ここはタータム草原の木の上。ララファルは、考え込んでいた。

 そう泪たちが、どこに転移したのか分からなかったからだ。

「どうしたら……。そうだなぁ……いつまでも木の上に居てもしょうがないし、いい加減に国に戻るかな」

 そう言いながら遠くをみつめる。

「それにあの白銀の髪の男のことを長老に伝えないとね」

 木の上から下に飛び降りた。

「もう少し遊んでいたかったけど」

 そう言うとララファルは、目の前に手を翳し詠唱し始める。

 《大地の精 現の地と別の地 異空の狭間 その扉を開き 我、思う場所へ転移されたし!!》

 そう言いながらエルフの国【フォルレンシス】に存在する、キュウナ村の近くにあるサウザル草原を脳裏に浮かべた。

 するとララファルの下に魔法陣が現れる。それと同時に魔法陣から眩い光が放たれ、ララファルは残像と共に消えた。



 ――場所は移り、タルキニアの町の市場街――


 ここは市場街にある空き家。私はグレイとメーメルと共に、これからどう行動するか話し合っている。

「メーメル、厄災は他にも存在する。さっきのムドルの様子だと知っているみたいだったが、お前も?」

「うむ、知っておる。過去に何度かみておるからのう。妾とムドルは、何もできず逃げることしかできなかった……」

 そう言いながらメーメルは、遠くをみつめるような目をしていた。

「ムドルは、悔やんでおったからのう。妾よりも、厄災を数多くみているからよけいじゃ」

 それを聞き私は思う。


 ムドルさんて……そうか、魔族だから……そういう事なんだね。


 魔族だから若くみえるけど、かなり年上なんだなぁと……。それにメーメルも、見た目より年上だという事に気づいた。

「そうか……魔族だからな。だが、なんで悔やんでる? 逃げられただけでも良かったんじゃないのか」

「うむ、そうじゃな。しかしムドルは、その光景を何度もみておる。そのためか、何かできたのではないのかと……いつも悩んでおったのじゃ」

「なるほど……そういう事か。それにしても、ムドルは魔族にみえない」

 それを聞きメーメルは、ニコリと笑いグレイに視線を向ける。

「確かにそうじゃな。ムドルは城を出てから、よけい人間のような振る舞いをするようになったのじゃ」

「それって、前からあんな感じだったの?」

「うむ、今よりは魔族らしかったがのう。まぁ話し方は変わっておらぬがな。妾のもとにくる前は、一人で旅をしていたみたいじゃ。人間のフリをして……」

 それを聞いたグレイは首を傾げた。

「はぐれ魔族なのか?」

「うむ、恐らくのう」

「恐らくってことは、詳しく知らないって訳か」

 グレイがそう言うとメーメルは、コクリと頷く。

「父上は、知っておると思うのじゃが」

「そうか……。アイツはアイツで色々あったんだろうな。魔族の姿も、どちらかと言えば人間に近い」

「ハーフらしいからのう。と言っても魔族の血が濃いみたいじゃ」

 それを聞き私とグレイは驚いた。

「ちょっと待て! ハーフだと……人間とのか?」

 そう問われてメーメルは頷く。

「どういう事? 魔族と人間のハーフって……」

「それはのう――」

 そしてメーメルは、ムドルさんの知っていることを語り始める。