ここはバールドア城の地下にある用水路。

 清美はサクリスと正規の出入口とは違う場所に来ていた。

「やっぱり、こっちには人が居ない」

「ねぇ、本当にここを通るの?」

 そう言いながら清美は、周囲を見渡す。辺りには、蜘蛛の巣のようなものが至る所にある。

「スペードスパイダーの巣があるけど無害だから大丈夫」

「それって、やっぱり蜘蛛だよね?」

「クモ? んー、キヨミの世界ではそう言うのか?」

 そう聞かれ清美は、自信なさげに頷いた。

「多分そうかなぁと思う」

「そうか。まぁいいや、それよりも急ごう」

「う、うん……そうだね」

 そう言うと清美は、嫌々ながらもサクリスのあとを追い先に進んだ。



 ――場所は移り、バールドア城の屋外の広場――


 ここ広場には、聖女をみるために集まって来た者たちで賑わっていた。勿論、庶民だけではない。

 国の役職に就く者、他国の偉い人たちも来ている。

「ティハイド様、こちらに居られましたか」

「うむ、カイルディか。久しいな」

 この黒髪に赤いグラデーションでミディアムヘアの男は、ティハイド・ショテェム。国王カルゼアの叔父にあたる者だ。

 王族ではあるが、別の領土であるアクロマスグの領主をしている。

「お久しぶりでございます。そういえば、お一人でこられたのでしょうか?」

「いや……護衛が数人、来ているが。別の所で監視させている」

「そういう事ですか。相変わらず、用心深いですね」

 それを聞きティハイドは、含み笑いをした。

「ふぅ、まあいい。それよりも、まさかお前が聖女の召喚に成功するとはな」

「まさか……とは、随分と信用されていないようですね」

「信用していない訳ではない。だが、相当の知識に魔力がなければならないだろうからな」

 そう言われ真剣な顔になりカイルディは、コクリと頷く。

「かなり聖女のことについて、調べるのに費やしましたので」

「そうか……。さて、国王に挨拶せねばな」

「はい、では案内いたします」

 そう言いカイルディは、ティハイドを城内へと案内する。



 ――場所は変わり、タータム草原の木の上――


 木の上からララファルは、泪たちを監視していた。

(結界を張った……気づかれたの? 魔族が二人居たから可能性はあるけど。だったら、攻撃してくるんじゃ。そうなると……ただ、警戒して結界を張っただけ。
 でも、何を話してるんだろう? 結界を張るぐらいだから、聞かれたくないことなんだろうなぁ)

 そう思いながら考え込んだ。

(まぁいいか、あとをついていけば……何か分かるかもしれないしね)

 そう思うとララファルは、再び泪たちの方をみていたのだった。