ここはアドバルドの城下町。そしてここはセフィルディの屋敷だ。

 その屋敷の客間には、美咲たちがいる。


 あれから美咲たち五人は、約一時間かけてここに辿り着いた。

 現在、美咲たちは椅子に座り話をしている。

 「いきなりサイアル城には行けませんので」

 そうセフィルディが発した言葉を聞き泪は、なんとなく理解した。

 (なるほど……そういう事かぁ。あとで、本名を聞いておこう……)

 そう考え泪は、再び耳を傾ける。

 「セフィルディ、そうだな。私がいきなり城に行けば、大騒ぎになるだろう」

 「それで、これからどうするんですか?」

 そう言い司はセフィルディをみた。

 「とりあえずは、機を伺い……城に乗りこみます」

 「そうなると……その間、やることがないな」

 「いいえ、ツカサ様。やることはありますよ」

 そうセフィルディに言われ司は首を傾げる。

 「やること……何をさせる気だ?」

 「まぁ……一つは、これから起こるかもしれませんが」

 「今から? どういう事だ」

 セフィルディが何を言いたいのか、その意図を理解できず困惑した。

 そうこうしていると扉がノックされる。

 「……来たかもしれませんね」

 セフィルディは扉のそばに待たせている侍女に確認するように指示した。

 その後、侍女は誰なのか確認したあと部屋の中へ入れる。

 入ってきたのは水色で長い髪のイケメン剣士の男性だ。

 その男性が入ってきた瞬間、美咲と司とラギルノは顔を青くし驚いた。

 「なんで、ここにガルディスがいる!?」

 「ツカサ、居てはいけないのか?」

 そう言いガルディスは、司を凝視する。


 この水色の髪の男はガルディス・クライムと云い、かつて美咲と司がこの世界へ来た頃に一緒に旅をした者だ。

 魔氷剣のガルディスと云う異名を持つが、自分では白銀の貴公子と思っている勘違い男である。まぁ女癖や性格を覗けば、ラギルノとやり合えるぐらいの実力者である。

 そうかつてガルディスは、ラファストル国の王都ファスリアで四天王と云われていた。そしてラギルノとは敵同士、だ……いや、だったのだ。


 そう言われ司は首を横に振る。

 「そういう訳じゃない。ただ、なんでここに居るのか不思議だっただけだ」

 「そうだね……城、ううん……ユリナーシャはどうしたの?」

 その名前を聞きガルディスは、顔が青ざめた。

 「ミサキ……ああ、その名が貴女の口から出るとは思いませんでした。いえ、俺は今でも貴女のことが」

 と、言いかける。

 すると司は、咄嗟にガルディスに目掛け手を翳した。それと同時に、岩石を想像してガルディスの頭に落下させる。

 それに気づきガルディスは、瞬時に剣を抜き岩石を斬った。すると岩石は、綺麗に真っ二つに割れてガルディスの両脇に落ちる。

 「クッ……ツカサ、俺を殺す気かっ!?」

 「ああ、そうだな……そうなってくれれば良かったのに」

 そう言い司は、ジト目でガルディスをみた。

 「ゴホンッ、そのくらいにしてくれないかね。それに、ガルディスを呼んだのは確認のためだ」

 「これは……ドルムス様、よくご無事で……。今までどこに居られたのですか?」

 「うむ、そのことはあとで話す。今は、このラギルノのことだが……本物か?」

 そうドルムスに問われガルディスは、ラギルノの方へ視線を向ける。

 「違う……と、言ったら恨まれそうだからやめとこう。はい、間違いなく……ラギルノ・ダルフェでブルゲスタの怪物と云われていた男です。だが……しぶとく生きてたとはな」

 「ガルディス、お前もな。まさか、こんな所で会うとは思わなかった」

 そう言いラギルノは、ガルディスを鋭い眼光で睨んだ。

 それに気づきガルディスは、凍てつくような氷の眼差しで睨み返した。

 そうこの二人は犬猿の仲のため、互いに会わせてはいけないのである。

 その後も、ラギルノとガルディスは睨み合っていた。

 それをみた美咲たちは、どうしたらいいのかと戸惑っている。

 そして四人は、ガルディスとラギルノが喧嘩をしないようにお互いを遠ざけた。