翌朝――ここは宿屋のムドルの部屋。ムドルは異空間から変装用の衣服を数着とり出した。
「そうですねぇ。冒険者風の衣装ですと……この辺でしょうか」
そう言いながら軽めの防具類を身に付け始める。
「あとは、ナイフ……。あ、そうそう、そうでした」
バッグの中を探った。そして中から灰色で革製の腕輪を取り出す。
その腕輪には、黒色の小さな魔石が中央に施されている。
腕輪を左手首に付けるとムドルの全身が発光した。……光が落ち着くとムドルは、左手首に視線を向ける。
(これで、いいでしょう。ある程度、魔力を制御しておかないと普通の冒険者になれません。まぁ、魔力が必要な時はこの腕輪を外せばいいだけですし。あとは、髪型ですね)
髪を縛っていた紐を解く。その姿は……美しい、女性のようだ。
――だが、本来の姿は違う。見た目は、このままなのだが。まあそれは、後にという事で――
ムドルは髪型をどうするか悩む。しかし、余り考えている暇はない。そう思い髪を無造作に掴み、持っていたナイフでバッサリと切った。
「フゥ、だいぶ軽くなりました。あとは、ボサボサにするだけですね」
そう言うと髪を乱れさせる。……髪が乱れ今までのムドルのイメージとは、かなりかけ離れた見た目だ。
「こんな、もんですね。さて、いよいよ。あちらに行ったら、言葉遣いを変えませんと。ですが……汚い言葉を使うのは、何年ぶりでしょうか」
ムドルは「クスッ」と笑う。そして窓の外に視線を向け、どこか遠くをみていた。
その後、色々と持ち物のチェックとプレートの冒険者の欄の確認をする。
そして全て終えムドルは部屋を出ると、最終確認をするためにグレイフェズの部屋に向かった。
――場所は変わり、宿屋のグレイフェズの部屋――
時は少し遡る――その頃グレイフェズは、支度を終えベッドに腰かけ何か考えている。
(……できれば、ルイを囮になんかしたくない。だが、そうするしかないんだ。なるべく被害者を多く出さないためには、アジトを一層するのが早い。
そうなると……誰かが、その役をやらないとならないからな。心配だが、まぁルイもそこまでドジじゃ……いや、んー……)
そう思うとグレイフェズは、心配になり泪の部屋がある方の壁をみつめた。
「考えたって仕方ないか。やるしかねえしな。あとは、なるようにしかならない」
そう考えがまとまると立ち上がる。そして、再び荷物の確認を始めた。
すると扉がノックされる。それに気づきグレイフェズは扉に向かう。
扉の向こうからムドルの声が聞こえた。するとグレイフェズは、渋々扉を開ける。
「……」
グレイフェズは、扉を開けたと同時に絶句した。
そうムドルのイメージが、スッカリ変わっていたからである。
「……ムドル、だよな?」
「はい、そうですが。何か変でしょうか?」
「ああ、いや……。変じゃない。だが、まるで別人だ」
そう言われムドルは自分のみえる範囲を確認した。
「そんなに変わりましたでしょうか……」
「フッ、まあいい。それなら、大丈夫だろう」
「ええ、ではこれからギルドの方に向かいたいと思います」
それを聞きグレイフェズは、ちょっと待てとムドルをとめる。
「喋り方は大丈夫か?」
「それならば大丈夫ですよ。昔は良く汚い言葉を使っていたので」
「なるほど、そういう事なら大丈夫そうだな」
グレイフェズがそう言うと、ムドルはコクリと頷いた。
その後ムドルは、グレイフェズの部屋から離れギルドに向かう。
それを確認するとグレイフェズは、扉を閉め近くの椅子に座り考え込む。
――いつの間にかグレイフェズは、ムドルへの敵対心が消えていた。だが、それはまた後に……ひとまず休戦という事で――
「さて、そろそろだな」
そう思い立ち上がる。そしてその後グレイフェズは、部屋を出ると泪とメーメルを呼びに向かったのだった。
「そうですねぇ。冒険者風の衣装ですと……この辺でしょうか」
そう言いながら軽めの防具類を身に付け始める。
「あとは、ナイフ……。あ、そうそう、そうでした」
バッグの中を探った。そして中から灰色で革製の腕輪を取り出す。
その腕輪には、黒色の小さな魔石が中央に施されている。
腕輪を左手首に付けるとムドルの全身が発光した。……光が落ち着くとムドルは、左手首に視線を向ける。
(これで、いいでしょう。ある程度、魔力を制御しておかないと普通の冒険者になれません。まぁ、魔力が必要な時はこの腕輪を外せばいいだけですし。あとは、髪型ですね)
髪を縛っていた紐を解く。その姿は……美しい、女性のようだ。
――だが、本来の姿は違う。見た目は、このままなのだが。まあそれは、後にという事で――
ムドルは髪型をどうするか悩む。しかし、余り考えている暇はない。そう思い髪を無造作に掴み、持っていたナイフでバッサリと切った。
「フゥ、だいぶ軽くなりました。あとは、ボサボサにするだけですね」
そう言うと髪を乱れさせる。……髪が乱れ今までのムドルのイメージとは、かなりかけ離れた見た目だ。
「こんな、もんですね。さて、いよいよ。あちらに行ったら、言葉遣いを変えませんと。ですが……汚い言葉を使うのは、何年ぶりでしょうか」
ムドルは「クスッ」と笑う。そして窓の外に視線を向け、どこか遠くをみていた。
その後、色々と持ち物のチェックとプレートの冒険者の欄の確認をする。
そして全て終えムドルは部屋を出ると、最終確認をするためにグレイフェズの部屋に向かった。
――場所は変わり、宿屋のグレイフェズの部屋――
時は少し遡る――その頃グレイフェズは、支度を終えベッドに腰かけ何か考えている。
(……できれば、ルイを囮になんかしたくない。だが、そうするしかないんだ。なるべく被害者を多く出さないためには、アジトを一層するのが早い。
そうなると……誰かが、その役をやらないとならないからな。心配だが、まぁルイもそこまでドジじゃ……いや、んー……)
そう思うとグレイフェズは、心配になり泪の部屋がある方の壁をみつめた。
「考えたって仕方ないか。やるしかねえしな。あとは、なるようにしかならない」
そう考えがまとまると立ち上がる。そして、再び荷物の確認を始めた。
すると扉がノックされる。それに気づきグレイフェズは扉に向かう。
扉の向こうからムドルの声が聞こえた。するとグレイフェズは、渋々扉を開ける。
「……」
グレイフェズは、扉を開けたと同時に絶句した。
そうムドルのイメージが、スッカリ変わっていたからである。
「……ムドル、だよな?」
「はい、そうですが。何か変でしょうか?」
「ああ、いや……。変じゃない。だが、まるで別人だ」
そう言われムドルは自分のみえる範囲を確認した。
「そんなに変わりましたでしょうか……」
「フッ、まあいい。それなら、大丈夫だろう」
「ええ、ではこれからギルドの方に向かいたいと思います」
それを聞きグレイフェズは、ちょっと待てとムドルをとめる。
「喋り方は大丈夫か?」
「それならば大丈夫ですよ。昔は良く汚い言葉を使っていたので」
「なるほど、そういう事なら大丈夫そうだな」
グレイフェズがそう言うと、ムドルはコクリと頷いた。
その後ムドルは、グレイフェズの部屋から離れギルドに向かう。
それを確認するとグレイフェズは、扉を閉め近くの椅子に座り考え込む。
――いつの間にかグレイフェズは、ムドルへの敵対心が消えていた。だが、それはまた後に……ひとまず休戦という事で――
「さて、そろそろだな」
そう思い立ち上がる。そしてその後グレイフェズは、部屋を出ると泪とメーメルを呼びに向かったのだった。