グレイはムドルさん宛てに二通、書いていた。一通はコルザに向けてだ。

 その様子を私は、メーメルとみている。

「……こんなもんか。あとはムドルに送るだけだな」

 そう言われ私とメーメルは頷いた。

 グレイは便箋の魔法陣に触れる。それと同時に、パッと便箋が消えた。もう一通も同じく、ムドルさん宛てに送る。

「これで大丈夫だろう。あとは、返事を待つだけだ」

「そうだ……この人どうするの?」

 私は拘束されているリーダー風の男の人を指差しそう言った。

「まぁソイツは、あとで引き渡しても問題ないだろう」

「そうじゃな。それよりも、今回の誘拐事件の真相を解明する方が先じゃ」

「そうだな。それには、とりあえずムドルの返事を待つしかない」

 そう言われ私とメーメルは、コクリと頷く。

 その後、私たちはムドルさんの返信を待っていた。



 ――場所は変わり、バールドア城――


 ここは城内にある清美の部屋だ。カイルディは部屋の中で呆然と佇んでいる。

 そう清美を呼びに来たものの、監視役のサクリスと共に居なくなっていたからだ。

(これは……どうなっているのでしょう。まさか、二人してこの城を抜け出したという事でしょうか。
 ですが、そうだとして……まさかあのサクリスが裏切るとは思いませんでした)

 そう思いカイルディは、扉の方をみる。

「急ぎ探さなければいけませんね」

 そう言うと急ぎ足で扉の方に向かい部屋を出た。その後、大臣と国王にこのことを伝える。
 そして、従者や城の兵に指示をし清美とサクリスを探させた。



 ――場所は移り、ティハイドが居る部屋――


 ティハイドは、窓の外をみている。

(何かあったのか? 城の者の動きが慌ただしいようにみえる。これは調べさせた方がいいか)

 そう思い左手の腕輪に右手を添えた。すると腕輪の魔石が光、魔法陣が展開される。

 それを確認するとティハイドは、腕輪に向かい話し始めた。

「フウルリスク、至急に調べてもらいたいことがある」

 “ティハイド様、調べることとは?”

 そう聞かれてティハイドは、バールドア城で何が起きているか調べろと命じる。

 そう指示されフウルリスクは“承知しました”と言い、通信を切った。

 ティハイドはそれを確認すると、再び窓の外をみる。

「何が起きているのかは分からぬが、計画を変更するつもりはない」

 そう言い不敵な笑みを浮かべた。



 ――場所は、コルザの屋敷に移り――


 ここは地下にある部屋。ムドルはコルザと話をしている。そしてユウムとビスガスは、コルザの両脇に立ち二人の話の内容が理解できずに困惑していた。

 そんな中、ムドルの目の前に二通の魔法の便箋が現れる。それをみたムドルは、慌てて二通の便箋を取った。

「また恋文か? それも二通とはな。余程、好かれているようだ」

 そう言いながらコルザは、口角を上げ笑う。

「すまない。読ませてもらう」

「ああ、構わん」

 それを聞いたムドルは、顔を引きつらせながら便箋を読み始めた。

(何があったのでしょう? 緊急のことでしょうか……)

 そう思いながら文面を読み進める。

(一通目は、私に宛てたもの。もう片方は、コルザにみせた方がよさそうですね)

 そう思った。

「申し訳ない。仲間からの連絡だ」

 そう言いコルザにもう一通をみせる。

「仲間? そういえば、さっき言っていたな。だが、この手紙はなんだ。私に読めという事か」

 そう聞かれムドルは頷いた。

 ムドルの真剣な表情をみてコルザは、ただごとじゃないと思い便箋の内容を読んでみる。

「……ユウムにビスガス。すまないが、ムドルと二人で話したい。席をはずしてくれぬか」

 それを聞いたユウムとビスガスは不思議に思った。だが依頼者に逆らう訳にもいかず、渋々部屋の外に出て待機する。

 それを確認するとコルザは、ムドルを見据え口を開いた。

「さて、邪魔者はいなくなった。ムドル……理由を話してもらおうか」

 ムドルはそれを聞き頷く。その後、話し始めたのだった。