聖堂から外に出た司と美咲は人の多さに驚いていた。

 これほどまでに自分たちの結婚式と即位式に興味を持ち祝うために来てくれたのかと思い嬉しくなり涙腺が緩みそうになる。

 司と美咲の前を歩くガルディスとラギルノの顔も緩み涙ぐみそうになっていた。

 そんな中セフィルディはガルディスとラギルノの前を歩き誘導しながら周囲の気配を探っている。そう、ドルムスが来ているのではと思ったからだ。

 (やはり来ていませんか。そうですよね……自ら王になることを拒否した者が国民の前に姿をみせる訳もない。
 まあ遠くに居る訳でもありませんし偶に遊びに行くとしましょうか)

 余程ドルムスのことが好きだったようである。

 司たちの行列は両脇に立ち並ぶ大勢の民衆の間を、ユックリと歩いた。その度に司と美咲は笑みを浮かべ手をふる。

 (みんな……こんな俺に期待しているのか? 今になって、ドルムスさんが嫌がっていた訳を理解したよ。これじゃ自由に何もできないかもしれないよな)

 心の中で司は溜息をついた。

 (凄い! これって司をみるために、みんな集まったんだよね)

 いやいや美咲のことをみたい人が大半だと思いますよ。

 司たちの行列は町中を歩き進んだ。馬や馬車じゃないのかと思うかもしれないが、バイゼグフとベンデアのせいで財源を余計な所に仕えないためである。

 まあ、ずっと歩いている訳ではない。そう町の様子をみるために店に立ち寄りながら休憩をしていた。

 そうしながら店の者などの話を聞いている。これらはセフィルディの提案によるものだ。

 一つは国民に安心してもらうためである。元々司はこの国の者じゃないうえに異世界から来た者で不安に思う者も居るからだ。

 もう一つは司に、この国のことを知ってもらうためである。

 町をまわり城へと戻ってくると夜のパーティーのため解散し各自の部屋に戻っていった。


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 着替えるため美咲は侍女と寝室に来ている。泪の籠は近くの棚に置かれていた。その籠の中から泪は色々なことを考えている。

 (これからパーティーかぁ……私も出たいなぁ。でも私は侍女さんとお留守番なんだよね)

 そう泪が思っている間にも美咲の着替えは進んでいた。

 (今度はオレンジのドレスだね。そういえば確かパーティー用のドレスって司さんが選んだんだっけ)

 ドレスを着せてもらいながら美咲は姿見鏡をみている。

 「淡いオレンジ色のドレス……これ私の好きな色なの」

 「そうなのですね。確か……このドレスはツカサ様が御選びになられたと聞いております」

 「そうなのね……私の好きな色を覚えててくれたのか」

 嬉しくて美咲は泣きそうになった。

 「泣きたいお気持ちは分かります。しかしながら御化粧が落ちてしまいますよ」

 そう言われ頷き美咲は、なんとか泣かないように堪える。

 その後、着替え終えると美咲は侍女と共に控室へと向かった。勿論、泪の籠は侍女が控室まで運んだ。

 そして時間が経過し美咲は司と合流し侍女と従者の案内でパーティー会場の大広間へと入っていった。