ここは謁見の間だ。既にバイゼグフは来ていて玉座に座っている。その左横にはベンデアが立っていた。

 趣味の悪い赤い絨毯の両脇には左に司と泪の籠を持った美咲が居て右側に居るラギルノやガルディスと向き合っている。

 ドルムスとセフィルディは城に来てはいるが、まだここに現れていないようだ。

 (色々と仕掛けてはある。だけど、それを全て使うわけじゃない。いや使わなければ、それでいい)

 そう思いながら司は無作為に一点をみつめていた。

 (どうなるのかな? セフィルディさんは自分たちで話を上手く進めるから口裏を合わせて欲しいって言ってたけど……なんか心配だなぁ)

 眉をハの字にし美咲は不安のあまり俯いている。

 (ツカサとミサキは上手く取り入ったみたいだ。あとはドルムス様とセフィルディ様が、どう動くかにかかっている)

 顔に出さないがガルディスは不安で異常に緊張しているようだ。

 (まだドルムス様とセフィルディ様は、ここに来ていない。用意された部屋で着替えをしているのだろう。
 いや、それもあるがわざと遅らせているのかもしれん。まあ駆け引きという事なんだろうな)

 真剣な面持ちでラギルノは無作為に床をみている。

 (遅いわね。そもそも今更、何しに来たと云うの)

 不思議に思いベンデアは思考を巡らせた。

 (何をしている。なぜこんなに待たされなくてはいけない)

 余りにもドルムスとセフィルディがこないためバイゼグフは苛立っている。

 (みんな色々なことを考えてるなぁ。なんでドルムスさんとセフィルディさんが遅れているのか私は知ってる。でも、どうなるの? 私は知らないよ)

 籠の中で泪は呆れていた。


 ▼△★△▼☆▼△


 その頃ドルムスとセフィルディは用意された部屋に居て揉めている。そう、ここに来てドルムスが「嫌だ! 帰るんだ!!」と言いダダをこねてしまい、それをセフィルディは宥めていた。……セフィルディよ、お疲れ様です(汗)

 「いい加減にしてください。ここまで来て顔を合わせないのはおかしいでしょ」

 「そうかもしれん。だが、バイゼグフの顔をみたら何をするか分からない。下手をすれば殺してしまう」

 「ハァー……それならそれで良いのでは? そうなったとしても皆は納得するかと思われます」

 怖いことをあっさりと言ってしまうセフィルディと思うだろう、しかしそれだけのことをしているのはバイゼグフなのだから仕方ないのだ。

 「そうだとしても、どんなことをしていようとバイゼグフは私の弟だ。肉親をこの手で殺めるなど……できる訳もない」

 「優し過ぎます。ですが、それはドルムス様の長所ですので」

 「そう思うなら今日はやめぬか。嫌な予感もしてならんのだ」

 そう言われセフィルディは深く溜息をつき頭を抱える。

 「確かに私も嫌な予感はしています。ですので用心だけは怠っていません」

 「そうか……やはり逢わなければならんか」

 「勿論です。さあ行きますよ」

 それを聞きドルムスは諦め嫌々立ち上がり歩きだした。そのあとをセフィルディが追いかける。

 部屋を出ると二人は通路側で待っていた兵士と共に謁見の間へ向かったのだった。