ムドルはコルザに理由を説明する。

「大体のことは、その手紙に書かれていたと思われます」

「ああ、そうだな。なるほど、それが本来の話し方という訳か。まあいい……まさか、グレイフェズとお前がな」

「グレイとは、この町で知り合いました。偶然、目的が同じだったため行動を共にしています」

 そう言うとコルザは、真剣な表情でムドルをみた。

「目的か……大体のことは察しがつく。少女の誘拐のことだろうからな」

「ええ、そうですね。そのことも踏まえて、グレイが会いたいそうです」

「そのようだな。うむ、だが今更どうなるとも思えん。しかし……賭けてみるのもいいか」

 それを聞きムドルは首を傾げる。

「やはり、貴方は不思議な人ですね。何を考えているか分からない」

「そうみえるか。しかし私から言わせると……ムドル、お前のことが分からん。なぜ人間を助けようとする?」

 そう言われムドルは、コルザを警戒し睨んだ。

「どこまで気づいているのですか? それに、なぜ……」

「どこまで……そうだな、半分は勘だ。お前が厄災の話をしたあたり、か。魔族ならば長く生きられる。それならば、厄災を何度もみて来ていたとしてもおかしくない」

「そうかもしれない。それでも……魔族じゃなくても長生きをする種族はいる」

 コルザは口角を上げ笑みを浮かべる。

「人間ではない最も強く……そして容易く人間の姿になれる種族など、そうはいないだろう」

「本当にそれだけなのですか?」

「ああ、それ以外ない。それよりも、私の質問に答えていないようだが。言えないことか?」

 そう問われムドルは悩み考えたあと口を開いた。

「いいえ、そういう訳ではありません。そうですね……このことは貴方だけじゃなく、グレイたちにも聞いてもらった方がいいでしょう」

「……なるほど。グレイフェズは、どこまで知っている?」

「私が魔族であること。それと、主であるメーメル様と旅をしていることぐらいですね」

 それを聞きコルザは険しい表情でムドルをみる。

「主か……そのことを話してもよかったのか?」

「ええ、問題ないでしょう。本来、私などそばにいなくても強いお方なので……。それと信用できる者にであれば、大丈夫だと判断しました」

「そうか。私を信用したという事か」

 そう言われムドルは、ニヤリと口角を上げコルザをみた。

「信用したと言っても、全てではありません」

「……まあいい。それでは、そろそろ向かった方が良さそうだな」

「そうですね……行きましょうか」

 そう言いながらムドルは扉の方へ向かう。そのあとをコルザが追った。

 コルザは考える。

(このままでは、知られてしまう。全てが露見する。だが……グレイフェズ、そしてムドルならなんとか解決してくれるかもしれぬ。今は、それに賭けるしかないか)

 一方ムドルは、後ろのコルザを警戒しながら自問自答していた。

(少し話しすぎましたか。まぁ大丈夫だと思いますが、気をつけないといけませんね)

 そうこう考えながら部屋の外に出る。

 その後コルザは、ユウムとビスガスにトゼルをギルドに連れて行けと指示を出した。

 それを聞いたユウムとビスガスは、頷き部屋に入りトゼルが居る方へと向かう。

 それをみたムドルとコルザは、あとのことを二人に任せることにする。そして、泪たちが居る市場街の空き家に向かったのだった。