ここはタルキニアの町から南東側にあるタータム草原。そして、町から遥か数十キロと離れた場所にグレイフェズはいた。

 地べたに蹲り(うずくまり)苦しそうに唸りながら変貌していくリーダー風の男を、グレイフェズは見下ろしている。

(さて、ここからどうする?)

 グレイフェズのその姿は容姿以外、見間違いそうだ。



 ――時は少し遡り、ここは市場街にある古びた倉庫。漆黒の霧デビルミストが体内に入り込んだリーダー風の男の方に、グレイフェズは歩み寄った。

『ここで暴れられては困る。やはり、草原に転移させるか。だが、まさかここで使うことになるとはな』

 そう言うと周囲をグルッと見回す。

『ヨシッ、だれも居ない』

 グレイフェズはリーダー風の男から少し離れる。その後、左の小指に嵌めている指輪に右手を添えた。

 《古の鎖 現と古 あるべき姿 封印されし力 我、願う 真の姿を解き放たれたし!!》

 そう詠唱すると両手を頭上に掲げる。

 すると指輪がキランッと光った。と同時に、指輪から眩い光が真上に放たれ魔法陣が展開していく。

 その魔法陣が展開し終えるとグレイフェズの真下に、スッと降下する。そして、徐々にグレイフェズの姿が変化していった。


 白銀から黒に銀が混じった髪色へ変わっている。髪型と容姿はそのままだ。明らかに違うのは、尋常じゃないほどの膨大な能力である。


 魔法陣が地面まで到達すると激しい光を放ち消えた。

『何年ぶりだ? この能力を解放したのは……まぁ見た目は、髪色ぐらいしか変わってないがな』

 そう言うとバッグの中からプレートを取り出しみる。

(……流石に、なぁ。プレートも、ちゃんと機能しねえよな。だが、なんで俺なんだ? ご先祖……隔世遺伝か。最悪だ、ホントに……)

 グレイフェズは不機嫌な表情を浮かべた。

『まあ、考えてたってしょうがねえ。さて、サッサと終わらすか』

 そう言いながらリーダー風の男の方へと歩み寄る。

 リーダー風の男の近くまでくると眼前に両手を翳した。

 《大地の精 現の地と別の地 異空の狭間 その扉を開き 我と彼の者 我、思う場所へ転移されたし!!》

 そう詠唱しながら、この町から少し離れた草原を思い浮かべる。

 するとグレイフェズとリーダー風の男の真下に、大きな魔法陣が展開されていく。

 その後、魔法陣が展開し終えると二人の姿は残像と共に消えた。



 ――そして現在。グレイフェズはこの草原に居て、リーダー風の男を悩みながらみている。

 そう、このあとどう行動するか悩んでいたのだ。

(うむ、完全体になる前に処理するか? それとも待つか……いや、それはないな。そうなると、今やるしかない。動けない者を痛めつけるのは性に合わないが)

 そう思いながらリーダー風の男を見据えた。