「いらっしゃいませ、アウトドアショップへようこそ!」
「あっ、はい! えっとアルファ米っていう新しい商品がほしくて……」
「はい、こちらになります。味が4種類あるので、その中からひとつお選びください。調理方法につきましてはこちらに記載されております。何かわからないことがありましたら、どうぞお気軽に従業員まで声を掛けてくださいね」
「あ、ありがとうございます! えっと……この店には何度か来ているんですけれど、新しい店員さんですか?」
「はい。本日からアウトドアショップで働かせていただくことになりましたアンジュと申します。よろしくお願いしますね!」
「は、はい! 絶対にまた来ます!」
「ありがとうございます、またのお越しをお待ちしておりますね」
……う~む、堕ちたな。たぶんあの駆け出し冒険者は、アンジュさんに会うために、再びアウトドアショップへ買い物に来てくれるだろう。
丁寧かつ相手のことを考えた見事な接客である。さすがに長期間接客業の経験があるだけあって、元の世界のお店に匹敵するくらい丁寧な接客だし、なにより笑顔が素晴らしい。それに美人の店員さんがいるお店って通いたくなるよね。
男たるもの、自分にちょっとでも優しくしてくれた女性の店員さんは、自分に気があるのではないかと誤解してしまう悲しい生き物なのである。
「あの野郎……アンジュにあんなに近付きやがって!」
「はいはい、ドルファは会計に集中して。次のお客さんが来ているよ」
「……いらっしゃいませ」
ドルファのほうは想像通り、アンジュのほうを気にしまくっている。今日はドルファに会計を任せ、アンジュにはお客さんの案内をしてもらっている。
2日間の休日でアンジュにお店の仕事を教えようとしたのだが、接客やレジの計算についてはまったく問題がなかったので、研修は1日目で切り上げた。
やはり即戦力になる仕事の経験者を雇うと教える時間が少なくてすむのでとても助かる。残りの時間はお店の商品の説明ができるように、お店で販売しているキャンプギアや商品の説明をお客さんにできるように覚えてもらっただけだ。
「……ありがとうございました」
「ほらほら、笑顔じゃなくなっているよ。接客は笑顔が大事だからね」
……まったく、アンジュよりもドルファのほうが大変だよ。昨日までは笑顔での接客もできていて、そのイケメンフェイスにより、数少ない女性冒険者をキャーキャー言わしていたんだけどな。
アンジュのほうは普通に男性冒険者の接客をしているだけなんだから、さすがにそれには慣れてくれないと困るぞ。
「へえ~アンジュさんっていうんだ。とっても可愛いね。もしよかったら仕事があとに食事にでも行かないかい?」
ガタッ
「ストップ、ストップ! 落ち着けって、ドルファ! お客様、大変失礼しました。銅貨5枚のお釣りになります。またのお越しをお待ちしております」
「テツヤさん! アンジュがナンパにあっている! 早く助けに行かないと!」
「ドルファだって何回もナンパされたことがあるだろ……まだ大丈夫だから、もう少し様子を見てろって」
この始まりの街であるアレフレアの街には駆け出し冒険者が多い。中には出会ってすぐにナンパをする輩も結構いたりする。
ドルファやランジェさんも女性冒険者によく声を掛けられていたし、リリアも男性冒険者によく声を掛けられていた。その度にドルファとリリアは適当に相手をあしらっている。……まあランジェさんは仕事の後で一緒に食事へ行ってたりもしたがな。
さすがにフィアちゃんにまでナンパをするような輩はいなかった。どちらかというと男女かかわらず可愛がられているといった印象だ。
……んん? 当然俺は一度も女性冒険者にナンパされたことなんてありませんけれど何か?
「ごめんなさい。申し訳ないのですが、今お付き合いしている男性がおりますので、遠慮させていただきます」
「……ああ、そうなんだ。それは残念……」
ガックリとうなだれる冒険者。さすがにそう言われれば、引き下がるほかないだろう。
「なにいいい! アンジュに付き合っている男だとお!!」
「落ち着けドルファ! 朝ちゃんと話しただろ!」
アンジュは綺麗な女性だし、護衛のために武装して有名な冒険者であるリリアとは違って、一般人の格好をしているため、男性冒険者にしつこく誘われる可能性があることは予想できた。
そのため、従業員で打ち合わせをして、アンジュには架空の恋人がいることにしておいた。もちろん恋人がいると分かれば、アンジュ目当てで店に来てくれるお客さんも減るだろうが、そもそもうちはそういうお店ではないからな。
そのことはドルファにも事前にちゃんと話してあったのに、完全に忘れているようだ。本当にドルファは妹が絡むとポンコツになるな……
「「「ありがとうございました」」」
なんとかだが、大きな問題は起こることなく本日の営業を終えることができた。
「ふう~とりあえずみんなお疲れさま。閉店作業をする前に、今日の反省会をしようか」
「あっ、はい! えっとアルファ米っていう新しい商品がほしくて……」
「はい、こちらになります。味が4種類あるので、その中からひとつお選びください。調理方法につきましてはこちらに記載されております。何かわからないことがありましたら、どうぞお気軽に従業員まで声を掛けてくださいね」
「あ、ありがとうございます! えっと……この店には何度か来ているんですけれど、新しい店員さんですか?」
「はい。本日からアウトドアショップで働かせていただくことになりましたアンジュと申します。よろしくお願いしますね!」
「は、はい! 絶対にまた来ます!」
「ありがとうございます、またのお越しをお待ちしておりますね」
……う~む、堕ちたな。たぶんあの駆け出し冒険者は、アンジュさんに会うために、再びアウトドアショップへ買い物に来てくれるだろう。
丁寧かつ相手のことを考えた見事な接客である。さすがに長期間接客業の経験があるだけあって、元の世界のお店に匹敵するくらい丁寧な接客だし、なにより笑顔が素晴らしい。それに美人の店員さんがいるお店って通いたくなるよね。
男たるもの、自分にちょっとでも優しくしてくれた女性の店員さんは、自分に気があるのではないかと誤解してしまう悲しい生き物なのである。
「あの野郎……アンジュにあんなに近付きやがって!」
「はいはい、ドルファは会計に集中して。次のお客さんが来ているよ」
「……いらっしゃいませ」
ドルファのほうは想像通り、アンジュのほうを気にしまくっている。今日はドルファに会計を任せ、アンジュにはお客さんの案内をしてもらっている。
2日間の休日でアンジュにお店の仕事を教えようとしたのだが、接客やレジの計算についてはまったく問題がなかったので、研修は1日目で切り上げた。
やはり即戦力になる仕事の経験者を雇うと教える時間が少なくてすむのでとても助かる。残りの時間はお店の商品の説明ができるように、お店で販売しているキャンプギアや商品の説明をお客さんにできるように覚えてもらっただけだ。
「……ありがとうございました」
「ほらほら、笑顔じゃなくなっているよ。接客は笑顔が大事だからね」
……まったく、アンジュよりもドルファのほうが大変だよ。昨日までは笑顔での接客もできていて、そのイケメンフェイスにより、数少ない女性冒険者をキャーキャー言わしていたんだけどな。
アンジュのほうは普通に男性冒険者の接客をしているだけなんだから、さすがにそれには慣れてくれないと困るぞ。
「へえ~アンジュさんっていうんだ。とっても可愛いね。もしよかったら仕事があとに食事にでも行かないかい?」
ガタッ
「ストップ、ストップ! 落ち着けって、ドルファ! お客様、大変失礼しました。銅貨5枚のお釣りになります。またのお越しをお待ちしております」
「テツヤさん! アンジュがナンパにあっている! 早く助けに行かないと!」
「ドルファだって何回もナンパされたことがあるだろ……まだ大丈夫だから、もう少し様子を見てろって」
この始まりの街であるアレフレアの街には駆け出し冒険者が多い。中には出会ってすぐにナンパをする輩も結構いたりする。
ドルファやランジェさんも女性冒険者によく声を掛けられていたし、リリアも男性冒険者によく声を掛けられていた。その度にドルファとリリアは適当に相手をあしらっている。……まあランジェさんは仕事の後で一緒に食事へ行ってたりもしたがな。
さすがにフィアちゃんにまでナンパをするような輩はいなかった。どちらかというと男女かかわらず可愛がられているといった印象だ。
……んん? 当然俺は一度も女性冒険者にナンパされたことなんてありませんけれど何か?
「ごめんなさい。申し訳ないのですが、今お付き合いしている男性がおりますので、遠慮させていただきます」
「……ああ、そうなんだ。それは残念……」
ガックリとうなだれる冒険者。さすがにそう言われれば、引き下がるほかないだろう。
「なにいいい! アンジュに付き合っている男だとお!!」
「落ち着けドルファ! 朝ちゃんと話しただろ!」
アンジュは綺麗な女性だし、護衛のために武装して有名な冒険者であるリリアとは違って、一般人の格好をしているため、男性冒険者にしつこく誘われる可能性があることは予想できた。
そのため、従業員で打ち合わせをして、アンジュには架空の恋人がいることにしておいた。もちろん恋人がいると分かれば、アンジュ目当てで店に来てくれるお客さんも減るだろうが、そもそもうちはそういうお店ではないからな。
そのことはドルファにも事前にちゃんと話してあったのに、完全に忘れているようだ。本当にドルファは妹が絡むとポンコツになるな……
「「「ありがとうございました」」」
なんとかだが、大きな問題は起こることなく本日の営業を終えることができた。
「ふう~とりあえずみんなお疲れさま。閉店作業をする前に、今日の反省会をしようか」