近くにいる二人は、私の後ろの方に視線を向ける。

「アッチも駄目なんだよな?」

「当然だ! 馬鹿なことを考えてないで、持ち場に戻れ。数は、多い方がいいからな」

 そうリーダー風の男が言う。

 それを聞いた二人は不満な顔で、渋々この場から離れ暗がりに消える。

 リーダー風の男は私の近くまできた。そして、中腰になり私の顔をのぞき込む。

「確かに……あの二人が言うように、このままみてるのはキツいかもな」

 私の顔を触る。……嫌、触らないで……やっぱり怖い。

 するとリーダー風の男は、私の顔を無理やり自分の方へ向けようとした。

 私は向きたくないと拒む。だが、強制的に向けさせられる。

 咄嗟に、キッと睨む。

「コリャ思ったより、気が強いらしい。益々、誰かにくれてやるのはもったいねぇ」

 そう言いながら、ニヤニヤする。


 グレイ……早く来てよぉぉ〜。もうやだ……耐えられない。


 そう思い何か方法がないか考える。だけど、今のこの状況で使える能力が思いつかず。プレートをみたくても縛られてるこの状況じゃ無理だ。

 どう考えてもグレイとメーメルを待つしかなかった。

「ふぅ、みるだけで我慢するか。死にたくねぇしな」

 そう言うと立ち上がる。すると、私を見下ろした。



 ――場所は、古びた倉庫内の裏口に移る――


 そして時は、少し遡り……。

(うむ、ここから入れば良いのじゃな)

 そう思いメーメルは、ソーっと扉を開けた。そして、警戒しながら中をのぞく。

(大丈夫そうじゃ)

 キョロキョロしながら中に入る。

(妾は、ブローチを持っておらぬ。そうなると探すのは困難じゃ。唯一の救いは、この倉庫が二階建てでなく然程、大きくないという事じゃな)

 そうこう考えながら薄暗い建物の中を慎重に進む。

(この倉庫は、使われておらぬな。古い荷箱ばかりがその辺に散乱しておる)

 更に奥へ奥へと進んでいく。

 すると人の気配を感じ立ちどまった。

 そして荷箱の物陰に隠れ気配が感じた辺りを、ジーっとみる。

(運が良い。丁度、背後じゃ。ルイの手前におるのが、商人の娘かのう)

 そう思いルイとその手前にいる少女へ視線を交互に送った。

(あの男、ルイに何をしておる? しかし、まだグレイの気配が感じられぬ。何かあった訳でもないと思うのじゃが……)

 メーメルはグレイフェズの気配を探る。だが、やはりまだここに辿り着いていなかった。

(うむ、やはり感じられぬ。勝手に動く訳にもな……。まあ、流石にこの倉庫で道に迷っていないとは思う。ムドルとは違う……だから、大丈夫なのじゃ)

 そう考えがまとまるとグレイフェズが現れるのを待つ。

 そして周囲を警戒しながら泪と少女の方をみていたのだった。