ここはギルドマスターの部屋。
 あれから美咲と司は、この部屋で待機していた。
 そして、しばらくすると食事が運ばれてくる。

 二人は現在、その食事の豪華さにどうしようかと迷っていた。……因みに泪は、目を輝かせヨダレを垂らしている。

 「なんか昔を思い出すな」
 「うん……あの時と違うけどね」
 「ああ……うっかり、あの時……出されたお菓子とか飲み物を口にしなければ……あんなことにならずに済んだ」

 そう言い司は遠くをみつめた。

 「そうだね。あの時は、私が生贄にされて……バウギロスに食べられそうになった。その時、私は能力を使ってバウギロスを自分の体内に……」
 「そうだったな。でも時間はかかったけど、美咲とバウギロスを分離することができた」
 「それまでの間、色々あったけどねえ」

 美咲はそう言い過去のことを思い返している。
 そうこう二人が話している間、泪は籠の中で聞いていた。するとなぜか美咲や司が思っていることが、映像と共に泪の脳裏に流れてくる。

 (……これって、そうか……。必要なことだから……わざとみせてくれてるんだね)

 そう思い二人をみていた。


 ▼△★△▼☆▼△


 それから数時間後、ハバスが戻ってくる。
 そして美咲と司は、ハバスの話を聞いていた。

 「とりあえずは、泊まる屋敷を確保させて頂きました」
 「待ってください。屋敷って……どういう事ですか?」
 「ツカサ様、これから長期戦になると思われますので」

 そうハバスに言われるも司と美咲には、どういう事なのか理解できない。

 「言っている意味が理解できない」
 「大臣に取り入るためには、少し時間を要しますので。その間、その屋敷で内職などをされると良いかと」
 「……内職……なるほど、そういう事か。俺と美咲がその屋敷に住みついて、何かやり始めたと云う噂が流れれば……だが無理なんじゃ?」

 そう司が言うとハバスは、ニヤリと笑った。

 「最初は名乗る必要はありません。徐々に明かしていけばいいのです」
 「そうか……でも、人をどうやって集める。それに内職って、まさかとは思うが」
 「勿論、ツカサ様にしかできないことをして頂くつもりです」

 それを聞き司は、首を振ったあと頭を抱える。

 「そういう事か。フゥ……まあ、それしかないか」
 「司、もし私のできることがあったら手伝うね」

 そう言われ司は、優しく微笑んだ。

 「そうだな……美咲。気持ちだけ受け取っておく……恐らく、俺しかできないような内職だと思うしな」

 司はそう言うと、悲しい表情になり俯いた。

 「ごめんね……私は、生物や植物を体内に吸収することしかできない能力だから……余り役にたてなくて」

 そう言い美咲は、俯き目を潤ませる。

 「いいえ……美咲さまにも内職を持って参りますので、ご安心ください」
 「私にもですか? できることなら、嬉しいです」

 手で涙を拭いながら美咲は、微かに笑みを浮かべた。

 「良かった。じゃあ、その屋敷で待機していればいいんだな」
 「ええ、そうなります。先程も言いましたがその間、上手く話をつけますので」

 そう言われ司と美咲は、コクッと頷く。
 そしてその後も美咲と司は、ハバスからこれからすることの説明を受けていたのだった。