司はセフィルディにまたハメられたと思い悔しがっていた。そう思う中、聖堂内で待機していた音楽隊が演奏し始める。

 その曲は、この国のオリジナルなのだろうか司と美咲の居た世界の結婚式で流れる曲調になんとなく似ていた。

 曲を聞いて司は確信を得る。と同時に開いた扉の方へ視線を向けた。司は入場してくる美咲をみて、その姿に釘付けになり顔を赤らめる。

 (えっと……やっぱり美咲は可愛い……いや綺麗だ。騙されるにしても、これなら許せる。
 嬉しいサプライズ、こんな素敵な美咲をみせてくれたセフィルディに感謝しないとな)

 余りにも嬉しくなり司は涙ぐんだ。

 音楽に合わせるように美咲は侍女に誘導され司の方へ向かっていた。美咲の顔は、ベールで隠れている。入場する前に侍女がベールを下ろしたのだ。

 (ベール……ってことは結婚式なの? 直前になってベールを下ろしたってことは明らかに私に気づかせないためだよね。
 ……っという事は、これってセフィルディさんのサプライズ)

 思ってもいなかったサプライズに美咲の目には、ジワリと涙が出ている。

 そう思っているうちに美咲は司のそばまで来ていた。ベールの下からでも、ここからなら司の顔がハッキリみえる。

 そのためか美咲は、ドキドキと鼓動が鳴りやまず顔を赤らめていた。そう何時もの司とは違ってみえたからである。

 どちらかといえば何時もの司は、ボサボサの髪に服も適当でお洒落と云えるほどじゃない。

 だが今の司は殆どの髪を後ろに流している。前髪は少し垂れている程度だ。服装も白い結婚式用の正装である。

 (……司……だよね? 信じられない。こんなに、カッコいいなんて思ったことない。ううん……ない訳じゃないよ。
 私のために戦ってくれていた姿は、カッコいいと思った。でも見た目で、カッコいいなんて思ったことがないかも。
 改めて司の素敵な所をみつけられて嬉しい……ありがとう、セフィルディさん)

 ポタリとベールの下から涙の雫が落ちた。だが、そのことを気づく者はいない。いや司は気づいたようだ。

 「美咲……泣いてるのか?」

 「嬉しくて。改めて司のカッコいい姿をみることができたから」

 「……そうか。俺はまだだけどな。早く美咲の顔がみたい」

 優しく笑みを浮かべ司は美咲をみている。

 ウンッと美咲は頷き更に顔を赤くした。

 「ゴホンッ!! 皆がみているので、その辺にして頂きたいのですが」

 咳ばらいをした後そう言うもセフィルディは、ニコニコと笑みを浮かべ二人をみている。そう二人がサプライズを喜んでくれて良かったと思ったからだ。

 そう言われ司と美咲は慌ててセフィルディの方を向くとみる。

 その後、セフィルディの進行により結婚式が行われた。司と美咲は互いに誓いの言葉をいい合う。そして司は美咲のベールを捲り上げ唇にキスをする。

 それを籠の中からみていた泪の顔は余りにも恥ずかしくて真っ赤になっていた。

 (これが……唇、キス。してみたい……グレイと。ん? そういえば、ムドルさんのアレって……したことになるの?
 ううん……あれは只、食べこぼしを舐めただけだよね)

 そう思うも泪は罪悪感におちいる。

 二人の誓いのキスを終えると一斉に周囲から拍手がされた。

 その後、即位式が行われる。

 司はセフィルディから王冠を被せてもらった。次に美咲がティアラを装着してもらう。

 それが終えると司はセフィルディから言われ誓いの言葉をいわされる。

 「……――どんな国にするのかは、ハッキリ言って分かっていない。だけどできる限り国民の意見を聞けるようにしていきたいと思っています。――……」

 その発言はセフィルディの魔法により外にいる者たちにも聞こえていた。そのため聖堂内だけではなく外でも歓声が沸いている。

 それだけじゃない国中にも司の発言は伝わり至る所から歓喜の声が上がった。

 そのあとガルディスとラギルノが呼ばれ司の前に来て一礼をする。次いで跪き俯いた。

 それを確認すると司は勲章をガルディスとラギルノにわたす。

 すると司は周囲に聞こえるかどうかぐらいの声で「巻き込んで悪かった。……何ができるか分からない。俺のカバーしてくれ頼む」、そう言い軽く頭を下げた。

 勲章を受け取り二人は交互に誓いの言葉を述べる。

 「陛下、勿論ですよ。何かあれば、このガルディスがお守りいたします」

 司をみたあとガルディスは頭を下げた。

 「私にできることはない。ですが陛下の暴走ぐらいなら止められるでしょう」

 そう言いラギルノは口角をあげ笑みを浮かべる。

 ラギルノの言葉を聞き司は苦笑した。

 その後も色々と式が進み行われる。

 そして全てが終わり司たちは列をなして聖堂の外へと向かった。