ここはサイアル城。そしてバイゼグフの書斎だ。

　現在ここには、バイゼグフの他にベンデアとラギルノとガルディスがいる。

　何やら三人は真剣な面持ちで話しているようだ。

　「お前たちの素性は調べさせた。まさか……かつて敵国同士であった者が同じ仕事をしているとはな。これは……偶然か？」

　疑いの目でバイゼグフは、ラギルノとガルディスをみた。

　「はい、勿論です。できるならば一緒になど居たくない」

　「ガルディス、それはオレの台詞だ！　なんで、お前なんかと同じ仕事をしなければならない」

　二人は睨み合っている。これは半分演技だ。という事は半分本当なのである。まあ、そうだろうな。元々犬猿の仲なのだから。

　「まあ待ってください。では偶然なのですね」

　「ベンデア様……そうなります。それはそうと……相変わらず、お美しい」

　「ゴホンッ……ガルディス、お前は何時も同じことを言うな。いや、それは本心か？」

　ベンデアは疑いの目でガルディスをみた。だが表情を見る限り別段、嫌な訳ではないようだ。

　それにしても相変わらずガルディスは女性に対して歯が浮くようなことを言っている。そのせいで昔、酷い目に遭ったにも拘らずにだ。

　まあ一生、女癖は治らないのだろうな。

　「ええ……当然ですよ。そこに飾られている花が枯れてしまうほどに魅力的……いえ、私は……」

　「ガルディス、もういい。ベンデアも何を顔を赤くしておる！」

　呆れた表情でバイゼグフはガルディスとベンデアをみた。いや、ラギルノも呆れている。

　「これは申し訳ありません。今後、気をつけます」

　「いえ、ベンデア様が悪いのではありません。全部……この私が」

　「まあいい。ラギルノとガルディス、お前たちの仲が悪いことは聞いていた。だが今のを見る限り本当だったようだな。しかし……なぜ喧嘩をしなかった？」

　思ってもいないことを聞かれラギルノとガルディスは言葉に詰まった。

　（これは……思ってもいなかったことを言われた。どうする……何と答えたらいい）

　ガルディスはそう思いながらラギルノへ視線を向ける。

　「はあ……ただ単に、こんなヤツと喧嘩して仕事をなくすのが馬鹿々々しいだけ」

　そう言いラギルノは、ジト目でガルディスをみた。

　「馬鹿々々しい……それは私の方だ」

　「まあ待て……なるほど、お互い仕事をなくさないためか……良い心がけだ」

　「ええ、バイゼグフ様。私もそう思うわ。どうされます？　あの件、任せましょうか？」

　ベンデアに聞かれバイゼグフは、うむと頷いた。

　「そうだな。この二人なら適任かもしれぬ」

　「では、ガルディスとラギルノに任せることにいたします」

　そう言うとベンデアはラギルノとガルディスの方へ目線を向ける。

　「二人に、やって頂きたいことがあります。それとこれは、あなた方にしかできません」

　「それは、どういう事でしょうか？」

　「ガルディス、貴方も知っている者たちの所に定期的に行ってもらいます。いえ、ラギルノも彼らのことを知っているはず」

　なんとなくベンデアの言っていることを理解していたが、わざと二人は首を傾げた。

　「それは誰なのでしょうか？」

　そうガルディスに聞かれベンデアは勇者である司の所に向かい依頼や品物の受け取りなどをするよう指示する。

　それを聞いたラギルノとガルディスは悩んだフリをしたあと承諾した。

　その後ベンデアから二人は細かい説明を受ける。

　そしてラギルノとガルディスは、そのあとベンデアに指示があるまで警備の仕事をやれと言われ部屋を出ていった。