「……」

 セフィルディに言われラギルノは返す言葉に詰まる。

 (なんなんだ? オレのしようとしていたことを全て気づいていたと云うのか?
 セフィルディは聖職者かもしれん。だからって人の心を読めるとも思えんのだが)

 考えれば考えるほどラギルノは分からなくなり顔がひきつってきた。

 「もしかして図星だったのですか? そうじゃないのかと鎌をかけてみたのですが」

 「フッ、そういう事か。さあ、どうだろうな。だが全てじゃない……何度も揺れた。しかし結局は計画した通りになったという訳だ」

 それを聞き周囲に居る者は、なるほどと思い納得する。

 「ラギルノ……お前の計画。それって、お前が死ぬために俺を怒らせるってことか?」

 そう言われラギルノは司から視線を逸らした。

 「オレが死ぬ? そこまで落ちぶれてはいない。只オレはツカサ、お前と戦いたかっただけだ」

 これは嘘である。事実、昔の一件でラギルノは死にたいと思っていた。

 根は至って真面目である。そのため何度も司に挑んだ。だが、なぜか死ねずにいた。

 まあ司が殺さなかっただけなのだ。ラギルノの気持ちを司は、なんとなくだが分かっていたからである。

 「ホント……お前は変わらないな。何度、俺に挑んできた? その度に負けているはずだ。そもそも俺に負けるのが分かっていて挑んでるよな」

 「負ける? 馬鹿を言うな。生きている限り何時かはツカサ、お前を葬り去ろうと思っている。これ以上……負けたと云う屈辱を背負っていたくない」

 「なるほど……プライドか。めんどくさいもんに、こだわってるな。あー馬鹿々々しい。そんなことのために俺を利用するなよ」

 ムスッとし司はラギルノを半目でみた。

 「利用か……否定はしない。だが元騎士としての意地があるんでな」

 拍手をする音が聞こえてくる。

 誰なのかと思い一斉に周囲の注目が拍手をしている者へ集まった。

 拍手をしていたのは二人でドルムスとセフィルディである。

 何時の間にかセフィルディは、ドルムスのそばにいた。

 「ここまで信念を貫いている者をみたことがない。命をかけて何かをやり遂げる。誰にでもできることではないだろう」

 ハァーっと溜息をつきドルムスはラギルノを見据える。

 「恐らく私では無理だ。国を思うことができても、それだけでは……」

 「それは違う。王とは国の象徴。国や民衆を思えることこそ大事です。国の護りや財政などは下の者に任せればいい」

 真剣な表情でラギルノはドルムスをみた。

 「但し国の象徴が皆の前で弱みをみせては駄目だ」

 「その通りです! 流石は元ブルゲスタ帝国の四天王」

 ニヤッと笑みを浮かべセフィルディはラギルノへ視線を向ける。

 「ブルゲスタの怪物と云われていたと聞いています。ですが、どちらかといえば策士。いえ、ブルゲスタの頭脳と言った方が良いように思われる」

 セフィルディは何を考えているのだろう。こんなに褒めているという事は裏がありそうだ。

 「頭脳だと……オレには無用なものだ。そもそも自分で考えたことなど全て上手く行ったためしがない」

 「そうか? 以前から思っていたが……よくもコロコロと考えを変えて攻撃してくるなとは思っていた」

 「ガルディス、そんなのは普通のことだ。常にその場の状況に合わせて行動できなければ戦場では死を意味する。だが、それでも負けるんだからな」

 急につらくなりラギルノは俯き手で目を覆った。