ここは市場街から酒場街に続く街路。グレイフェズは、急ぎ足でコルザの屋敷の方に向かっていた。

(流石に、ルイと二人っきりになるのはまずい。……好きだとしても、駄目だ。割り切れる訳が……でも、一緒に居たい。
 どうしたら……クソッ! なんで、こんなことで悩まなきゃならねえんだぁ)

 そう思いながら歩いていると、ムドルの姿がグレイフェズの視界に入ってくる。

 ムドルもそれに気がつき、グレイフェズの方へ歩み寄ってきた。そのあとをコルザが付いてくる。

「グレイ、わざわざ迎えに来て頂かなくても良かったのですが……まあいいでしょう」

 そう言いながらムドルは、ニヤリと笑みを浮かべた。

 コルザはムドルの前にくるとグレイフェズをみる。

「久しいな、グレイフェズ。まさか、お前がこの町に来ていたとはな」

「コルザ様、お久しぶりです。色々とあり、偶々この町に立ち寄りました」

 グレイはそう言い会釈をした。

「そうか。どんな用で動いている?」

「そのことも踏まえ、別の場所で話したいのですが」

 そうグレイに言われコルザは頷く。

「それとムドル、ルイ達がいない方がいいのか?」

「なるほど……グレイは、私に気づかって迎えに来てくれたのですね。ですが、何れは話さなければならないことですので。それが、今だという事です」

「そうか……それなら大丈夫だな」

 そう言いグレイは市場街の方を向き歩き出す。

 そのあとをムドルとコルザが追った。



 ――場所は変わり、市場街にある空き家――


 なぜだろうと私は思った。メーメルが、ムドルさんの迎えに行くと言った。それなのに……なんでグレイは、自分が行くと言ったのかと。

「……ルイ。分からぬようじゃな。なぜグレイが、ムドルを迎えに行ったのか」

「メーメルは分かるの?」

「うむ、そうじゃな。なんとなくではあるがのう。恐らくグレイは、ルイと二人っきりになりたくなかったのかもしれぬ」

 それを聞き私は、なんでだろうと思う。


 二人だけになりたくない……それって、グレイに嫌われてるってこと?
 そうだとして……じゃあ、草原でのあれはなんだったの。分からない……何を考えてるのか……全然、分からないよぉ。


 色々考えているうちに私は、悲しくなり涙が出てきた。

「ルイ、なぜ泣いておるのじゃ?」

「だって……グレイは、私が嫌いだから二人っきりになりたくないんでしょ」

「何を勘違いしておるのじゃ」

 そう言われ私は首を傾げる。

「勘違い……って、どういう事?」

「グレイは、ルイのことを嫌っておらん。二人っきりになりたくなかった訳は、本人に直接聞いた方が良い。それに、妾が言っていいことではないからのう」

「そうなんだね。分かった! あとで聞いてみるね」

 メーメルは頷くと、私をみつめ微笑んだ。

 その後メーメルと私は、グレイとムドルさんとコルザがくるのを話しながら待ったのだった。