ここは市場街の空き家。あれからグレイとムドルさんは、傷だらけの、んー……もっと酷いかな? ベルべスクを連れてくる。

 私はそのベルべスクから離れていた。だけどメーメルに言われ、仕方なくベルべスクのそばまでくる。

「えっと……今の話だと、この人がベルべスクって人なんだね」

「ああ、そうだ。ルイ、お前も一発殴るか?」

 そう言われ私は首を横に振った。

「ううん、やめとく。でも、なんでこんなに傷だらけなの?」

「そ、それは……。そうそう……ベルべスクが目覚めてしまい抵抗しましたので、二人でなんとか取り押さえたのです」

 明らかにムドルさんの仕草がおかしい。

「そう、そういう事だ。それより、このベルべスクをどうする?」

「そうですね。しばらく目を覚まさないと思いますので聞き出すのは無理かと」

「そのよじゃな。何もここまで、痛めつけなくても良かったと思うのじゃがのう」

 そうメーメルに言われグレイとムドルさんは苦笑する。

「これでこの件に、魔族が関与してると証明されました」

「ティハイド様と魔族が。それも厄災を……何のために?」

「うむ……今日、城で聖女さまのお披露目をする式典が行われる」

 それを聞きムドルさんは、険しい表情になった。

「嫌な予感がするのですが。式典が行われるとなると……」

「ティハイド様は、間違いなく参加する。……まさか!?」

「そのまさか、かもしれぬのじゃ」

 そう言いメーメルは険しい表情になる。

「ティハイド様は聖女ごと、この国を滅ぼすつもりじゃ。だとすれば、ここでこうしてる場合じゃない!」

「グレイ、待ってください。なんの策もなく乗り込むのは、無謀すぎます」

「ムドル、そうかもしれない。だが……」

 そう言いながらグレイは、どこか遠くをみていた。

「これは私の推測ですが。このベルべスクが何か知っているかもしれません」

「まさか、わざわざ叩き起こして聞き出すつもりか?」

「いいえ、可能か分かりませんが……ルイさんの能力で調べられないかと」

 そう言うとムドルさんは私をみる。

「どうだろう? 調べるだけなら【プローブ】で大丈夫かな」

「なるほど、その方がいい。だが、できれば特定できた方がいいだろう」

「うん、それなら【見極めレベル2】だと、内容の見極めだから合わせて使ってみるね」

 私はそう言い両手をベルべスクの頭に添えた。

 《プローブ!!》《見極めレベル2!!》

「厄災、ティハイド、今回の件に関係している全て知っていることを教えて!!」

 そう言い放つと両手が光る。その光が両手から放たれ、ベルべスクの頭を覆った。すると情報が私の頭の中に入ってくる。


 これって、まずい。早くしないと……。


 そう思いこのままの体勢で私は口を開いた。

「予想通りだよ。この国を、ううん……バールドア城からタルキニアの町までの範囲のみ壊滅させるつもりみたい」

「ちょっと待て! それって、どういう事だ? そもそも、どうやってその範囲のみだけを……」

「結界を張って行うみたい」

 そう私が言うとグレイは首を傾げる。

「そんな規模の結界が張れるのか?」

「可能ですね。数名の者が行った場合、それか……どこかに魔法陣を仕掛けて置けば結界は張れます」

「結界は魔族しか張れないのか?」

 そう聞くとムドルさんは首を横に振った。

「その知識と魔力が高い者であればできます」

「じゃあ、式典をみてる民衆に紛れていても気づかないな」

「そうなりますね。ですが、結界の中だけなら」

 グレイはそれを聞き口角を上げ笑みを浮かべる。

「ああ、却ってやり易い」

「ええ、あとは残りの情報を調べるだけです」

 そう言われ私は、ベルべスクが知っている情報を全て調べて伝えた。