ここはタータム草原。辺りに居たみたこともないような色々な虫たちは、グレイフェズとリーダー風の男から遠ざかっていく。風は然程、吹いていない。

 グレイフェズは変貌していくリーダー風の男をこれ以上みている訳にもいかず、今のうちに処理することにした。

(今は力を解放している。どうする? 恐らく所持している武器は使えねえ。具現化するしかないか……だが、自信がない)

 そう思い遠くをみつめる。

「あー、クソッオォォォ!!」

 そう叫ぶと一か八かやってみるかと思い行動に移す。

 両手を翳すと脳裏に浮かんだ剣をイメージした。

(ヨシッ、いい感じだ。あとは……)

 すると翳した両手の付近に剣が、ボンヤリと浮かび上がってくる。

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ……」

 グレイフェズは頭を抱え叫びながら(うずくま)った。

 勿論、剣の具現化は失敗である。

(……やっぱり、まだ無理か……)

 ハァハァと少しずつ息を整えた。その後、ブルッと頭を横に振る。

(覚醒遺伝と言っても、不完全だからな。さて、どうする……この能力をまた封印するか?)

 そう思いながら立ち上がった。

「……!?」

 その時、グレイフェズの背後から強い魔族の気配を感じる。と同時に警戒し、そのままの体勢で後ろの気配を探った。

(魔族か? この気配、どこかで……。それともう一人、こっちの気配は……トゼル。だが、様子が変だ。
 どうなっている? 確かトゼルは、ムドルが……って! まさか……)

 そう思うと額にダラダラ汗をかきながら、チラッと自分の後ろをみる。確認すると瞬時に前を向いた。そして、顔全体から異常なまでに汗が湧き出る。

 そうグレイフェズの背後には、ムドルと地べたに蹲っているトゼルが居たからだ。

(間違いない。あの後ろ姿は、ムドル。それと、もう一人はトゼルか。でも、なぜここに? その前にどうする……ムドルは魔族だ。恐らく気づかれる)

 そう思考を巡らせると、更に顔中から汗が出てくる。


 一方ムドルは、身動きが取れずにいた。

 そうここに転移して来た直後、自分の背後に誰かが居ることに気づいたからである。

(まさか、転移して来た場所に人がいるとは……。これは、困りました。別の場所に移動も、流石に無理。ですが、この匂いは……どこかで?)

 そう思いチラッと後ろをみた。その後、前を向き小首を傾げる。

(ハテ? 誰でしょう。後ろ姿と装備は、グレイに……そうそう匂いも似ています。
 ですが、髪色とこの途轍もない威圧感は……人間のものじゃない。いえ、人間なのでしょうが……あり得ません。
 それに先程の能力は、いったいなんでしょう? 失敗したみたいですが)

 そう考え思い悩む。

(恐らく、真面にやり合えば勝ち目はありませんね。さて、どうしましょうか?)

 そうこうムドルは考えた。

 そんな中ムドルの後ろでは、グレイフェズがバレるんじゃないのかとヒヤヒヤしている。

 その間にもトゼルとリーダー風の男は、徐々に姿を変えていくのだった。