――……翌日。


 ここはアドバルドの城下町にある冒険者ギルド。辺りには、色々なタイプの男女がいる。人数的には少ない。

 現在、美咲と司はここに来ていた。そう、ここで目立っておく必要があったからだ。

 しかし美咲と司は冒険者の登録をしたあと、なぜかここのギルドマスターに呼ばれ奥の部屋へと向かう。

 部屋までくると二人は、ギルドマスターとソファに座り話をしていた。

 「これは、どういう事なんですか?」

 「勇者……ツカサ様、ここで話された方が良いと思いましたので」

 そう言いギルドマスターは、真剣な表情で司と美咲をみる。


 因みにこのギルドマスターは、ハバス・ルトグという名前だ。そして、女性である。そのため年齢は伏せておこう。


 それを聞き司と美咲は、不思議に思った。

 「言っている意味が分からない」

 そう言われハバスは、ニヤリと口角を上げる。

 「ツカサ様にミサキ様、登録する際……隠す気であればどうとでも書けるはず。それなのにそうしなかったという事は、わざと目立ちたかったのですよね?」

 「……そうだとしたら、どうする?」

 「フフッ……どうもしませんが、やっぱりそうなのですね」

 そう言われ美咲と司は、冷や汗をかいた。

 「やっぱり、そうなりますよね。私は、やめようって言ったんですよ」

 「ミサキ様、それはどういう事でしょうか?」

 「聞いてくれます? 司ってば、お金に困ったから目立って……城で雇ってもらおうなんて馬鹿なことを考えてさぁ」

 それを聞きハバスは、クスクスと笑う。

 「なるほど、確かにここで目立てば城に潜り込めますね」

 「潜り込む……なんのためにですか?」

 「ツカサ様……まあ、いいでしょう。何を考えているのかは、なんとなく分かりますので。では、バイゼグフ王子に紹介をしたいと思います」

 そう言いハバスは、不敵な笑みを浮かべる。

 (この人……勘が鋭いのか? それとも……元々バイゼグフ王子をどうにかしたいと思って。んー……どっちにしても、ありがたいことだけどな)

 そう司が思っているとハバスは首を傾げた。

 「そういえば、その小鳥は?」
 「これは、ルイです。俺たちに懐いてしまって」
 「なるほど、ですが……そのまま城に連れて行けませんね。少々お待ちください、鳥籠をお持ちいたします」

 そう言いハバスは席を立ち部屋をでる。

 「なぁ……どうなっているんだ?」

 「司……私にも分からない。だけど……多分、私たちの目的が違くても……バイゼグフ王子に紹介するつもりだったかも」

 「ってことは……この国じゃ、バイゼグフ王子のことをいいと思っているヤツが少ないのかもな」

 それを聞き美咲は頷いた。

 そうこう二人が話しているとハバスは、お洒落な鳥籠を持って部屋に入ってくる。

 「お待たせしました。中々可愛い籠がみつからず、これなどどうでしょう?」

 「どうだろう……その前にルイが大人しく籠に入ってくれるかだけど……」

 それを聞き泪は、司の頭から飛び立ち籠に乗った。その後、籠をくちばしで突っつく。

 「入れてって言ってるみたいね」

 そうハバスは言い籠の窓を開ける。

 それをみた泪は、籠の中に入った。

 ハバスは中に入ったことを確認すると窓を閉じる。

 「珍しいな。今まで嫌がってたのに……」

 「そうなのですね。ですが、もしかしたら……なんとなく分かって籠の中に入ったのかもしれませんね」

 「そうだね。ルイは、不思議なんだけど……私たちの言葉が分かってるみたいだし」

 そう言い美咲は、ニコッと笑った。

 「クスッ……では、本題に入りましょうか」

 それを聞き司と美咲は、真剣な顔になる。

 そしてその後、美咲と司はハバスの話を聞いていた。それを泪は、鳥籠の中でみている。