(やっとか……)

 ゴロンとベッドに横たわると司は目を閉じた。

 (本番は……これからだ。あとはセフィルディさんの指示に従って動けばいい。
 まあ失敗したって俺と美咲には影響ないだろう。何があっても知らないと言い張ればいいだけだしな。
 ただ……セフィルディさん達が裏切らないと云う前提があってのことだ。そうなると、まだ油断できない……か)

 色々と考えながら司は眠る。


 ▼△★△▼☆▼△


 ここはサイアル城に隣接する傭兵のための宿舎。その外ではラギルノが先端に大きな石の付いた棒を握り上下に振っていた。

 (セフィルディさんの連絡だと、ツカサの方は成功した。あとは指示通り動けばいい)

 それほど息を切らしていないようだ。

 「フゥ~……物足りん、もう少し重くするか」

 そばにあった大きめの石を鎖で括りつけた。まるで石斧である。

 すると棒が、ボキッと音を立て見事に折れた。

 「……」

 折ってしまいラギルノは、どうしようかと思い考える。まあ、その辺からみつけて来た棒だから探せばいいだけなのだ。でもラギルノは、この棒を気に入ってたらしい。

 そのため愛着があり落ち込んでしまった。

 (ハァー、まあいいか……。どこかで良さそうな棒をみつければな)

 そう思っているもラギルノは、かなり落ち込み肩を落としながら歩き何処かに向かう。


 ▼△★△▼☆▼△


 ここは宿舎の中でガルディスの部屋だ。

 椅子に座りガルディスは、テーブルの上に置いてある帽子をみている。

 (荷物を整理していたら懐かしい帽子が出てきた。この帽子を何年かぶっていない?
 国を出てからか……いや、あの一件があってからだ。あの時……もう少し私に力があれば国に意見を述べられたはず。
 いや力があっても勇気を出せたのか? まあ無理だろうな。そんな勇気があれば国を出ていない)

 その帽子は結構ねんきが入っていて色あせている部分や解れも目立っていた。

 だが、それを抜きにすれば青色もしつこくなく羽や諸々の装飾品など洒落ていてカッコいい。

 テーブルの上の青い羽根つき帽子をガルディスは持ち目を細めてみる。

 (修復すれば、まだ身に付けられそうだ。糸と針はあるから、あと布や隠す飾りだけだな)

 足元に置いておいたリュックの中を探ってみた。

 「ろくな物がない……仕方ない買ってくるか」

 帽子をリュックの中に仕舞うとガルディスは立ち上がる。そして扉の方を向くと歩きだし部屋から出て行った。


 ▼△★△▼☆▼△


 「いよいよだな」

 ソファに座りドルムスは目の前に居るセフィルディを見据える。

 ここはセフィルディの屋敷の一室だ。

 コクッと頷きセフィルディはソファに座った。

 「はい、これで次の段階に進めます。多少は変更はありますが」

 「うむ……この国が安泰であるならば誰を王にしても問題ない。それに彼ならば私よりも向いているだろう」

 「どうでしょうか……ただ国民を納得させることができるか不安です」

 つらそうな表情でセフィルディは俯き無作為に一点をみつめる。

 「勇者と聖女であるならば納得させるだけの肩書は十分だ」

 「そうでしょうが……やはりやめませんか?」

 「前も言ったが私は王になどなりたくない」

 ムッとした表情でドルムスはセフィルディを睨んだ。

 「ハァー……どうなっても知りませんよ」

 どうしても折れそうにないドルムスをみてセフィルディは溜息をつき頭を抱える。

 そして、その後も二人は話し合っていた。