ここはアドバルドの城下町のナルベムゼ草原側。そして城下町よりも北東に位置する場所に、今は使われていない寂れた屋敷が建っている。

 屋敷の庭は、かなり荒れ果てていた。それだけではなく、外からみても分かるほどに屋敷全体が壊れている。そう、まるでお化け屋敷のようだ。

 その屋敷の前には、美咲と司がハバスと数名のお供の者と立っていた。勿論、泪も美咲が持つ籠の中にいる。

 「この屋敷に、住むんですか……」

 「なんかお化けが出てきそうな屋敷だね」

 「どうでしょう? そういえば……そういう噂も、チラホラ聞いた気もしますが」

 それを聞き美咲と司は、顔を青くし身震いしていた。

 「じょ、冗談だよな?」

 「さあ、どうでしょう……出るかもしれませんよ」

 そう言いハバスは、クスクスと笑っている。

 「ハハハ……噂だしな。うん、大丈夫……何も出ないさっ!」

 そう司が言ったその時……。ガサガサと屋敷の庭に生えている雑草が揺れた。


 ――ガァー!!――


 そう鳴き黒い影が飛んでいく。

 「うわぁぁぁぁぁぁぁー!?」

 「キャアァァアアアー!!」

 司と美咲は、驚きお互い抱きついた。

 「……あーアレは、ガナスです。というか……相当な怖がりのようですね。それに仲も良いと……」

 そう言いハバスは、美咲と司を覗き込んでいる。


 ――……因みにガナスとは、カラスに似た鳥類の魔獣だ。それと、カラスよりも大きい。


 それを聞き美咲と司は、照れながらお互い離れる。

 「ハハハ……そうですね。私は、こういうの駄目なんだよなぁ」

 「俺は……ただ……驚いただけです」

 そう言い司は誤魔化し苦笑した。

 「クスクス……そういう事にしておきましょう。さて、この屋敷をどうにかしませんとね」

 「そうですね……だけど、この屋敷どうしたんですか?」

 「ミサキ様、元々依頼されていたんですよ。この屋敷を売却できないかと」

 それを聞き美咲と司は納得する。

 「それで、ハバスさんが購入したという訳か。それはいいが……これをどうやって綺麗にするんだ?」

 「勿論、お二人に綺麗にして頂きます。但しタダとは言いませんよ」

 「そうなると……最初の内職ってことだな」

 そう言い司は、屋敷を見回した。

 「これって、普通にやったら……かなり時間かかりそうだね」

 「ああ……俺が、何か創るしか方法はなさそうだ」

 それを聞き美咲は頷く。

 「もし何か手伝えることがありましたら言ってください」

 「ハバスさん、ありがとうございます……多分そうなる」

 そう言い司は、ハバスへ視線を向けた。

 「さてと……何が必要だろうな」

 そう司は言い目を閉じ考え始める。

 その様子を泪は、籠の中でみていた。すると、他の映像が泪の脳裏に浮かび上がってくる。

 (これって……今他で起きていることだよね?)

 そう思いながら泪は、脳裏に浮かんでくる映像をみていた。