「グレゴさん、お久しぶりです」
「お邪魔するぞ」
「おう、テツヤにリリアか。すまんが、あとちっとだけ待ってくれ」
「はい、もちろんです」
冒険者ギルドを訪れた翌日。鍛冶屋のグレゴさんから例の食品を保存するパックができたから来てほしいという連絡があったので、お店の営業が終わったあとに、リリアと一緒に鍛冶屋へやってきた。
店員さんにも顔を覚えられたようで、今回は受付に行くと直接グレゴさんのところへ案内してくれた。そこはグレゴさんが仕事をおこなっている部屋らしく、大きな炉に火が入っており、グレゴさんがカーンカーンと槌を振るっていた。
リアルにドワーフが槌を振っている姿を見ると、なんだか感動してしまう。炉の燃え盛る炎の前で、赤く輝く金属に何度も何度も槌を打ちつける。金属と槌がぶつかるたびに火花が飛び散り、カーンという高い音が鳴り響いていく。
そしてその真剣な眼差しはすべて鍛えている金属へと注がれている。元の世界で日本刀を打つ姿もこのような感じだったのかもしれない。
「ふう……待たせてしまってすまんな」
「いえ、全然待っていませんよ。それに剣を打つところを初めて見ましたけれど、本当にすごい迫力でした」
グレゴさんはこのアレフレアの街では一級の鍛冶職人だ。もちろん王都にはグレゴさんを超える超一級の鍛冶師もいるらしいが、始まりの街と呼ばれるこの街では一二を争う腕前らしい。
この街で元Bランク冒険者のリリアの武器や防具を整備できる数少ない人だ。……改めてこれほどすごい人にこんな依頼を頼んでよかったのかは疑問ではある。
「カッカッカ、たいして面白いもんでもないがのう。さて、以前に依頼を受けた袋だが、いくつかの魔物の素材を使って試してみて、一番出来が良かったのがこいつだ。とりあえず試しに5つほど作ってみたぞ」
グレゴさんが取り出したものは茶色い長方形の袋であった。
「おおっ。これが例の袋なんですね」
「うむ。熱に強く液体を通さない素材でできており、3方向をしっかりと塞いである。物を入れる部分には留め金でしっかりと閉じてから上の部分を巻いて固定すれば、ほぼ密閉された状態になるはずじゃ。そこそこ丈夫な素材だから、何度も繰り返して使うこともできる」
「おおっ、それはすごいですね! こちらの理想通りです」
受け取った袋を試しに閉じてみると、完全に中の空気が漏れないようになっていた。閉じる部分が二重になっているため、かなりしっかりと密閉できるようだ。
あとは実際に試してみて食品の保存が可能になるのかと、どれくらいの期間保存が可能なのかを確認してみるとしよう。これで食品の長期保存が可能になれば、ようかんやチョコレートバー、レトルトカレーの販売も可能となるな。
「素材に関してはそこそこでワシ以外でも作ることは可能じゃが、量産するのならば多少の時間と費用はかかると思うぞ」
「なるほど」
当たり前だが、この世界では機械による大量生産はできないので、この保存パックは職人さんがひとつひとつ手で作っていくことになる。店で使うために量産をするのなら、多少の時間と費用がかかるそうだ。
「ちなみにこれをひとつ作るとどれくらいの費用がかかりそうですか?」
「そうじゃな……ひとつにつき銀貨5枚といったところじゃろう」
銀貨5枚ということは約5000円くらいか……思ったよりもかかるな。
「これでも加工料はだいぶ安くしておるつもりじゃぞ。以前にもらった菓子が販売されるのはワシも嬉しいからな。それに得意先のリリアの依頼でもあるからのう」
「すまないな、グレゴ殿」
「ありがとうございます。まずはこれで試してみて、大丈夫そうでしたら改めて大量に注文させていただくと思います」
たとえ値段が高くても、今販売しているインスタントスープの木筒のような感じで、保存パック代も含めた価格で販売をして、容器を買い取ればいいだろう。そうすれば実際には中に入れていた中身の料金だけですむことになるからな。
とりあえず実際にようかんやチョコレートバーやレトルトカレーを入れてみて、1週間以上持つかを確認してみるとしよう。
「いや、こちらもなかなか面白い依頼じゃったぞ。武器や防具を鍛えるのも面白いが、こうやって新しいものをいろいろと考えながら、少しずつ試行錯誤してみるのも面白いものじゃ」
「本当にお世話になりました。これは先日のお菓子です。それとこっちは知人からいただいた特別製の燻製肉のおすそ分けになります。とてもお酒と合っていておいしいですよ。どちらもお早めに召し上がってくださいね」
「おおっ、こいつはすまんのう! あとでゆっくりと楽しませてもらうわい」
前回ここに来た時も持ってきたようかんとチョコレートバーに加えて例のワイバーンの燻製肉も少しだけおすそ分けする。グレゴさんも大の酒好きらしいから、きっと楽しんでくれるだろう。
試作品にかかった金額はこちらが提示してあった上限金額の半分くらいだったから非常に助かった。こちらでもいろいろと試してみて問題ないようならば、すぐに大量生産できるようグレゴさんのほうでも準備をしてくれるそうだ。うまく保存期間が延びてくれればいいんだけどな。
「お邪魔するぞ」
「おう、テツヤにリリアか。すまんが、あとちっとだけ待ってくれ」
「はい、もちろんです」
冒険者ギルドを訪れた翌日。鍛冶屋のグレゴさんから例の食品を保存するパックができたから来てほしいという連絡があったので、お店の営業が終わったあとに、リリアと一緒に鍛冶屋へやってきた。
店員さんにも顔を覚えられたようで、今回は受付に行くと直接グレゴさんのところへ案内してくれた。そこはグレゴさんが仕事をおこなっている部屋らしく、大きな炉に火が入っており、グレゴさんがカーンカーンと槌を振るっていた。
リアルにドワーフが槌を振っている姿を見ると、なんだか感動してしまう。炉の燃え盛る炎の前で、赤く輝く金属に何度も何度も槌を打ちつける。金属と槌がぶつかるたびに火花が飛び散り、カーンという高い音が鳴り響いていく。
そしてその真剣な眼差しはすべて鍛えている金属へと注がれている。元の世界で日本刀を打つ姿もこのような感じだったのかもしれない。
「ふう……待たせてしまってすまんな」
「いえ、全然待っていませんよ。それに剣を打つところを初めて見ましたけれど、本当にすごい迫力でした」
グレゴさんはこのアレフレアの街では一級の鍛冶職人だ。もちろん王都にはグレゴさんを超える超一級の鍛冶師もいるらしいが、始まりの街と呼ばれるこの街では一二を争う腕前らしい。
この街で元Bランク冒険者のリリアの武器や防具を整備できる数少ない人だ。……改めてこれほどすごい人にこんな依頼を頼んでよかったのかは疑問ではある。
「カッカッカ、たいして面白いもんでもないがのう。さて、以前に依頼を受けた袋だが、いくつかの魔物の素材を使って試してみて、一番出来が良かったのがこいつだ。とりあえず試しに5つほど作ってみたぞ」
グレゴさんが取り出したものは茶色い長方形の袋であった。
「おおっ。これが例の袋なんですね」
「うむ。熱に強く液体を通さない素材でできており、3方向をしっかりと塞いである。物を入れる部分には留め金でしっかりと閉じてから上の部分を巻いて固定すれば、ほぼ密閉された状態になるはずじゃ。そこそこ丈夫な素材だから、何度も繰り返して使うこともできる」
「おおっ、それはすごいですね! こちらの理想通りです」
受け取った袋を試しに閉じてみると、完全に中の空気が漏れないようになっていた。閉じる部分が二重になっているため、かなりしっかりと密閉できるようだ。
あとは実際に試してみて食品の保存が可能になるのかと、どれくらいの期間保存が可能なのかを確認してみるとしよう。これで食品の長期保存が可能になれば、ようかんやチョコレートバー、レトルトカレーの販売も可能となるな。
「素材に関してはそこそこでワシ以外でも作ることは可能じゃが、量産するのならば多少の時間と費用はかかると思うぞ」
「なるほど」
当たり前だが、この世界では機械による大量生産はできないので、この保存パックは職人さんがひとつひとつ手で作っていくことになる。店で使うために量産をするのなら、多少の時間と費用がかかるそうだ。
「ちなみにこれをひとつ作るとどれくらいの費用がかかりそうですか?」
「そうじゃな……ひとつにつき銀貨5枚といったところじゃろう」
銀貨5枚ということは約5000円くらいか……思ったよりもかかるな。
「これでも加工料はだいぶ安くしておるつもりじゃぞ。以前にもらった菓子が販売されるのはワシも嬉しいからな。それに得意先のリリアの依頼でもあるからのう」
「すまないな、グレゴ殿」
「ありがとうございます。まずはこれで試してみて、大丈夫そうでしたら改めて大量に注文させていただくと思います」
たとえ値段が高くても、今販売しているインスタントスープの木筒のような感じで、保存パック代も含めた価格で販売をして、容器を買い取ればいいだろう。そうすれば実際には中に入れていた中身の料金だけですむことになるからな。
とりあえず実際にようかんやチョコレートバーやレトルトカレーを入れてみて、1週間以上持つかを確認してみるとしよう。
「いや、こちらもなかなか面白い依頼じゃったぞ。武器や防具を鍛えるのも面白いが、こうやって新しいものをいろいろと考えながら、少しずつ試行錯誤してみるのも面白いものじゃ」
「本当にお世話になりました。これは先日のお菓子です。それとこっちは知人からいただいた特別製の燻製肉のおすそ分けになります。とてもお酒と合っていておいしいですよ。どちらもお早めに召し上がってくださいね」
「おおっ、こいつはすまんのう! あとでゆっくりと楽しませてもらうわい」
前回ここに来た時も持ってきたようかんとチョコレートバーに加えて例のワイバーンの燻製肉も少しだけおすそ分けする。グレゴさんも大の酒好きらしいから、きっと楽しんでくれるだろう。
試作品にかかった金額はこちらが提示してあった上限金額の半分くらいだったから非常に助かった。こちらでもいろいろと試してみて問題ないようならば、すぐに大量生産できるようグレゴさんのほうでも準備をしてくれるそうだ。うまく保存期間が延びてくれればいいんだけどな。