ここはバールドア城の清美の部屋。

 清美はソファーに座りながら本を読んでいた。だが、刻々と式典が近づき不安が増してくる。

 それだけじゃない。泪のことが心配で落ち着かなくなっていた。

(泪、本当に大丈夫かな。男の人と一緒みたいだし……何もされていなければいいけど。
 式典に出ている場合じゃ……ん? この城から抜け出せば……でも……んー……嫌だけどサクリスに聞いてみるか)

 そう思いサクリスを呼んだ。

 サクリスは呼ばれたことが嬉しくて、ルンルン気分で清美の方にきた。

「キヨミ様、どうしました?」

「サクリス、呼び方は清美でいいよ。それより相談したいことがあるんだけど」

「分かりました。それでキヨミ、相談て?」

 そう聞かれ清美は今、抱いている思いと考えをサクリスに話す。

「この城から抜け出す、それが可能か……。そうだなぁ、普通なら難しいだろうな」

「普通なら難しい、ってことは……可能かもしれないのよね」

 そう問われサクリスは、コクリと頷く。

「うん、だけど。失敗したら、多分……キヨミにはお咎め(おとがめ)がなくてもオレが……。でも、そうだなぁ。キヨミがここに居たくないなら、やってみるか」

「サクリス、ごめんね。私のわがままを聞いてくれて……ありがとう」

「いいえ、気にしないで。オレは、キヨミの傍にいられればいい」

 そう言い清美をみて顔を赤くしている。

 清美はそれをみても引くことなく、却ってありがたいと思い感謝していた。

「それで、どうすればいいの?」

「そうだなぁ。まずは、その格好をどうにかしないとな」

「そうだね。このドレスを着たままじゃ動きづらいし」

 そう言うと清美は、クローゼットの方に行こうとする。

「キヨミ、服だけど。目立たない方がいいと思う。んー、もし良ければ……オレのお古の防具とかやろうか?」

「んー、どうしよう。防具類……良く分からないけど。その方がいいなら、そうしようかな」

 それを聞きサクリスは、異空間から防具類を取り出した。それを清美は、受け取り鏡の前に向かう。

 そして清美は、急ぎ着替えようとする。だが、上手く着替えられない。仕方なくサクリスに手伝ってもらいながら着替えた。

「これで、大丈夫だね。髪型も変えたし。後ろで一つに縛るの慣れないけど」

「素敵です。いえ、かっこいい! こんなにも、イメージが変わるなんて思っていなかった」

 サクリスは目を輝かせながら興奮している。

「あ、ありがとう……」

 そのサクリスの反応に清美はどう対応していいか戸惑う。

「じゃあ、行きますか」

 そう言われ清美は頷く。

 そしてその後、二人はこの城からの脱走計画を実行するのだった。