ドキドキが止まらない。グレイの心臓の音が聞こえる。鼓動が速い。


 現在、私はグレイに抱きつかれ自分もそうしている。


 グレイの息が……荒い。どうしよう。やっぱり調子が悪いのかな……。だから、こんなことを?


 そう思いながらグレイを、チラッとみる。目が合ってしまった。目線を逸らせない。気まずくなった。

 頭の中がパニックになりそうである。そんな中グレイの唇の感触が、首筋に軽く触れた気がした。


 私は、どういう事かと混乱する。

「……ルイ。すまない」

 そう言いながら私から離れた。そして悲しげに私をみつめる。

「う、ううん。大丈夫……」

 そうは言っても、まだ鼓動が鳴りやまず。それに、顔のほてりがとれない。目のやり場に困る。

「そ、そうか。ルイ……いや、いい。そういえば、ムドルの方は……」

 グレイは、ムドルさんが居る方を向く。


 なんか言いたそうだったけど……たいしたことじゃないのかな? それならばいいけど……。


 それを聞き私もムドルさんの方を向いた。

 ムドルさんは地べたに座りメーメルとこっちをみている。

「……」

 再び顔が熱くなった。


 もしかして、今のみられた? ちょっと待って……。すべてみてるとも限らない。


 そう思いながらグレイをみる。……ピクピク引きつらせながら顔中から汗をかき凍り付いていた。



 ――場所は変わり、ムドルとメーメルが居る場所――


 あれからムドルは、メーメルに簡単な治療をしてもらいある程度だけ回復する。


 そして現在ムドルは、地べたに座ったまま険しい表情で泪とグレイフェズをみていた。メーメルも、ニコニコしながら二人をみている。

「……これは……先を越されましたか」

 それを聞いたメーメルはムドルの方を向く。

「ムドル、そうか……お前ものう」

 そう言うもメーメルの表情は、明らかに悲しげだ。

「メーメル様……申し訳ありません」

「良い、いつかは……こういう日がくると思っておったのじゃ。それが、今だというだけのこと」

 そう言われムドルは深々と頭を下げる。

「しかし、どうするのじゃ。あの二人は、お互い好き合っておる」

「そうですね。ですが、まだ入る隙がないとも言えません」

 ムドルは泪が居る方へ視線を向けた。

「そうかもしれぬ。でもそれは、僅かしかないと思うがのう」

「はい、分かっております。しかし今のグレイは、かなりためらっていますので」

「強引に奪うつもりか?」

 そう問われムドルは首を横に振る。

「いいえ、振り向かせようかと思っております」

「なるほど……お前、少し変わったかもしれぬな。城を出てから特にじゃが」

「変わった……そうかもしれません。人間の真似事をしていたせいかと思われます」

 それを聞きメーメルは、ニコリと笑みを浮かべた。

「そうじゃな。妾も、同じじゃ」

 メーメルはそう言うと、泪とグレイフェズが居る方を向く。

 その後、二人は立ち上がり泪とグレイフェズの方へ向かい歩き出したのだった。