「これはムドルから聞いた話じゃ。全てではないと思うがのう……」

 そう言いながらメーメルは、淡々と語り始めた。

「ムドルの母親は魔族、父親が人間じゃ。二人は愛し合った、違う種族と知りながらも……」

「それって無理があるんじゃないのか? 違う種族で、それも人間と魔族じゃ……生きていられる時間が」

「そうじゃな。それでも……それを知っていてもじゃ」

 グレイはなぜか私の方を、チラッとみる。

「そうかもしれない。だが、魔族である母親の方が強いんじゃないのか」

「普通ならそうじゃな。ムドルの話では、父親の力……魔力が人間とも思えぬほどだった。それだけではなく、かなり鍛えていたらしく肉体も人間離れしていたらしいのじゃ」

「なるほどな。でも魔族よりも強いって、普通じゃねえよな。どう考えても……」

 そうグレイが言うとメーメルは頷いた。

「妾も、そう思ったのじゃ。だからムドルに、父親の素性を聞いた。でもなぜか、そのことに関しては話してくれぬ」

「知られたくないってことか」

「そういう事じゃな」

 それを聞き私はその話がロマンチックな反面、悲しく思う。恐らく父親はもう居ない。母親も恐らくは既に……。
 だからメーメルの所にくるまでの間は、一人で……人間のフリをして旅を続けてたんだろうと……。

「父上は知っておるじゃろう。そうでなければ、妾の傍に置かぬと思うのじゃ」

「ムドルのことを知りたいなら。魔族の王かムドルに直接、聞くしかないってことか」

「うむ、そうじゃな。そうだとしても、どちらも口が堅い故に話さぬじゃろう」

 そう言いながらメーメルは、どこか遠くをみている。

「それじゃ聞き出せないな。まぁ聞いたとしても、どうする訳でもない」

「妾もじゃ。だから余計なことは聞かぬ」

「私もそれでいいと思う。話したければ、自分から言い出すだろうしね」

 そう私が言うと二人は頷いた。

「……その話はこれで終わりにしよう。それよりも、これからどう行動するかだ」

「そうだね。とりあえずドルバドスさんに、手紙を出した方がいいと思うんだけど」

「ルイの言う通りじゃ。この男を、このままにして置けぬしのう」

 グレイは頷きバッグの中から便箋を取り出して、ドルバドスさん宛てに書き始める。そして便箋の魔法陣を触ると、パッと消えた。

「これでいい。あとは……そうだな、ここにいつまでも居る訳にもいかないし。厄災がこの町から始まったのなら、何かあるはずだ」

「宛はあるの?」

「いやない。だから、これから調べる」

 私は大丈夫なのかと不安になる。

「恐らく大丈夫なのじゃ。妾の鼻と勘があれば、なんとかなるじゃろう」

「俺も……なんとなくなら分かる。それに頼るしかない」

「そっか……二人は、だいたい分かるんだね。私は何も……。ん? あっ! 能力があった。それを使えば、分かるかも」

 そう言いながらバッグの中からプレートを取り出した。

「そういえば、ルイの能力があったな。だが、厄災の発生源を探せるのか?」

「分からない。調べてみるね」

 私がそう言うと二人は頷く。

 そしてその後、私はプレートを調べ始めた。