ここは宿屋の私とメーメルの部屋。

 私は可愛い服に着替え椅子に座り、メーメルと話をしながらグレイが呼びにくるのを待っていた。


 因みにこの可愛い服は、昨日あのあとグレイが商店街に行き買ってきてくれたのだ。

 流石にただでもらう訳にはいかないと思い、お金を払おうとしたけど……。

『いらない。俺の気持ちだ。受けとって欲しい』

 そう言ってグレイは中に入らず、そのまま自分の部屋に戻っていった。


 そういえばグレイ……いつもより、心配そうな顔してたなぁ。それに若干、顔が赤かった気がする。……まぁ考えても分からないし、いいかなぁ。
 それよりもこの服一式、靴も髪飾りも……凄く可愛い。グレイって、意外とこういうセンスあるんだね。強くてかっこいい……だけじゃなくて……。


 そう思いながら自分のみえる範囲の服とかに視線を向ける。

「ルイ、先程から着ている物を穴が開くほどみておるようじゃが。グレイにもらったのが余程、嬉しかったようじゃな」

「あ、えっと……。これは、そういう訳じゃなくて……ね。そうそう、可愛いなぁ……と思ってみてただけ」

 そう言うとメーメルは、ジト目で私をみた。

「まぁ良い。それよりも、そろそろかのう」

「うん、そうだね」

 私とメーメルは扉の方に視線を向ける。



 ――場面は変わり、ここは泪とメーメルの部屋の廊下側――


 あれからグレイフェズは、扉の前までくるとノックをしようとした。

 だが部屋の中から泪とメーメルの会話が聞こえ手がとまる。

(……俺の名前が……何を話してる?)

 そう思い扉の向こうから聞こえる会話に耳を傾けた。

(服……昨日ルイにあげた服一式のことか? ルイが、そんなに気に入ってくれるとはな)

 嬉しさのあまり、ニタニタと笑みを浮かべかっこいい表情が崩れる。


 ――台無しだ……チーン……――


 そうこうしていたがグレイフェズは、ハッと我に返った。

(ハァ、何を考えてんだ。これから大変だ、って時に……)

 そう思うと扉をノックする。……中から「はーい」と泪の声が聞こえてきた。

「グレイ、かな?」

 そう泪が扉越しで問う。それを聞きグレイフェズは「ああ、そうだ」と答える。

 それを確認すると泪は扉を開けた。それと同時に一瞬、グレイフェズは固まる。

(……可愛い……天使か? 恐らく喋らなければ……って、俺は何を考えて……)

 慌てて妄想をかき消す。だが、顔は赤いままだ。泪はすぐ部屋の奥に向かったためグレイフェズの異変に気づいていない。

 グレイフェズは気持ちを落ち着かせるために深呼吸をする。

 そしてその後、グレイフェズは部屋の中に入ったのだった。