あれから司はバイゼグフとベンデアに泣きつかれるも首を横に振る。

 それでもバイゼグフとベンデアは色々と提案して司をひきいれようと必死だ。

 「いったい何であれば納得いくのだ?」

 「そうですね。安定した賃金を毎月いただけるのであれば協力しても構いません」

 「おお、それで良いのか?」

 その言葉を聞き司は、ニヤっと笑みを浮かべる。

 「ええ……但し金額はコッチで決めさせてください」

 「ああ、それで構わん。如何程、必要なのだ?」

 「何かに記載したいのですが?」

 バイゼグフはそれを聞き紙を渡すようにベンデアに言った。

 「承知しました。では……」

 「いえ、自分で持ってきた紙とペンで書きたいのですが」

 バッグの中からペンと紙を取り出しバイゼグフにみせる。

 「うむ……問題ないだろう。それに書くことを許可する」

 「記載するので、それまで待ってください」

 そう言い司は金額と念書のようなものを書き始めた。

 それをバイゼグフとベンデアはみている。

 不安に思いながら美咲は司をみていた。そう、その紙とペンがなんなのか知っていたからだ。

 ジト目で泪は籠の中から様子をみている。

 (なるほど、あのペンて司さんが創ったものなんだね。だけど……誰が再現したのかな?)

 不思議に思い泪は司の手元へ視線を向けた。

 (アレは特殊な魔法のペン。それとそのペンで書いた物は、あとで消すことが可能なんだよね。
 予め紙に書いてあった物を一時的に消える魔法で何もない状態にする。だけど消す魔法は?)

 そう思いながら泪は司をみているとあることに気づいた。

 (あの紙って、みたことがない。もしかして何か仕掛けがされてるのかな?)

 何か特殊な紙だと思い泪は目を輝かせる。

 書き終えると司は即行で記載した書類をベンデアに渡した。

 ベンデアは書類を確認したあとバイゼグフに渡す。

 書類を受け取ったバイゼグフは書かれている内容をチェックし始める。


 因みに書かれている内容は【定期的に城での勤務を希望する。その際、ミサキと小鳥のルイも一緒に同行させたい】と金額が記載されていた。

 「……――うむ、問題ないだろう」

 「では、サインをお願いします」

 「そうだな。ベンデア、ペンをよこせ」

 そう言われベンデアは所持していたペンをバイゼグフに渡した。

 ペンを受け取りバイゼグフは書類の指定された所にサインをする。

 その間、司は同じ物を書きベンデアに渡した。

 それをバイゼグフはベンデアから受け取りサインをする。その後、二枚とも司に渡した。

 それらを受け取ると司は指でなぞり確認するフリをして二枚の書類の文字を消し新たな文章を浮かび上がらせる。

 (もしかして、これって司さんだからできる芸当ってことだよね(汗)……)

 種が分かり泪は、ガッカリした。

 終えると司は一枚だけみられないように丸めリボンで縛る。それをベンデアに渡した。

 「なぜ丸めてリボンで縛ったのですか?」

 「ベンデア様、内容は確認しているので見栄えのいい方がと思い」

 「うむ、司の言う通りだ。この方が保管するにもいい」

 そう言いながらバイゼグフはベンデアから丸められた書類を受け取る。

 「それでは明日から定期的に城に赴きたいと思います」

 「頼んだぞ。ミサキもな」

 「はい、ありがとうございます」

 そしてその後、司と美咲はバイゼグフとベンデアに挨拶をしたあと部屋を出て屋敷に戻ったのだった。