「本当に不思議です」

 中腰になるとセフィルディは籠の中に居る泪を見据えた。

 「白い鳥自体……この国では珍しい。他の国では、どうか分かりませんが」

 その言葉を聞き泪は、チョコンっと首を傾げる。

 (白い鳥って珍しいの?)

 “ええ、そうなります。この世界でも数百羽ぐらいしか居ません。そのため国によっては神の使い、神と崇めている所もありますので”

 それを聞き泪はセフィルディをみた。

 「この国にとって幸せの象徴とし崇めるのもいいかもしれません。ツカサ様とミサキ様と共に、この国の行く末を見守る鳥として」

 そう言いながらセフィルディは泪の入る籠を持つと立ち上がる。

 「まあ、そうですね……私の独断では決められませんので相談してみますか」

 泪の籠を抱えるとセフィルディは部屋から通路に出て司と美咲の部屋へ向かい歩き始める。

 (そもそも、なぜ私は過去と干渉しているの?)

 “干渉……それとは違います。していないと言えば、それも違いますね。只言えることは意識だけを過去へ飛ばし小鳥にと……”

 (小鳥の意識って、どうなっているの?)

 自分の意識が白い鳥に入り込んでいる。それなら白い鳥の意識は何処に行ったのか心配になった。

 “眠っている状態です。ですが泪が元の時間に戻ったあとも、ある程度の記憶は……この小鳥のものとして残りますよ”

 (そうなんですね。じゃあ元の時間の私って?)

 “クスッ、それほど時間は経っていません。いえ……意識が戻る頃に合わせますので”

 それを聞き泪は、ホッと胸を撫で下ろす。

 (それなら、まだ……ここに居られるんだよね)

 “いえ、そろそろ戻りましょう。一先ず貴女にみせたかった過去は、ここまでです”

 (そうなのかぁ……なんか司さんと美咲さんと別れるのが寂しい。もう少しだけいたい……)

 司と美咲と別れるのがつらくなった。すると泪の目じりからは涙の雫が一滴おちる。

 “つらい……そうですね。ですが、これ以上は無理なのです”

 (うん……そうだね。だけど、ここまでみて来て思ったこと……司さんが創った厄災の箱って結局は回収されなかった)

 “これは伝えておいた方がいいでしょう。厄災の箱は司が王になって暫く経ってから身内のみで内密に回収し始めます。ですが……”

 言葉に詰まってしまった。

 (みつからなかったの? もしかして……ムドルさんのお父さんが旅していたのって)

 “ええ、一つの目的はそうなります。ムドルの父親の目的は他にもありました。ですが、それを今は話せません”

 (そうなんですね。まだ完全には私が過去をみなければいけなかった理由って良く理解していない。
 だけど元の時間に戻ったら、ここで起きたことを思い出して見極めて行動します)

 真剣な顔になり泪は何かを決心したかのようだ。

 “良かったです……過去をみせたことが間違えではなかった。泪、貴女には重い役目かもしれません”

 (重いです……でも私が、やらないといけないことなんですよね。そういう運命だった……という事……)

 “ええ、そうなります。ですがワタシは何時も貴女の傍にいますので不安になったら語りかけてください”

 それを聞き泪は、コクッと頷いた。

 (はい……それと聞きたいことがあるんですけど。もし私の推測が当たっているとしたらグレイとムドルさんと私って?)

 “クスッ、心配はいりません。魂は、そうだとしても肉体が違いますので”

 安心し泪は、ホッとする。

 (良かったぁ~……)

 そうこう泪が声の主と話をしている中にセフィルディは司と美咲の部屋の前まできた。そのあとから侍女と共に司と美咲がくる。

 「これはツカサ様にミサキ様、丁度よい所にこられました」

 そう言いセフィルディは泪の籠を美咲に差し出した。

 「持って来てくれたんですね……ありがとうございます」

 籠を受け取ると美咲は優しく微笑み泪をみる。

 「それでは私は、これにて失礼いたします。ごゆるりと、お休みくださいませ」

 軽く頭を下げるとセフィルディは、この場を離れ自室へと向かった。

 「行ったな」

 「うん、そうだね」

 そう言い二人は部屋に入る。そうそう二人共、既にパーティー衣装から別の服に着替えている。

 部屋に入るなり美咲は泪の籠をベッドの近くの台に置いた。

 (……もしかして美咲さんと司さんのラブラブな所を最後に……)

 “そうですねぇ……いい加減やめておきましょうか”

 (別れはつらいけど……私は早く逢いたい人がいる。今一番に逢いたい人…………グレイ。でも、その前にやることがあるんだよね)

 真剣な表情になり泪は無作為に一点をみつめる。

 “そうです……貴女の見極め次第で、この世界の未来が決まってしまう”

 (はい……何処まで私に見極める力があるか分からない……。だけど私には【見極め】の能力がある)

 “そうですね。その能力も、ちゃんと考えて使ってください。貴女にしか使えない特別な能力ですので”

 そう言われ泪は“はい”と応えた。

 “それでは元の時間に戻しますね”

 泪はその言葉を聞き頷いたあと司と美咲へ視線を向ける。

 (……魂のお母さん……魂のお父さん……グスンッ……さようなら……本当は、ずっとここに居たかった。
 でも……私は元の時間に戻って二人の代わりにやらないと……)

 何かを察知したかのように美咲と司は泪の籠へと近づいてくる。

 「ありがとう……ルイ……」

 「ルイ……お前のお陰で、この世界を恨まずに済んだ」

 その言葉を聞き泪は溢れんばかりの涙を流した。

 (うう……話をしたかった……一緒に居たいよ……うわぁーん――……)

 その声は聞こえる訳もない。無残にも、そのまま意識が徐々に途切れていった――……。


 ……――その後、白い鳥のルイは短命ながらも司と美咲の心の支えになる。それだけではなく死しても神鳥とされ崇められ石碑が作られた。
 片や司と美咲は国民のために尽くし愛される王と王妃となり子供にも恵まれる。そして、この世界……この国で生涯の幕を閉じる――……。


 ……――えっ? ガルディスとラギルノがどうなったのかって……まあ、ご想像にお任せいたします(汗)――……。

 ……――――❈番外✦完❈