あれから美咲は部屋の準備を整え終えるとラギルノとガルディスを各自の部屋に案内した。

 それを確認すると司は束の依頼書を持ち自室にこもる。

 その後この部屋にくると美咲は、ソファに座り残っているお菓子を食べながら自分の冷めたお茶を飲んでいた。

 テーブルの上には泪の入った籠が置かれている。

 泪は美味しそうだなと思いながら美咲をみていた。

 (鳥でもクッキーは食べるよね? 欠片でいいからくれないかなぁ)

 それに気づいたのか美咲は泪へ視線を向ける。

 「そういえばルイに餌をあげてなかったなぁ。クッキーってあげても大丈夫なのかな? でも変な物を食べさせて死なせちゃったら大変だし……どうしよう?」

 どうしようかと美咲はクッキーと泪を交互に何度もみた。

 (大丈夫だからください……お願いします)

 ウルウルと目を潤ませながら泪は美咲に訴えかけるようにみる。

 「んー欲しいのかな? なんか、ジーっとみてるし……どうしようかな。うん……そうしよう」

 それを聞き泪は、ヤッターっと思った。

 「待っててね。豆でクッキーみたいに作ってくるから。味がない方がいいだろうし」

 そう言い美咲は部屋を出てキッチンに向かう。

 (味なし豆クッキー……いや、いらないです。普通のクッキーを食べさせて~!!)

 そう思ったところで美咲に届く訳もなく……。

 (思っても無理だよね……我慢するか)

 泪は諦めて美咲を待つことにした。


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 ここは司の部屋。机に向かい司は依頼書をみている。

 (さて、どうする? やっとこれで内部に潜れる。だが、この依頼を熟して信用させないといけない。そうなると、できるだけ数を熟した方がいいのか?
 いや、待てよ……ただ数を熟すだけじゃ駄目だ。バイゼグフが喜ぶものを多く創る)

 考えが纏まると依頼書を最初から仕分けし始めた。


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 ウロウロと部屋を行ったり来たりしながらラギルノは思考を巡らせている。

 (なんで俺はこんなことをしているんだ? そもそも三年前のあの時から何もかもが狂った。地位も名誉も手にしていたと云うのにツカサ達さえ現れなければ……)

 悔しさのあまり壁を、ドンと叩いた。

 (だが過去のことを、とやかく悔やんでも仕方ない。それによく考えてみれば……今の方が面白いしな)

 ニヤッと笑みを浮かべ窓の外へ視線を向け再び色々と思考を巡らせる。


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 場所は移り、ガルディスが居る部屋だ。

 ソファに座りながらガルディスは、ニヤニヤしながらテーブルの上に置かれたクッキーを食べている。

 「これはミサキの手製の焼き菓子。やっと食べれた。昔はツカサに阻止されたからな」

 テーブルの上に置かれたティーカップを持ちお茶を口に含んだ。

 (まさか……ミサキとツカサがこの件に関わってくるとは思いもよらなかった。三年前のあの一件から顔を合わせられないと思っていたが。
 恐らく、まだ忘れていないだろう。あの一件さえなければ……あの大国での大惨事も防げたかもしれない。
 ……いや、それは私が勝手に思っているだけ。もし居たとしても防げなかったかもしれないだろう)

 つらそうな表情でガルディスは無作為に一点をみつめている。どうやらガルディスは司や美咲と仲直りをしたいようだ。
 その後もガルディスは過去のことを思い返していたのだった。