ここは市場街の空き家。そして泪とメーメルとコルザが居る部屋の隣の部屋だ。

 グレイフェズとムドルは、この部屋に潜んでいる者を探す。

 匂いを辿りながらムドルは、部屋の奥に進む。

 片やグレイフェズは、気配を探りながらムドルと同じ方へ向かう。

「グレイ、別に同じ方を探さなくてもいいのですよ」

「別にお前のあとを追いかけている訳じゃない。偶々同じ方に向かってるだけだ!」

 そうこう言い合いをしながら更に奥へと向かった。


 グレイフェズとムドルは、部屋の奥にある古びた机と壁の間をのぞきみる。

「いたな!」

「そうですね。恐らく魔法か何かで、気配を消していたのでしょう。ですが気絶して時間が経ち、効力がなくなった。そのため、気配と匂いを察知できたのかもしれません」

「なるほどな。それで、コイツがそうなのか?」

 そう問うとムドルは頷いた。

「ええ、この魔族の男は間違いなく……ベルベスク・マキュルです」

「会ったことがあるのか?」

 そう聞かれムドルは頷いた。

「昔、メーメル様のお供で、マルべスウム国を訪れた時に何度か話をしました」

「そうか。それで、どうする? 間違いなく、コイツはルイの裸をみている」

「そうですね……。このまま拘束し連れて行くのも、流石に……」

 そう言いながらムドルは両手の指を、ポキポキと鳴らす。

「その様子じゃ、お前も俺と同じ意見みたいだな」

 グレイフェズはベルべスクを睨む。

 その後、ベルべスクがどうなったのかを詳しく語るまでもなく……。二人に、ボコボコにされた。

「無抵抗なヤツを、殴ったり蹴ったりするのは嫌だが……コイツは別だ」

「私も同じ意見です。さて、拘束して向こうに連れて行きましょう」

 そうムドルが言うとグレイは、コクッと頷きベルべスクをロープで拘束する。

 その後ムドルは、ベルベスクを担ぐ。

 そしてグレイフェズとムドルは、隣の部屋に向かった。



 ――場所は変わり、バールドア城の用水路――


 あれから清美は、サクリスに嫌いな蜘蛛の巣を除去してもらいながら、出入口の前まで来ていた。

「キヨミ、ここを出れば外だけど……まだ城の近くだから用心しよう」

 それを聞き清美は、コクリと頷く。

 それを確認したサクリスは、錆びれた扉を手前に引いた。


 ギギギギギィィイイイ――そう音をたてながら扉が開く。


 サクリスは清美の方を向いた。

「ちょっと待って。外の様子を確認してくる」

「うん、分かった。気をつけてね」

 そう言われサクリスは、ニタアと笑い頷く。

 それをみた清美は苦笑する。

 サクリスは様子をみるため外に出た。

 その間、清美は周囲を警戒しながらサクリスを待つ……。

(大丈夫かなぁ。ここまで上手くこれたけど。ううん、ここまで来たんだから心配ないよ。それにもしもの時は、能力を使えば逃げ切れるはず)

 そう思いながら自分の右手をみる。

 そうこう思考を巡らせているとサクリスが戻ってきた。

「外は大丈夫みたい。誰も居なかったよ」

 サクリスはそう言うと、コッチだと清美に合図し外へと向かう。

 それをみた清美は、サクリスのあとを追った。