グレイはつらそうだ。だけど、それでも話してくれている。

「そういえば、能力を使い熟せていなかったようにみえましたが」

「そのことか。それを話す前に、俺の能力について教えておいた方がいいだろうな」

 そう言うとグレイは、深呼吸をしたあと口を開いた。

「俺の能力は、物を具現化しそれを使う。だが、まだ完全に能力を使えない」

「能力は覚醒したが、それを使い熟す力がないという事ですか?」

「覚醒……恐らく、完全じゃないのかもしれない。親父もそう言ってたしな」

 グレイは悲しい表情で遠くに視線を向ける。

「覚醒が不完全、それで能力が使い熟せないと」

 そうムドルさんが言うとグレイは頷いた。

「少し気になったのじゃが。隔世遺伝であれば、勇者がかつて使っていた能力のはずじゃ」

「ああ、そうだな。あらゆるもの全てを創造し具現化させる……それが、勇者が持っていた能力だ。だが遺伝した能力は、ただ物を具現化して使うだけ」

「うむ、本当にそうなのかのう。妾には、まだ本来の能力に目覚めていないようにみえるのじゃ」

 そう聞かれグレイは、少し考えたあとメーメルをみる。

「確かに、そうかもしれない。もしそうだとしても、その一部の能力も使い熟せてないからな」

 グレイはつらそうに俯いた。

「そういえば勇者は、確かその能力に目覚める前に使っていた力があったはず」

「ムドル、その能力なら……なぜか、封印された状態でも使えるらしい」

「なるほど。そうなるとやはり、先程のデビルミストを消滅させた魔法のようなものは……」

 そう言われグレイは頷きその後、ムドルさんをみる。

「ああ、あらゆる属性の炎を創りだす能力。あれは、不思議と使えた。なぜか分からないけどな」

「じゃあ、さっきのって……魔法じゃなかったの?」

「ルイ、どうだろうな。魔法じゃないと言えばそうなんだろう。だが、魔力を使うから魔法だとも言える」

 そう言われ私は混乱した。どっちなんだろうと首を傾げる。

「特殊な魔法……うむ、その能力はどう使っておるのじゃ」

「そうだなぁ。殆どが、こうしたいと思うと頭にイメージされ詠唱が浮かぶ」

「やはり、魔法というよりも特殊な能力ですね」

 それを聞きグレイは首を横に振った。

「特殊能力ならプレートに表示されるはずだ」

 グレイはバッグの中からプレートを取りだす。そして、私たちにみせる。

「これは……確かに表示がありませんね」

「ないね。なんでだろう?」

「それは、簡単なことじゃ。特殊能力と表示されるのは異世界の者のみ」

 私はなるほどと思った。確かグレイもそう言っていたはず。それなのに、なぜそう言ったのかと不思議に思う。

「そうだな。だけど、先祖は異世界の者だ。だから余計、分からねえ」

「分からぬか。これは妾の憶測じゃが。恐らく、この世界の血が濃いという事だと思うがのう」

「メーメルの言う通りかもな。だが、能力がなんなのか分からないのはつらい」

 そう言いグレイは頭を抱ええた。

「必要ないんじゃないかな? 隔世遺伝なら、その勇者が使っていた能力だと思うし」

「ルイ、確かにその通りだな。あとは……使い熟せるようになるだけか」

「そういう事ですね。話を聞いていて気になったのですが。これからも本来の姿、能力を封印したまま解放せずに過ごすのですか?」

 グレイはそれを聞き頷く。

「ムドルも、さっき気づいたよな」

「そうですね。人とは思えないほどの力を感じました」

「そういう事だ。そんなんで、普通にしていられないだろう」

 そう言いながらグレイは悲しい表情を浮かべる。

「そうじゃな。そんな力があれば利用されかねぬのじゃ」

 それを聞き私は納得した。ムドルさんも「なるほど……」と納得する。

 そしてその後もグレイは、聞かれたことに対し答えていたのだった。