泪は眼前の光景と脳裏に映し出されていることをみながら考えていた。

 (いつまで私は過去に起きたことをみていなきゃいけないのかな。でも今は、みていないといけないんだよね。二人のイチャイチャ光景も……ハハハ……)

 そうあれから美咲と司は草刈りを全て終えたあと、ハバス達と屋敷の中の掃除を始める。その後、各部屋の簡単な片付けなどを済ませた。


 そして現在に至る……――……ここは美咲と司の寝室だ。因みに夜である。

 そのため泪は目のやり場に困っていた。そう泪が入っている籠が、ベッドの脇にある小さなテーブルの上に置かれていたからである。

 (あー後ろ向いても聞こえてくるし……恥ずかしいよ。でも、もしグレイと両想いになれたとしたら……。えっ! なんでムドルさんの顔が浮かんだの?)

 不思議に思い泪は考えた。

 (私って本当にグレイのことが好きなの? なんかよく分からなくなっちゃった。グレイはデビルミストの一件から以前より構ってくれなくなった。
 どちらかと云えば、ムドルさんの方が……。グレイは私のことをどう思ってるんだろう)

 そう思い泪は、つらい表情を浮かべる。

 (考えない方がいいかな。それよりも、ここで起きたことをみていなければいけない)

 そう考えがまとまると泪は急に眠くなり寝てしまった。

 そして泪は夢をみている。それはまるでグレイフェズの心の中を覗いているかのようだ。

 夢の中のグレイフェズは泪のことを常にみていた。

 (……ルイ、お前のことが好きだ。出逢った、あの日から……ずっとお前のことをみている。だが、お前は別世界の人間……帰る方法を探してやらないとな。
 俺の祖先のように帰れないなんてなったら、つらいだろう。……つらい思いはさせたくない。
 だけど今こうして一緒に居られるだけでも……俺はいいと思っている。……偶にあの日のように抱きしめたくなるけどな)

 そんなグレイフェズをみていた泪は『そうだ……元の世界に帰らなくちゃならないんだった』そう言い目が覚める。

 (……寝てたのか。でも今の夢って……もしあれが本当にグレイの気持ちなら。私とグレイは両思いだよね。
 でも……私は清美と元の世界に帰らないといけない。……グレイも私たちの世界に、ムドルさん……は無理かな。
 だけど元々は二人共、美咲さんと司さんの子孫だよ。美咲さんと司さんは元の世界に戻れなかった。それならグレイとムドルさんを……。
 やっぱり無理だね。グレイとムドルさんは、この世界で産まれたから。でも……だけど……)

 そう考えながら泪は、ツイうっかりと美咲と司の方をみてしまい顔を真っ赤に染めた。そして慌てて後ろを向く。

 (う…………刺激が強すぎるってば。ハァー……そもそも夢だし、それがグレイの本当の気持ちだとは限らないよね。
 でも……もしかしたらってこともあるし、あとで確認してみよう)

 そう思い今は、そのことを考えないことにする。

 (そういえば明日は何するのかな? 私なら部屋の模様替えするけど……)

 泪は辺りを見回した。

 (アッチコッチ……ボロボロだね。これを綺麗にするの大変だろうなぁ)

 そう考え泪は自分じゃ無理と思い苦笑する。

 そして泪は、その後も眠くなるまで色々と思考を巡らせていたのだった。