私はムドルさんと二人の話に耳を傾けた。そしてグレイが、話し出そうとしたその時。

「グレイ、待ってください。結界を張った方が良さそうです」

 そう言いながらムドルさんが辺りを警戒する。

「そうじゃな。これは……エルフの匂いのようじゃ」

「なるほど、俺たちのことが気になって監視してる……ってことか」

 それを聞き私は、キョロキョロする。

「ルイ、気づいた素振りはみせるな」

「うん、分かった」

 なんでそう言われたのか分からないけど、気づいていない振りをした。

 その後、ムドルさんが魔法を使い結界を張る。

「これでいいでしょう」

「ああ、ムドル……すまない」

「いいえ、問題ありません。それに、他の者に聞かれたくないことなのかと思いましたので」

 それを聞くとグレイは、コクリと頷いた。

「できれば、誰にも知られたくなかった。と、言ってもコルザ様は知ってるがな」

「そうなのですね。あのコルザがですか。どういう経緯かは分かりませんが、そのことも踏まえ教えて頂きますよ」

「そうだな。隠せそうにないし……話すしかないか」

 そう言いながらグレイは、私の方を向く。その表情はつらそうだ。

 私はそんなにつらいことならと『聞かなくてもいいかなぁ』とも思った。だけど、口に出せない。知りたいと思う気持ちもあったからだ。

 グレイは重い口を開いた。

「どこから話せばいい。そうだな……俺の、素性が先か」

 そう言い私とメーメルとムドルさんの順にみる。

「メーメルは、気づいてるよな」

「うむ。かつて勇者と言われた者の縁者……妾は、そう思ったのじゃが。違ったかのう?」

 それを聞きグレイは俯く。

「縁者、そうだな……その通りだ。俺の先祖がそうだったらしい」

 私は驚いた。そしてムドルさんも、ビックリしている。

「勇者とは、確か……」

「ああ、異世界から聖女とこの地に来た者だ。だが、正確には勇者と聖女のだがな」

「なるほどのう。あの言い伝えの二人は結ばれたのじゃな」

 そう言うとメーメルは、グレイに視線を向けた。

「ってことは、元の世界に帰れなかったの?」

「そうらしい。聞いた話じゃ、帰る方法を探したみたいだけどな」

 私はそれを聞き、急に不安が襲ってくる。

「さっきの能力は、先祖代々という事でしょうか?」

「いや、違う。二代目ぐらいまでは若干あったらしい。だが、その後から能力は消えたみたいだ」

「では、グレイのあの能力……どういう事ですか?」

「隔世遺伝じゃな」

 メーメルにそう問われグレイは頷く。

「という事は、グレイの代でその能力が再び覚醒した」

「そうだ。だが、なんで俺なのか……なんだよな」

 そう言いグレイは、どこか遠くをみていた。