パーティー会場に入った司は美咲の手を取りセフィルディとラギルノとガルディスが待つ場所へと向かい歩いた。

 パーティー会場に集まった者たちは一斉に司と美咲へ視線を向ける。

 その間を抜け司と美咲はセフィルディのそばまできた。

 「凄い人ですね」

 「ツカサ様。敬語は変ですよ。まあ、そうですね……二人をお祝いするための披露パーティーですので」

 「そ、そうだな。俺たちのために……こんなに歓迎されたことなんてない」

 そばで聞いていた美咲は、コクッと頷き微笑んでいる。

 「私たちは食べられないのかな?」

 「お食事は私がお持ちしますよ。王妃に何かあっては大変ですので」

 「ガルディスさ……あ、うん……ありがとうございます」

 ちょっと寂しい気持ちになった。自由にできなくなるんだと思ったからだ。

 でも自由はなくなったけど、つらい思いをしてまで旅をしないでいいと気持ちを切り替える。

 その後、緩やかな音楽を開始の合図かのように始まった。

 改めて司は挨拶をする。そのあと美咲が挨拶の言葉を述べた。

 それらが終わると司や美咲に挨拶をするため列をなしている。

 作り笑いをしながら司と美咲は、なんとか対応していた。

 するとダンス用の曲が流れる。

 「あーダンスが始まるのかな?」

 「ええ、そうみたいですね。ミサキ様、私と踊って頂けませんか?」

 美咲の手を取りガルディスは、ダンスの申し出をした。

 ムッとした表情で司は美咲の手を持っているガルディスの手を引き剥がす。

 「前も言ったよな? 美咲に触れるなって」

 「今日ぐらいは許していただけると思いましたが無理でしたか」

 苦笑いをしたあとガルディスは一礼をし自分のダンス相手を探しに向かった。

 因みにラギルノの周囲には女性が群がっている。眼鏡のせいなのか知的にみえるらしい。いや実際に無自覚だけど頭がいいのは確かだ。

 「フッ、いったな」

 「司、今日ぐらいは良かったんじゃないのかな?」

 「いや駄目だ。誰も美咲に近づけるつもりはないからな」

 相変わらず司は美咲を誰にも奪われたくないと思っている。未だに完全には自信が持てないのだろう。

 いつ誰が美咲の気持ちを射止め攫って行くかも知れないと思ってしまうからだ。

 「ありがとう……でも大丈夫よ。もう私は揺れない。ううん……あの日から私は司しかみていないから」

 「ありがとうは俺の方だ。そうだな……もっと自信を持てるようにする」

 「うん、そうそう……ダンス……踊るのよね?」

 そう言われ司は頷き美咲の手を取り大広間の中央へと向かった。

 その後二人は曲に合わせ踊り始める。それを周囲の者たちは、ウットリしながらみていた。


 ……――(いいなぁ……私もグレイと踊りたい)

 脳裏に流れてくる映像を泪は控室に置かれている籠の中から羨ましそうにみている。――……


 そんな中、女性と踊りながらラギルノは優雅に踊っていた。。

 (女性とダンスをするなど何年ぶりだ? まあ、これも良いかもしれんな)

 意外にラギルノの女性の扱いが上手で相手は、ウットリしながら身を任せている。

 ……いいのか? ルナセアは確かラギルノを好きだったはず。まあ行方不明だからな(汗)

 (やっとダンスの相手をみつけたはいいが、なぜここにいる?)

 困惑しながらもガルディスは、ピンク色の髪の人間とも云えないほどに美しい小柄な女性と踊っている。

 「ガルディス、間に合って良かったわ。ツカサに連絡をもらって即行で支度して来たのですもの」

 そうこの女性は口約束ながらガルディスの婚約者であるユリナーシャ・ルビディアだ。

 因みに人間ではなく、ドラゴナードと云うカリスワイブ大陸にしか居ない種族である。

 「そ、そうなのですね。それで、あの大陸を出ても大丈夫なのですか?」

 「ええ……バウギロス様の力を得られることのできる魔道具をツカサが送ってくれたのです」

 「それは良かったです。これで何時でも、ユリナーシャ様と一緒に居られますね」――(覚えてろよ……ツカサ!(泣く)……)

 泣きたくなるもガルディスは堪えていた。

 その様子をみて司はしてやったりと笑みを浮かべている。

 「もしかして、アレってユリナーシャじゃないの?」

 「ああ、俺が呼んだ。ここに居ても大丈夫な魔道具を送ってな」

 「そうなんだね。もしかして、ユリナーシャだけなの?」

 そう美咲はユリナーシャだけじゃなく、クナテナも来ているんじゃないかと思ったからだ。

 「クナテナは、バウギロスへの忠義心があって離れたくないそうだ」

 「そうなのね……じゃあ、あそこで食べてるのって誰?」

 そう言われ司は食事が置かれているテーブルへ視線を向ける。

 「クナテナ……来てくれたんだな。あとで話をしたい……って懐かし過ぎるだろうが」

 嬉し過ぎて司は泣きそうになっていた。

 「そうだね……あの大陸では色々嫌なことがあったけど良い人たちにも巡り合ったものね」

 「それがなかったら俺は今頃、自分を見失っていただろうな」

 「そうだね。何度感謝しても、しきれないよ」

 そう思いながら二人は、ダンスをしている。すると曲が変わり司と美咲はダンスをやめて、クナテナの方へ歩きだした。