ここは修練場だ。場所は城の敷地内の西側にある。

 あれからカイルディさんの案内でここに来ていた。修練場の中は結構広い。

「うわあぁ、すっご〜い!」

 私は剣の稽古を間近でみて、その迫力に興奮した。


 因みに修練場は、他にも職業別に存在するらしい。


 目を輝かせながら私は、練習風景を眺める。

「ルイ様。余程、剣術が好きなようですね」

「ハイッ! だって、かっこいいじゃないですか」

 満面の笑みでそう言うと、カイルディさんは呆れた表情で私をみた。

「その様子では、実戦の経験などないように見受けられますが」

「剣道の試合ならしたことあるけど。本当の戦いってしたことない。まぁ、私がいた世界が平和だったからなぁ」

「なるほど……。そうですね、それならどうでしょう。ここにいる者と手合わせされてはいかがでしょうか?」

 そう言われ私は、ウンウンと頷き目を輝かせる。

「では、そこに木剣(ぼくけん)がありますので、適当に選らんでいて下さい。私は、ルイ様と手合わせして頂ける方を探して参ります」

 それを聞き一瞬、ぼくけん? そこは【きのけん】か【もくけん】の方がいいんじゃないのかと、そう思ったが敢えて言うのをやめた。

 その後カイルディさんは、稽古をしている人たちの方へ向かう。

 それを確認すると私は、ルンルンしながら木剣を選び始める。


 んー、大小様々な木剣があるなぁ。どれにしようかな?


 そう思いながら木剣を一本一本握ってみる。

 中々いいのがみつからない。これも違うなぁ。

「あっ、これなら」

 私はかなり使い込まれた剣を握り軽く振ってみた。

「うん、これなら軽いし持ち易い」

 選び終えると木剣を構え振り上げる。

「おいおい、なんだその構え。それじゃ、懐がら空きじゃねえか。そんなんじゃ、実戦には通用しねえぞ」

 そう言われその声の方を向く。

「えっ!?」

 とその時、木剣の剣先が私の喉元スレスレに向けられる。

「ほう、微動だにしねえとはな。女にしては、度胸があるじゃねえか」

 そう言いニヤッと口角を上げると白銀のショートヘアの男は、木剣を元の場所に戻した。


 見た目は二十代前半ぐらいで、悔しいくらいのイケメンだ。
 私が男だったら、こうなりたいって思うほどである。まぁ、それはさておき……。


「あー、あの……。いきなり、なんなんですか!?」

「ああ、悪い。余りにも初心者丸出しのヤツがいたから、追い返そうとしたんだが。お前、スジは良さそうだな。どうだ、俺が稽古つけてやろうか?」

 稽古、そう言われ私はどうしようか悩んだ。


 確かにこの人の言う通り、私は剣道の基礎しか知らない。それに剣道と剣術は似てるだろうけど、恐らく色々と違うと思う。


「稽古、お願いできますか? 確かに実戦の経験がないので助かります」

「ああ、いいぜ。俺も誰も練習の相手いなくて暇だしな」

 そう言い無造作に木剣を取った。

「それと俺の名は、グレイフェズ・サイアル。呼びづらければグレイでいい」

「私は、ルイ・メイノです! よろしくお願いします」

「ルイか、よろしくな。それで、さっきの構えはみれたもんじゃなかったが。実際の実力が、どんなもんか見定める必要もある。どうだ? 一度、手合わせするってのは」

 その誘いに一瞬のろうとする。だけど、ふとカイルディさんの言葉を思い出し断ろうとした。

「私は、構いませんけど。さっきカイルディさんが、手合わせの相手を探しに」

「それなら構いませんよ。それに丁度、手が空いてそうなグレイを探していましたので」

 カイルディさんは、いつの間にか近くにいて、そう言いながら側までくる。