司とラギルノは互いに睨み合っていた。

 それをみてガルディスは訳が分からず困惑している。

 (言っていることと行動がチンプだ。ラギルノは何を考えている? 只ツカサを怒らせたかっただけか? 何も考えず行動しているようにはみえない)

 今にも喧嘩じゃ済まないようなことが起きそうになっている状況に対し美咲は、どうしていいか分からず何もできずにいた。

 (待って……ここで司とラギルノが戦ったら大変なことになっちゃう。どうしよう……止めたいけど無理だよ)

 ラギルノのやっていることが理解できない泪は籠の中で横たわり翼で頭を抱えている。

 (もういいから……これ以上の先なんてみたくない。どうしてラギルノさんは、あんなことをしたの?
 英雄になるのが嫌なら断ればいいだけなのに……。そんなに司さんと戦いたいの?)

 ラギルノがとった行動に対してセフィルディは不思議に思い首を傾げた。

 (なぜラギルノは急に、こんなことをしたのでしょう? これではまるで自らを悪者にしようとしているようにしか思えません。
 ですが発言だけは、その通りだと思います。本来ならば私が言うべきことだった。
 それができなかった私は無能。そうですね……この際…………そうしましょうか)

 ラギルノは詠唱すると「バトルアックスよ、こいっ!!」そう言い放ち手を目の前に掲げる。

 すると翳した手の前に魔法陣が展開されて、スッとバトルアックスは姿を現わした。そのバトルアックスを即座に持ち構える。

 「本気で、やるつもりか?」

 「当然だ。遊びで、こんなことをする訳がないだろう」

 「お前は相当な馬鹿だ。何もしなければ名誉を手に入れていたはず。それを自ら棒に振ったんだからな」

 目の前に両手を翳すと司は瞼を閉じ大剣をイメージした。パッと両手の前に炎と竜の飾りが施された大剣は現れる。視認すると即座に大剣を取り構えた。

 ニヤッと笑みを浮かべるとラギルノはバトルアックスを斜め下に構える。即座にバトルアックスに魔力を注ぐと詠唱し刃全体に燃え盛る炎を纏わせた。

 (間違いなく本気だ。避けられないって訳か)

 頭の中で創造すると司は大剣の刃先を斜め後ろへ向ける。

 《業火の如く 闇に燃えし冷たき炎 幾多の魂 恨みの源 悪事を滅す漆黒のオーラ 我が命ず 剣身を覆い対象を滅ぼせ!!》

 詠唱……いや違うな。口上を述べると燃え盛る漆黒の炎が剣身を覆い包んだ。

 (それで来たか。ツカサは一度で終わらそうと思っている。フッ……まあ、こうでなくてはつまらんからな)

 炎を纏ったバトルアックスをラギルノは振り上げる。

 司は漆黒の炎を纏う大剣を振ろうとした。

 ガルディスは何時の間にか剣を抜き凍てつく冷気を剣身に纏わせ身構えている。

 《魔剣 氷結斬!!》

 すかさず剣を一閃し、ラギルノに目掛け凍てつく鋭い氷の斬魔を放った。

 ほぼ同時にセフィルディはガルディスの行動を察し両手を司に向ける。

 《……――我が命じる 対象を浄化せよ!!》……《聖光 闇解除光!!》

 詠唱すると司の頭上に魔法陣が展開された。

 自分たちが狙われていることなど司とラギルノは互いに夢中で気づいていないようだ。

 そのためラギルノはガルディスの放った氷の斬魔を真面に受けバトルアックスと腕の一部を凍らせた。それだけではない。手首から血が流れ落ちている。

 「クッ……ガルディス。邪魔をするな!!」

 キッとガルディスを獣のような眼光で睨みラギルノは怒りを露わにする。

 一方セフィルディが放った魔法は見事に司の創造した闇の炎と大剣を綺麗に消した。

 「なんで邪魔をするんですか!?」

 邪魔をされ司は苛立っている。

 「二人共、少しは冷静になったらどうだ?」

 「ガルディスの言う通りです。そもそもラギルノ、貴方は最初からこうなることを計画していましたね?」

 何もかも見透かしていたかのような態度でセフィルディはラギルノを見据えた。