ここはタルキニアの町のギルド。建物の中には、集められた冒険者たちが至る所に座っていた。

 ギルドのカウンターの奥では、ドルバドスが依頼書の処理をしている。

 ムドルはギルドの建物の中に入るなり、周囲の冒険者たちの鋭い視線を感じた。だが、そんなことには動じない。無表情のままムドルは、カウンターに向かう。

 カウンターの前に立つとドルバドスに声をかけた。

「おい、来たぞ」

 それを聞きドルバドスはカウンターの前にくる。と同時に、首を傾げムドルをみた。

「お前、誰だ?」

 そう言いムドルをのぞきみる。

「……なるほど。マスターも気づかん。これなら、いけそうか」

「まさか、ムドルか?」

 そう問われムドルは、コクリと頷きニヤリと口角を上げた。

「ああ、まだ昔の言葉遣いにならん。これでも、大丈夫か?」

「まぁ、問題ないだろう。そもそも、昔のお前を知らん」

 そう言うとドルバドスは、ニャッと笑みを浮かべる。

「確かに……。それで、これからどうすればいい」

「まずは、プレートをみせろ」

 そう言われムドルは、バッグからプレートを取りだしドルバドスに渡した。

 ドルバドスはプレートを操作しながら、ムドルの冒険者登録をする。その後、依頼を書き込んだ。

「これで、完了だ」

 そう言いプレートをムドルに渡す。それをムドルは、受け取りプレートを操作し確認する。

「これで、冒険者登録が完了か。意外と簡単だな」

「そうだな。あとは依頼人のとこに向かうだけだが」

「オレ、一人って訳じゃないよな」

 そう聞かれドルバドスは頷いた。

「他に数人いる。それにメーメルから、ムドルを一人で行かせるなと言われてるからな」

「それは、どういう……意味だ」

 ムドルは、なぜそう言われたのか理解できず首を傾げる。

「まぁ、自分でその意味が分からんならいい。それに、メーメルに口止めされてるしな」

「言いたいことが分からない。気になる。だが、メーメル様がそう言っていたなら……聞かなかったことにするか」

「そうしてくれりゃ助かる。そんじゃ、一緒に向かう連中を紹介しねぇとな」

 そう言うとドルバドスは、カウンターから離れ冒険者たちの方に向かう。

 ドルバドスは二人の冒険者に声をかけると、カウンターの方に戻ってくる。

 そのあとから二人の冒険者がきた。その冒険者の二人は、カウンターにくるなりムドルにガンを飛ばす。

「マスター、こんなヤツと組むのかよ」

 小柄の男性は、不服そうな表情でドルバドスをみる。


 その者は、ユウム・トウギ。十九歳。冒険者ランクは、シルクの2だ。

 ヒトデのような形で青い縁取りの黒い髪。そして、無造作に分けられた銀色の前髪が特徴的だ。容姿は子供っぽいが、鋭い目つきをしている。


「ユウム、コイツのランクはまだ低いが。恐らくお前より強いぞ」

 そう言いドルバドスはムドルを指差す。

「ユウムより、強いのか。おもしれぇ、どんだけの力があるか試してみたい」

 そう言いながら筋肉質の男は、口角を上げムドルをジッと見据える。


 この筋肉質の男は、ビスガス・バガン。二十二歳。冒険者ランクは、シルクの1。

 灰色の髪が全部、後ろに流れている。そのため前髪がない。


「オレは、構わないが」

 そう言われムドルは二人を見下ろしキッと睨む。

 その眼光は鋭く……いや、それだけではない。圧倒的な威圧感がユウムとビスガスを襲った。それと同時に、身震いし凍り付く。

「まぁ待て。やり合うなとは言わねぇ。だが今は、やめとけ……仕事の前だからな」

「ああ、そうだな。改めて……オレは、ムドル・サルベドだ。まだ冒険者になったばかりで、分からないことなど教えてくれれば助かる」

 それを聞き二人は、ウンウンと怯えながら頷いた。

「ムドル、この二人は信頼できる。それと今回の件、お前と調べるために冒険者の中から選んだ」

「そういう事か。……よろしく頼む」

 ムドルは二人を交互にみる。

「はい、勿論! まさか、師匠に匹敵するか上か……他に、こんな強い人がいた。一緒に行動できるなんて光栄です」

 そう言いながらユウムは目を輝かせムドルをみた。

「オレは構わん。強いヤツなら、足手まといにならないしな」

 ビスガスは、口角を上げ笑う。

 その後ドルバドスは、依頼人の所に向かう前に打ち合わせをすると三人に告げる。

 それを聞き三人は、ドルバドスと奥の部屋に向かったのだった。