ここは執務室だ。室内には六人分の椅子が、まるでこうなることを分かっていたかのように並べられている。

 先に部屋の中に入ったのはセフィルディだ。そのあとから来た司は並べられている椅子をみて、やっぱりハメられたのかと思い悔しいと苦痛の表情を浮かべる。

 「随分と用意がいいですね」

 「当然です。話し合いをするかもしれないですので慌てないように準備だけはしておきませんと」

 「……なるほどな。まあいい、か」

 不貞腐れた顔で司は、セフィルディに案内され椅子の前までくると躊躇った。そう普通であれば王や偉い者が座る場所だからだ。

 「ツカサ様、どうされました?」

 「まだ俺は王になった訳でもない。それにハッキリと返事もしていません」

 「まあ、そのことは皆を交えて話しましょうか」

 そう言われ司は納得いかないまま仕方なく椅子に座る。

 そのあとから来た美咲は司を心配しみた。

 (大丈夫かな? 多分、司の性格じゃ頼まれたら断れないだろうね。それに借用書もあるし……)

 そう思いながら美咲は司の右側の椅子に腰かける。泪が入っている籠を美咲は膝の上に置いた。

 そのあとからラギルノが来て司の左側にとセフィルディに言われ嫌々座る。

 (この位置は嫌な予感が当たりそうだ。この展開を、どう覆す?)

 周囲をみながらガルディスは部屋の中に入り椅子が置かれた所まできた。

 (この……国の大事ごとを決める場に俺が必要とも思えない)

 そう考えながらガルディスはセフィルディに言われるまま嫌な顔をしラギルノの隣に腰かける。

 溜息をつきドルムスはセフィルディに手を引かれ部屋の中に入りガルディスの隣に座った。

 みんなが揃ったことを確認するとセフィルディは美咲とドルムスの間の席に着き話し始める。

 「それでは、これからのことを話しましょうか」

 「セフィルディ……なぜ私が、この場に居なければいけない。必要ないと思うのだが」

 「ドルムス様、元はと云えば貴方が王位の継承を放棄したのが原因。ですので最後まで見届けて頂きませんと」

 何時になくキツイ表情でセフィルディはドルムスをみた。まあ未だセフィルディは王に相応しい者がドルムスだと思っているから余計だ。

 そう言われドルムスは嫌々頷いた。

 「それではツカサ様、先程の話だと条件があるのでしたね。それは、どのようなことでしょうか?」

 「条件の一つ……俺と美咲は元の世界に戻りたい、それを諦めたくないんだ。だから、その方法が分かったら誰かに王位を渡したい」

 「それは構いませんよ。それを決めるのは王になるツカサ様ですので。只こちらにも条件があります」

 真剣な面持ちでセフィルディは司を見据える。

 「条件? それが可能なら、どんなことでものむ」

 「クスッ、いいでしょう。これは仮説になってしまいますが。元の世界に戻る手段をみつけた時、御二人の間に子供ができていたら王位を譲る」

 「子供に王位を譲る…………グッ、そうしないといけないのか」

 つらさの余り司は下唇を強く噛み締めたため血が滲んできた。そして俯き悩んだ。

 そう親の勝手な事情で子供に王位を譲って元の世界に帰って良いのかと思ったからである。

 (司……つらそう。私も同じ気持ちだよ。子供を親の都合で縛るなんてできない)

 それらを籠の中で聞いていた泪は不思議に思った。

 (もし帰る方法が分かって元の世界に帰っていたら何時の時代なのかな?)

 気になり泪は延々と思考を巡らせ分からず頭が痛くなる。

 その後も司たち六人は話をしていたのだった。