ハメられたと思い司は悔しい表情を浮かべている。

 (やられた。端から計画してたのか? そうじゃなくても……書類にサインさせる提案を持ちかけて来たのはセフィルディさん。
 その頃から……だろうな。あの借用書がある限り逃れられない。クソッ……)

 そんな司をみてガルディスは哀れに思っていた。

 (何も言えん。ハメられたとしても気づかなかったツカサ、お前が悪い。まあ、お前なら……国を良い方に導くことができるだろう)

 頭を抱え美咲は悩んでいる。

 (あーあ、どうするの? これじゃ余計に元の世界に帰れないよ)

 何時になくラギルノは自分が言ったことに対し後悔していた。

 (本当のこととはいえ……気まずい。いや、その前に嫌な予感がする。まさか言いだしたオレを大臣になんて考えていないだろうな。
 大臣になるのは構わんがツカサに使われるのは嫌だ。まあ、そもそもツカサが……オレを指名する訳もないか)

 嬉しそうに笑みを浮かべドルムスは司をみている。

 (これで自由になれる。この国が嫌な訳ではない。だが私には、この国を背負う覚悟など持てぬのだ)

 清々しい顔でセフィルディは司を見据えていた。

 (ツカサ様……逃げられませんよ。それとラギルノ、恐らく気づいているかもしれませんが。
 かつて居た帝国で四天王のリーダーとして君臨し培って来た経験は貴重なのです。
 仕えていた国、王が悪だった。ですが貴方は染まらず自分の信念を貫いたと聞いている。
 そのため最終的には王の首を自らの手で……それも、それをツカサ様になすり付けたらしいですね。これはガルディスに聞いた話ですが。
 そういえば先程ガルディスが言っていました。自分は国を追われる身と。確かラファストル国ファスリアの四天王だったはず。これは面白くなりそうですね)

 それぞれの思考や映像が鮮明に脳内に流れ込んでいる泪は泣きそうである。

 (えっと……これでいいの? こんなんで王さま選んでいいの? でも確かにドルムスさんじゃ国を纏められないかも。
 司さんならできると思う。だけど……このままだと司さんと美咲さん。元の世界に帰れないよ)

 そう考えていたが泪は、あることに気づいた。

 (ん? ちょっと待って……司さんが王さまになったってことは……。ここはサイアル城。
 グレイの姓はサイアル……司さんが姓を変えていれば多分、城の名前から取る可能性がある。なるほど、そういう事か)

 そう、そういう事です。だけど、なんでグレイフェズは村にいたのかと不思議に思い泪の悩みが増える。

 「ツカサさま、どう致しました? ここに借用書がある限り、こうなることを望んだという事になります」
 「クッ……仕方ないか。但し条件がある」
 「のめる条件であれば構いませんよ。只ここではなく執務室でミサキ様、ラギルノ、ガルディス、ドルムス様を交えて話をしませんか?」

 そう言われ司は頷きセフィルディをみる。
 それを確認するとセフィルディは近くに居る兵士にバイゼグフとベンデアの後始末をするように指示したあと出入口へと向かい歩きだした。
 そのあとを司、美咲、ラギルノ、ガルディス、ドルムスの五人が追いかける。
 そしてその後、司たちは執務室で話をしていたのだった。