果があって、多少温かく眠れるんだけれど、このあたりはあんまり寒くないから需要はないと思っていたんだ。だけど馬車のクッションとかには便利かもしれないな」
「そうだな。クッションのある馬車なんて貴族くらいしか持っていないだろうし、あの街の冒険者にはあまり売れないかもしれないが、馬車の御者には売れるんじゃないか」
アウトドアショップの能力がレベル4になってマットを購入できるようになったが、アレフレアの街ではそもそも泊りがけの依頼がほとんどない。それにそこまで寒くもないから需要がまったくないと思っていた。
だけどこの世界の馬車のサスペンションはそこまで良い性能ではないし、魔物の羽毛などで作ったベッドやクッションは非常に高価なものに分類される。
ドルファの言う通り、馬車を扱っている人達の需要があるかもしれないし、販売を検討してみてもいいかもしれない。
「……ちょっと止まる」
「みなさん、馬車を止めますので、しっかりと馬車に掴まっていてくださいね」
前にいたフェリーさんとベルナさんが突然馬車を止めると言われて、馬車にしがみついた。そして馬車は思ったよりも急にスピードを落として停車した。
「どうしたの! なにかあった!?」
「魔物が道の先にいるだけ。問題ない」
「私達で問題なく対処できますので、少しだけそのままお待ちください」
「魔物……」
俺がこの世界にやってきて見たことがあるのはゴブリンとワイルドボアだけだ。あのアレフレアの街の近くにいる魔物は弱い魔物しかいないらしいが、もう街からはだいぶ離れている。いったいどんな魔物なんだ……
「あれはブラックブルだ。以前テツヤの見たことがあるワイルドボアよりも少し強い魔物で、Dランク冒険者相当の魔物だな」
リリアから丁寧な説明が入る。荷馬車にある窓から前方を見てみると、そこには普通の牛よりも大型で、角も大きく黒い牛のような魔物がいた。ベルナさんが馬車からひとりで降りて、先のほうにいるブラックブルのほうへ進んでいく。
フェリーさんが召喚したそれよりも大きなスレイプニルが引くこの馬車に気が付いていないし、それほど強い魔物ではないのかもしれない。……まあ、それでも戦闘能力のない俺には倒せる気がしないけれどな。
「Aランク冒険者のベルナさんがどう戦うのか興味があるな」
「ベルナお姉ちゃん大丈夫かなあ……」
ドルファはベルナさんの戦い方に興味があるようで、フィアちゃんはベルナさんを心配している。フェリーさんもリリアもベルナさんのことをまったく心配していないようだし、問題はなさそうだし、俺もこの世界のAランク冒険者がどのように戦うのか興味がある。
確かベルナさんのふたつ名は灼熱帝と言っていたし、炎系の魔法を使うのだろうか。
「ブモオオオオ!」
ベルナさんが近付くと、ブラックブルは一気に突進してきた。どうやらかなり好戦的な魔物のようだ。対するベルナさんは落ち着いて腰に携えていたロングソードを抜いて、ブラックブルに向けて両手で構えた。
「せいっ!」
ザンッ
そして次の瞬間には巨大なブラックブルの首が宙へと舞った。俺に見えたのはそれだけで、ベルナさんが剣を振るう姿もブラックブルの首を斬る瞬間も見えなかった。
「……少ししか動きが追えなかった。しかもあれはまだまだ本気の動きじゃないな」
「ああ、ベルナの剣の腕は王都でも五指に入る。それにベルナの本気はまだこんなもんじゃないぞ」
「う~ん、今のならなんとか避けられそうだけれど、あれより速かったら難しそうかな」
「身体強化魔法を使っていないのにあの速さだから困る」
ドルファ、リリア、ランジェさん、フェリーさん達がベルナさんの強さについて語っているが、俺やフィアちゃんやアンジュにはまったくわからなった。
「おしりが痛くないよ!」
「うん、多少だけど効果はありそうだな」
アウトドアクッションあるいはアウトドアマットとはキャンプや登山などの際に使うクッションやマットのことである。用途によって座布団サイズのクッションから、寝るときに使用するマットほどのサイズのものがある。
そしてその中には3つの種類がある。
ひとつ目はインフレーターマットと呼ばれ、ウレタンという素材でできており、そこに空気を入れるとちょうどよい弾力性と反発性を兼ね備えている。厚さも10cm以上あるものなんかはとても柔らかく寝心地がよい。欠点として荷物としては大きく、重いという点だな。
ふたつ目はエアーマットと呼ばれ、空気を入れることによって膨らませて使用する。空気を抜いて持ち運べるのでとても軽く、弾力性もあるので寝心地もよい。欠点としては破れて破損しやすいことと、大きいものは空気を入れるのが大変という点だな。
最後はクローズドセルマットと呼ばれ、ポリエチレン製の折りたためるマットだ。とても軽くて上記ふたつのように破れて破損することはないので、登山の際などには重宝される。欠点としてはかさばることと、厚さがほどんどないのでクッション性は少し弱いという点だな。
今回は長い荷馬車の座席に合わせて分厚いインフレーターマットを3つ購入した。多少大きいが、ランジェさんやフェリーさんの収納魔法に十分入るからな。
「これは便利ですわね!」
「すごい、だいぶ楽になった!」
ちなみにベルナさんとフェリーさんには昨日俺のストアの能力のことについて話してある。2人にはこれから定期的に運搬をお願いするわけだし、今回も護衛のためについてきてくれるわけだからな。
もっと驚かれるのかとも思ったが、他のみんなと同じようにそこまで驚かれることはなかった。まあ、異世界といっても外国みたいなものだし、フェリーさんが使っていた召喚魔法のような仕組みの分からない魔法がある世界だものな……ストアの能力も魔法の延長線上として考えられているのかもしれない。
「寒い時には寝袋の下に敷くと断熱効果があって、多少温かく眠れるんだけれど、このあたりはあんまり寒くないから需要はないと思っていたんだ。だけど馬車のクッションとかには便利かもしれないな」
「そうだな。クッションのある馬車なんて貴族くらいしか持っていないだろうし、あの街の冒険者にはあまり売れないかもしれないが、馬車の御者には売れるんじゃないか」
アウトドアショップの能力がレベル4になってマットを購入できるようになったが、アレフレアの街ではそもそも泊りがけの依頼がほとんどない。それにそこまで寒くもないから需要がまったくないと思っていた。
だけどこの世界の馬車のサスペンションはそこまで良い性能ではないし、魔物の羽毛などで作ったベッドやクッションは非常に高価なものに分類される。
ドルファの言う通り、馬車を扱っている人達の需要があるかもしれないし、販売を検討してみてもいいかもしれない。
「……ちょっと止まる」
「みなさん、馬車を止めますので、しっかりと馬車に掴まっていてくださいね」
前にいたフェリーさんとベルナさんが突然馬車を止めると言われて、馬車にしがみついた。そして馬車は思ったよりも急にスピードを落として停車した。
「どうしたの! なにかあった!?」
「魔物が道の先にいるだけ。問題ない」
「私達で問題なく対処できますので、少しだけそのままお待ちください」
「魔物……」
俺がこの世界にやってきて見たことがあるのはゴブリンとワイルドボアだけだ。あのアレフレアの街の近くにいる魔物は弱い魔物しかいないらしいが、もう街からはだいぶ離れている。いったいどんな魔物なんだ……
「あれはブラックブルだ。以前テツヤの見たことがあるワイルドボアよりも少し強い魔物で、Dランク冒険者相当の魔物だな」
リリアから丁寧な説明が入る。荷馬車にある窓から前方を見てみると、そこには普通の牛よりも大型で、角も大きく黒い牛のような魔物がいた。ベルナさんが馬車からひとりで降りて、先のほうにいるブラックブルのほうへ進んでいく。
フェリーさんが召喚したそれよりも大きなスレイプニルが引くこの馬車に気が付いていないし、それほど強い魔物ではないのかもしれない。……まあ、それでも戦闘能力のない俺には倒せる気がしないけれどな。
「Aランク冒険者のベルナさんがどう戦うのか興味があるな」
「ベルナお姉ちゃん大丈夫かなあ……」
ドルファはベルナさんの戦い方に興味があるようで、フィアちゃんはベルナさんを心配している。フェリーさんもリリアもベルナさんのことをまったく心配していないようだし、問題はなさそうだし、俺もこの世界のAランク冒険者がどのように戦うのか興味がある。
確かベルナさんのふたつ名は灼熱帝と言っていたし、炎系の魔法を使うのだろうか。
「ブモオオオオ!」
ベルナさんが近付くと、ブラックブルは一気に突進してきた。どうやらかなり好戦的な魔物のようだ。対するベルナさんは落ち着いて腰に携えていたロングソードを抜いて、ブラックブルに向けて両手で構えた。
「せいっ!」
ザンッ
そして次の瞬間には巨大なブラックブルの首が宙へと舞った。俺に見えたのはそれだけで、ベルナさんが剣を振るう姿もブラックブルの首を斬る瞬間も見えなかった。
「……少ししか動きが追えなかった。しかもあれはまだまだ本気の動きじゃないな」
「ああ、ベルナの剣の腕は王都でも五指に入る。それにベルナの本気はまだこんなもんじゃないぞ」
「う~ん、今のならなんとか避けられそうだけれど、あれより速かったら難しそうかな」
「身体強化魔法を使っていないのにあの速さだから困る」
ドルファ、リリア、ランジェさん、フェリーさん達がベルナさんの強さについて語っているが、俺やフィアちゃんやアンジュにはまったくわからなった。