司と美咲は小さめで紫のトンガリ帽子に如何にも魔法使い風の服を着た小柄で糸目、琥珀色の髪の三つ編みが右側に目立つ男性のそばへ歩み寄ろうとする。

 因みに琥珀色の髪の男性の服は正装なのか帽子も服もお洒落にキメていた。

 それに気づき琥珀色の髪の男性は自ら司と美咲の下へ歩み寄ってくる。


 この男性はクナテナ・リベル、年齢不詳。
 竜の里ドラゴノビアの領主シルゼ・アッシュガの従者でありドラゴナード四強の一人【地獄落としのクナテナ】と云うとんでもない異名を持っている。
 ドラゴナードとはカリスワイブにしか生存しておらず遥か昔から竜と共存し暮らして来た種族だ。
 それだけではなく竜の守護下でないと生きていけず能力も使えなくなってしまうのである。

 「これは、ツカサ様にミサキ様……お久しぶりでございます」

 一礼するとクナテナは司へ視線を向けた。

 「ああ……本当に久しぶりだ。あれ以来、逢っていなかったからな」

 「そうだね。でも、またこうやって逢えるなんて思わなかったよ」

 そう言い司と美咲は涙ぐんでいる。

 「私も……国を出て二人に逢うことができるとは思っていなかった」

 「ずっと居られるのか?」

 「ハイ、ユリナーシャ様の監視をするようにバウギロス様から命じられておりますので」

 それを聞き司と美咲は納得する。

 「じゃあ、ユリナーシャが滞在している間は居られるんだな」

 「そうなるかと。まあ、あの様子では一生もどらないでしょうね」

 視線をユリナーシャに向けクナテナは、ハァーっと溜息をついている。

 「ガルディスも嫌なら、ハッキリと断ればいいのにな」

 「そうだよね……でも、それができないんだと思うよ」

 「女好きのうえに……変な所、優しいからな。特に女には……」

 昔のことを思い出し司は苦笑しガルディスをみていた。

 「でも、よくベンデアを斬ったよな?」

 「そういえば……そうだね」

 不思議に思い美咲は首を傾げる。

 「ベンデアが女? 俺……私は一度たりとも、ベンデアを女性なんて思ったことなどありません。只、礼儀として接してはいましたが」

 何時の間にかガルディスは司たちのそばに来ていた。勿論ユリナーシャは、ガルディスの腕を逃がさないぞと云わんばかりに思いっきり掴んでいる。

 「なんのことですの? まさか浮気をしていたなんてことはありませんわよね?」

 「そ、それは……ハハハ……そんなことある訳もない。私はユリナーシャ様、一筋なのですから」

 それを聞き司と美咲とクナテナは、ジト目でガルディスをみた。

 「本当ですの? 以前のように前婚約者の姉が現れるようなことはないですわよね」

 「勿論です。あれから全て清算いたしましたので」

 まあ間違ってはいない。だが只単に、ユリナーシャの呪いかのように女にフラれまっくっていたのだ。

 「そう……疑ったりして、ごめんなさい」

 何時になくユリナーシャは素直である。

 それをみたガルディスは顔を赤らめた。

 「いえ……勘違いをさせるようなことをしていた私が悪いのです」

 「イチャイチャは他でやってくれないか?」

 「ツカサ……いえ王となられたのでしたわ。それならば国王陛下、挨拶が遅れ申し訳ありません。この度は、お招きありがとうございます」

 そう言いユリナーシャは軽く会釈する。

 「それにミサキ様、御久しぶりでございます。そうそう……ツカサ様、ミサキ様。御結婚おめでとうございますですわ」

 「ハッ、そうそう……御結婚おめでとうございます」

 忘れてたことを思い出しクナテナはユリナーシャに次いで言った。

 「ありがとう……だけど、まだ王になったことも美咲と結婚したって云うのも実感が湧かない」

 「そうだね……結婚は今日いきなりだし」

 そう言い美咲は顔を赤くし司へ視線を送る。

 その後も司、美咲、ガルディス、ユリナーシャ、クナテナの五人は話をしていた。

 そんな五人をセフィルディは遠くから優しい笑みを浮かべ見守っている。

 (良かったです。これで国も安泰……あのクナテナからの竜人バウギロス様の伝書……書簡。そうですね……再度あとで読み直しましょう)

 もう一人、司たちをみている者がいる。そう間に入りたそうにしているラギルノだ。

 (懐かしい。だが……オレの顔などみたくないだろうな)

 昔のことを思い出してしまいラギルノは俯き苦痛の表情を浮かべる。

 それをみてラギルノを囲んでいる女性たちは心配に思っていた。

 それだけじゃないラギルノを遠くからみている女性がいるようだ。

 (ここに居たのね……ラギルノ。心配だからそばに居て監視してくれって、ツカサから連絡をもらってきたけど。
 あの時そばに居ることのできなかった私が、どの面をさげて逢えって云うの? それに……以前よりも女にモテているようだし……)

 心配をしていたがみているうちに妬けてきて、ムッとしながらやけ食いを始めた。