泪は考えていた。そう、これからどうなってしまうのかと……。

 (――ラギルノさん……死ぬつもりなの? でも、このことが演技だと分かれば回避できる)

 そう思うも不安で落ち着かないようだ。

 (只、何時それを決行するか分からない。どうやって知らせた方が……ううん無理だね)

 つらそうである。

 どうにかしたくても自分は鳥だ。ましてや過去の出来事に干渉できないからである。まあ未来を変えるような大きな干渉でなければ大丈夫なのだが。

 そう思考を巡らせながら脳裏に流れてくる映像をみていた。


 ▼△★△▼☆▼△


 そうこう泪が思い考えを巡らせているうちにも刻々と時間は過ぎる。その間にも色々なことが起きていた。語り尽くせないので省略する。

 そして泪の心配を余所に一週間が過ぎたその日――……。

 ドルムスがサイアル城にくると云う知らせを聞きバイゼグフとベンデアはイライラしていた。


 ここはベンデアの書斎。ラギルノはベンデアに呼ばれて話をしている。

 ムスッとした顔でベンデアはソファに座り目の前に立っているラギルノを睨んでいた。

 「どうなっているの?」

 「密かに居場所を探っていた。ですが分からなかったのです」

 「そう……それなら仕方ないわ。分かっているわね……仕留め方は貴方に任せています。但し、しくじった場合は……」

 コクッと頷きラギルノは真剣な面持ちでベンデアを見据える。

 「勿論、覚悟はしている」

 「それならいいのよ」

 「では、まだ仕事中なので持ち場に戻ります」

 一礼するとラギルノは部屋から出て持ち場の中庭に戻っていった。

 それを確認するとベンデアは首を傾げ思考を巡らせる。

 (何を考えているの? 何処でドルムス様を始末するつもりなのか……このままでは城に入ってこられる。
 まさか城でことを起こすつもりじゃないわよね)

 思った瞬間、ベンデアの顔は青ざめた。

 (……だとしても何か考えがあってのことかもしれない。流石に自分の身を危険に晒すようなことなどする訳ないわ)

 そう思いベンデアは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。


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 持ち場の中庭へと来たラギルノは周囲の見回りを始めていた。

 (動きだすのが少し遅かったな。まあいい……恐らくオレも呼ばれるだろう。フッ、久々腕が鳴る。只、ツカサがのってくるか?
 そうでないと失敗だ。やり損だけは勘弁して欲しい。でも……こればかりは分からんしな)

 そう考えているとラギルノは目の前にガルディスが居て驚き後退りする。

 「おい、何時からそこにいる?」

 「何を驚いている? 持ち場が一緒なら嫌でも逢うだろう」

 「ああ、そうだな。いや悪い。少し考えごとしてたんでな」

 不思議に思いガルディスは首を傾げた。

 「お前も考えることがあるのか?」

 「……馬鹿にしているのか?」

 「馬鹿にしていない。只、事実を言ったまでだ」

 ムッとしたがラギルノは堪える。

 「怒りたいところだが、まあいい。それよりも聞いているよな?」

 「勿論、聞いている。恐らく私たちも呼ばれるだろう」

 「ああ、そうだな。いよいよか……」

 何処か遠くをみつめラギルノは思いつめた顔をしていた。

 それに気づくもガルディスは何も言わない。だが、どうしたのかと考えてはいるようだ。

 (らしくないな。何時もであれば喧嘩になるところだ。それに思いつめているようにみえる。まさかベンデアに何か指示されて引き受けたのか?
 だが、もしそうだとしたら今日を待たずにやっていたはず。ラギルノ……いったい何を考えている?)

 そう思いガルディスは何時になく心配に思いラギルノをみる。

 その後も話していたが呼びに来た従者により二人は謁見の間に向かった。