場所は謁見の間。趣味の悪い赤絨毯の上をドルムスとセフィルディは歩きバイゼグフの方へ向かっていた。

 その足取りは牛歩の如く、ユックリで周囲の者を苛立たせている。

 特にバイゼグフは今にも怒りが爆発しそうだ。

 (グッ……なんなんだ!? 待たせたうえに、あの歩みは……馬鹿にしているのか!)

 ユックリと歩みくるドルムスをベンデアは不快に思いみている。

 (ふざけているの? まあ昔から変な人ではあったけれど……余計に酷くなったわね)

 ピクピクと顔を引きつらせガルディスは横目でドルムスをみていた。

 (何をされているのだ。まるで嫌々親に連れてこられた子供のようではないか)

 チラッとドルムスの方をみたがラギルノは瞼を閉じ思考を巡らせる。

 (どっちも王に向いていないように思える。まあ、まだドルムス様の方がマシかもしれん)

 ジト目で美咲はドルムスをみていた。

 (大丈夫なの? どこか具合でも悪いのかな。でも……それなら今日こないよね)

 呆れた顔で司はドルムスをみたあと目を逸らす。

 (何しに来たんだ? それとも、これも計画のうちに入っているのか……それなら合わせないとな)

 籠の中では泪が涙を浮かべ笑いを堪えている。

 (プッ……駄目……笑っちゃ……無理、ムリ……むりだぁ~助けてぇー)

 どうしてドルムスの歩みが遅いのかを知っている泪は、みんなから流れてくる思考に対し可笑しくて仕方ないのだ。

 ドルムスは一旦たちどまるもセフィルディに促されて歩きだした。

 (あー早く終わらせてくれ……自由になりたいんだぁ)

 困った表情でセフィルディはドルムスを誘導している。

 (ここまでとは……これだと作戦も駄目になってしまいます。なんとかしなくてはいけません)

 そうこうしているうちにドルムスとセフィルディはバイゼグフの目の前まできた。

 一同、息をのんだ。

 ドルムスが一礼するとセフィルディは躊躇いながら頭を下げる。まあ普通ならこのような挨拶はしないのだろう。だがドルムスは一度、城を出た者だ。

 そのため位が低い者がするような挨拶をしたのである。

 「兄上、随分と他人行儀だな。それとも形だけじゃなく本当に縁を切りたいと思っているのか?」

 「何を言っている。肉親の縁とは切りたくても叶わぬもの。それを切るという事は死を意味するのではないのか」

 「なるほど……それでは、この私を殺せば縁が切れると思い来たと」

 その問いにドルムスは溜息をつき頭を抱えた。

 「お前は相変わらずだな。私が、そんなことを考えていると思っているとは……ガッカリだ」

 「フンッ、どうだかな。兄上は何時も人に本音を言わない。城を出て行ったのだって自分の命が惜しいからだろ?」

 「だったら今ここに居ないと思うのだが」

 呆れ果てドルムスは息を一つ吐きバイゼグフをみる。

 「それならば、なぜ急に城に赴いたのですか?」

 「バイゼグフ、お前のことが心配で様子をみに来ただけだ」

 「必要ない! 国民からは不満など出ていないのだからな。それに即位式も間近だ」

 そう言いバイゼグフは、ドルムスを睨み付けた。

 その後も二人の言い合い……腹の探り合いが続き周囲の者は、それらを呆れながらも真剣に聞いている。

 そんな中で泪だけは終わるのって何時なんだろうと思い眠くて欠伸をしていた。