ここはコルザの屋敷の書斎。ムドルは拘束されたトゼルを連れてここに転移してきた。その後、人間の姿に変わる。

「さて、トゼルをどうしましょう。とりあえずは、拘束を普通の縄に変えておいた方がいいですね」

 そう言い異空間から縄を取り出した。その縄でトゼルを縛る。次いで、魔族語で詠唱し魔法の鎖を解除した。

「これでいいでしょう。ですが、このあとどうしたら……。恐らく、コルザは地下」

 そう言うとトゼルを担ぎ部屋を出る。そして、地下にある部屋に向かった。



 ――場所は変わり、ここはバールドア城の謁見の間――


 国王カルゼアは玉座に腰かけている。そして、目の前にいるティハイドを見据えていた。

 一方ティハイドはカルゼアに挨拶をすると話し始める。

「……聖女の召喚おめでとうございます。ここには居られないようですが、式典にてお披露目という事ですかな」

 そう言いながらティハイドは、左右を交互にみた。

「叔父上……久しぶりにお見えになられたと思ったら、聖女が目的ですか」

 カルゼアはティハイドをジト目でみる。

「勿論だ! 今日は、そのための式典ではないのか?」

「確かにそうですが……まあいいです。それだけであるなら、準備がありますので……」

「ああ、そうだな。では、また式典にて」

 そう言いティハイドは頭を下げた。そのままの体勢で上目づかいをすると、カルゼアをみやる。そして、含み笑いをした。

 カルゼアは立ち上がると軽く会釈をして、従者と出入口の方へ向かい歩く。

 ここからカルゼアが退室したのを確認するとティハイドは頭を上げる。

(行ったか……相変わらず、余計なことを話さんヤツだ)

 そう思いながらティハイドは、この場を離れ出入口に向かう。

 ティハイドが通路側に出ると、カイルディが待機していた。

「ティハイド様、部屋に案内いたします」

「従者ではなくお前が案内か……」

「ご不満ですか?」

 そう聞かれティハイドは、ニヤリと笑みを浮かべる。

「いや、構わん」

 そう言うとティハイドは、カイルディの案内で用意された部屋に向かった。



 ――場所は移り、タルキニアの町にあるギルド――


 ここはギルドのマスターの部屋。ドルバドスは椅子に座り考えている。

(厄災か……。まさか、この町に……いや、この国にも現れた。実際に、どんなものかは分からん。だが……なんとかしないとな)

 そう思いながら扉の方に視線を向けた。

「さてと、やれることをするか。今できることは、依頼を書いて……できるだけ被害を減らすことだけだ」

 そう言うと立ち上がりその後、部屋から出てカウンターの方に向かったのだった。