「アンジュもドルファも問題なく一緒に働けそうでよかったぞ」
「そうだね。特にドルファは最初どうなるかと思ったけれど、少しずつ元の接客に戻ってきてくれてよかったよ」
アンジュが働き始めてから3日が経ったが、今のところは大きなトラブルもなく、お店は順調だ。ドルファの接客も少しずつアンジュを意識しないようになってきている。……あくまでも表面上だがな。
例のアンジュのストーカーも今のところアウトドアショップには現れてはいない。念のためにアンジュからストーカーの容姿を聞いて、ドルファ以外の従業員に共有してある。もしも店に現れたら、こっそりと合図を送ってくれるように伝えている。
向こうが何をしてくるかはわからないが、ストーカーの様子を見張ったり、リリアかランジェさんに頼んで、アンジュの近くにいてもらうことはできる。
「アンジュの往復もドルファがいれば問題ないだろう。ドルファもこの街では相当な強者だからな」
ドルファはCランク冒険者になっても、アンジュがこの始まりの街にいたために、別の街に移動しなかった。そのため実力的には普通のCランク冒険者よりも上らしいので、大抵の輩に遅れをとることはないだろう。
「そうだね。店も変えたことだし、ストーカーも諦めてくれればいいんだけどな」
そのストーカーがどのレベルのストーカーなのかはわからないのでまだ油断はできない。
元の世界でもヤバいストーカーはいたからな。少なくとも当分の間は用心しておこう。
「それで、今日は冒険者ギルドになんの用なんだ?」
今日はお店の仕事が終わったあとに護衛のリリアと一緒に冒険者ギルドへ向かっている。
「図鑑の件で話があるってさ。たぶんこの前渡した魔物図鑑が完成したんじゃないかな」
今日の営業中に冒険者ギルドから、お店の営業が終わったら冒険者ギルドに顔を出してほしいと言伝を受けた。図鑑のことらしいので、地図に引き続いて大元の図鑑からの写本が終わったのかもしれない。
「テツヤさん、お忙しいところ足を運んでいただいて申し訳ないです」
「おう、テツヤ! 仕事が終わったあとに悪いな」
いつも通り冒険者ギルドマスターの部屋に案内されると、ギルドマスターのライザックさんと副ギルドマスターのパトリスさんがいた。
「大丈夫ですよ。新しく従業員をもうひとり雇えたので、多少は楽になってきましたからね」
アンジュが増えたことにより、俺達従業員の負担もだいぶ減ってくれた。やはり接客経験があり、即戦力のアンジュを雇えたのはだいぶ助かるな。
相変わらず朝だけは結構な冒険者のお客さんが並んでくれているが、店のキャパシティ的に入れる人数は限られているので、こればかりは仕方がない。
「そのあたりも聞いているぜ。なんでも美人な店員が入ったんだってな」
「冒険者達の間でも噂になっておりましたよ。残念ながら彼氏がいると嘆いている冒険者もおりましたね」
……すごいな。もうそこまで情報が伝わっているのか。SNSみたいな情報共有ツールもないのに早すぎるだろ。
「その件についてひとつ相談があります。実はその女性はドルファの妹さんでですね……」
アンジュには許可を取って、冒険者ギルドのこの2人には事前に事情を話しておくことにした。2人はドルファが超が付くほどのシスコンであることを知っているし、協力を仰いでおこうと考えたわけだ。……まあドルファがやり過ぎた時のための保険だな。
「なるほど、そんな事情が……」
「ふざけた野郎だ。今すぐとっちめてやりたいところだが、さすがに何も被害がない状況だと、俺達冒険者ギルドや街の衛兵が手を出すのは難しいかもしれねえな」
やはり実際に被害が出ないと冒険者ギルドや衛兵は動くことができなそうだ。
「ええ。ドルファにはストーカーのことについて話していないですが、それ以外の従業員は情報を共有しているので、妹さんを守ることはこちらでもできそうです。とはいえ、何かあった時には冒険者ギルドに協力をお願いしたいと思います」
主にやり過ぎてしまった際には、多少の便宜を図ってほしいということである。リリアやドルファは元冒険者だし、ランジェさんは現役の冒険者、多少は冒険者ギルドでも手を回せることはあるだろう。
「……承知しました。協力店に何かあれば、冒険者ギルドが協力するのは当然のことですからね。協力できそうなことがありましたら、遠慮なく相談してください」
さすがパトリスさん、瞬時に状況を把握してくれたみたいだ。たぶん俺が不安に思っていることも理解してくれただろう。
「よく分からねえが、何か力になれることがあれば力を貸すぞ」
できればライザックさんの手は借りたくないものである。ライザックさんは正義感の強い人だから、むしろドルファと一緒にストーカーをボコボコにしてしまいそうで怖い……
「ありがとうございます、何かあった時にはよろしくお願いします」
「よろしく頼む」
俺とリリアでパトリスさんとライザックさんに頭を下げた。もし何かあれば、遠慮なく相談させてもらうとしよう。
「そうだね。特にドルファは最初どうなるかと思ったけれど、少しずつ元の接客に戻ってきてくれてよかったよ」
アンジュが働き始めてから3日が経ったが、今のところは大きなトラブルもなく、お店は順調だ。ドルファの接客も少しずつアンジュを意識しないようになってきている。……あくまでも表面上だがな。
例のアンジュのストーカーも今のところアウトドアショップには現れてはいない。念のためにアンジュからストーカーの容姿を聞いて、ドルファ以外の従業員に共有してある。もしも店に現れたら、こっそりと合図を送ってくれるように伝えている。
向こうが何をしてくるかはわからないが、ストーカーの様子を見張ったり、リリアかランジェさんに頼んで、アンジュの近くにいてもらうことはできる。
「アンジュの往復もドルファがいれば問題ないだろう。ドルファもこの街では相当な強者だからな」
ドルファはCランク冒険者になっても、アンジュがこの始まりの街にいたために、別の街に移動しなかった。そのため実力的には普通のCランク冒険者よりも上らしいので、大抵の輩に遅れをとることはないだろう。
「そうだね。店も変えたことだし、ストーカーも諦めてくれればいいんだけどな」
そのストーカーがどのレベルのストーカーなのかはわからないのでまだ油断はできない。
元の世界でもヤバいストーカーはいたからな。少なくとも当分の間は用心しておこう。
「それで、今日は冒険者ギルドになんの用なんだ?」
今日はお店の仕事が終わったあとに護衛のリリアと一緒に冒険者ギルドへ向かっている。
「図鑑の件で話があるってさ。たぶんこの前渡した魔物図鑑が完成したんじゃないかな」
今日の営業中に冒険者ギルドから、お店の営業が終わったら冒険者ギルドに顔を出してほしいと言伝を受けた。図鑑のことらしいので、地図に引き続いて大元の図鑑からの写本が終わったのかもしれない。
「テツヤさん、お忙しいところ足を運んでいただいて申し訳ないです」
「おう、テツヤ! 仕事が終わったあとに悪いな」
いつも通り冒険者ギルドマスターの部屋に案内されると、ギルドマスターのライザックさんと副ギルドマスターのパトリスさんがいた。
「大丈夫ですよ。新しく従業員をもうひとり雇えたので、多少は楽になってきましたからね」
アンジュが増えたことにより、俺達従業員の負担もだいぶ減ってくれた。やはり接客経験があり、即戦力のアンジュを雇えたのはだいぶ助かるな。
相変わらず朝だけは結構な冒険者のお客さんが並んでくれているが、店のキャパシティ的に入れる人数は限られているので、こればかりは仕方がない。
「そのあたりも聞いているぜ。なんでも美人な店員が入ったんだってな」
「冒険者達の間でも噂になっておりましたよ。残念ながら彼氏がいると嘆いている冒険者もおりましたね」
……すごいな。もうそこまで情報が伝わっているのか。SNSみたいな情報共有ツールもないのに早すぎるだろ。
「その件についてひとつ相談があります。実はその女性はドルファの妹さんでですね……」
アンジュには許可を取って、冒険者ギルドのこの2人には事前に事情を話しておくことにした。2人はドルファが超が付くほどのシスコンであることを知っているし、協力を仰いでおこうと考えたわけだ。……まあドルファがやり過ぎた時のための保険だな。
「なるほど、そんな事情が……」
「ふざけた野郎だ。今すぐとっちめてやりたいところだが、さすがに何も被害がない状況だと、俺達冒険者ギルドや街の衛兵が手を出すのは難しいかもしれねえな」
やはり実際に被害が出ないと冒険者ギルドや衛兵は動くことができなそうだ。
「ええ。ドルファにはストーカーのことについて話していないですが、それ以外の従業員は情報を共有しているので、妹さんを守ることはこちらでもできそうです。とはいえ、何かあった時には冒険者ギルドに協力をお願いしたいと思います」
主にやり過ぎてしまった際には、多少の便宜を図ってほしいということである。リリアやドルファは元冒険者だし、ランジェさんは現役の冒険者、多少は冒険者ギルドでも手を回せることはあるだろう。
「……承知しました。協力店に何かあれば、冒険者ギルドが協力するのは当然のことですからね。協力できそうなことがありましたら、遠慮なく相談してください」
さすがパトリスさん、瞬時に状況を把握してくれたみたいだ。たぶん俺が不安に思っていることも理解してくれただろう。
「よく分からねえが、何か力になれることがあれば力を貸すぞ」
できればライザックさんの手は借りたくないものである。ライザックさんは正義感の強い人だから、むしろドルファと一緒にストーカーをボコボコにしてしまいそうで怖い……
「ありがとうございます、何かあった時にはよろしくお願いします」
「よろしく頼む」
俺とリリアでパトリスさんとライザックさんに頭を下げた。もし何かあれば、遠慮なく相談させてもらうとしよう。