フウルリスクは真剣な表情で話し出した。

「知らせない理由は、聖女さま……貴女に一目惚れしたからです」

 そう言いフウルリスクは清美に熱い視線を送る。

 それをみたサクリスは、庇うように清美の前に立ちフウルリスクをジト目でみた。

「おい! 一目惚れ……それだけの理由で知らせないって、おかしいだろう。それにキヨミが、お前みたいなヤツを好きになると思っているのか?」

 そう言いサクリスは、チラッと清美をみる。……明らかに清美の顔は、茹蛸のように赤くなっていた。

「あ、ええと……私。その……多分、私も……フウルリスクさんの……こと。す、好き……かもです」

 そう言い清美は、恥ずかしくなり「キャッ!!」と顔を覆い(うずくま)る。

「キヨミ! そ……そうだとしても、それだけの理由で知らせず助ける。それをキヨミが、納得しても……オレは認めない!」

 サクリスはフウルリスクを睨みつけた。そうサクリスは半分、嫉妬していたのだ。自分も清美が好きなのに、なんで男というだけでこうも違うのかと思う。


 ――いやいや、それだけじゃないと思いますが……――


 それを聞いたフウルリスクは、哀れな目でサクリスをみた。

「なるほど、貴女は女性でありながら聖女さまのことを……。そうですねぇ、好きに男も女もありません。想うのは自由ですが、理論上では叶うことのない恋です」

「そ、それは……。いや、そんなことが言いたいんじゃない。なんでオレ達を助ける?」

「やはり、それだけの理由では納得してくれませんか。仕方ありませんね……ここで起きようとしていることを話した方がいいようだ」

「ここで起きようとしていること? それって……」

 清美は不安になり、辺りを見渡しながら立ち上がる。

「これからこの国……いいえ、この城からタルキニアの町までの範囲の者すべてが厄災により滅びます」

「ちょっと待って、滅ぶってどういう事だ? それも……厄災で……」

「なぜそのことを、フウルリスクさんが知っているの?」

 そう清美に聞かれフウルリスクは、どこまでを話せばいいか悩み始めた。

「話すしかないようですね。本当は知られないまま、聖女さまの傍にと思ったのですが」

 そう言い遠くをみつめフウルリスクは軽く息を吐いた。

「ボクはとある方の指示で、この城の周辺に結界を張っておりました」

「結界? 何のためにだ」

「厄災が、他の範囲に広がらないためにです」

 それを聞き清美とサクリスは、ムッとしフウルリスクをみる。

「もしかして、厄災は人為的におこせる。その手伝いをフウルリスクさんが、していたという事なのですか!」

「はい、そうです。仕事とはいえ、やってはいけないこと。ですが、あの方には逆らえない」

「仕方なかった……と言いたいのか?」

 そうサクリスに問われフウルリスクは、首を横に振った。

「それを言えば、言い訳になる。ですが聖女さまとここで会い……ボクは、運命だと思い決心しました。あの方を裏切り、聖女さまを救いたいと」

「それを信じろというのか?」

「そうですね。それが普通の反応……だけど、聖女さまを救いたいと思う気持ちは本当です」

 そう言いフウルリスクは、真剣な眼差しで清美をみつめる。

「フウルリスクさんの気持ちは分かりました。それより、もしそれが事実だとしたら……この国の人たちはみんな……」

「厄災により滅びる。それを止めることはできないのか?」

 フウルリスクはそう問われ申し訳なさそうに下を向いた。

「ボクの力では無理です。他の者が、厄災を起こす魔法陣を仕掛けていますので」

「お前の他にも居るって訳か」

「そういう事になります。ですので、ここはこの場から離れた方がいい」

 それを聞き清美は首を横に振る。

「いいえ、ここは残ってみんなを救うのが先です」

「それは無理です。予定の時刻はまもなく。ですので、早くこの場から撤退しませんと」

「フウルリスクの言う通りかもな。もしその話が事実なら逃げた方がいい」

 そう言われ清美は涙目になっていた。この状況をどうにかしたい。だけど今の自分の力で、どこまでやれるか分からなかったからだ。

「そうだね。そうするしかない。でも、どうしよう……泪のこと」

「ルイという方のことを、ボクは知りません。今はその方のことを知り、助けるだけの時間もない」

「そうだな。それで、ここから撤退する手段は?」

 そう聞かれフウルリスクは、この場から撤退する方法を話し始めたのだった。