……――私はなぜか空を飛んでいた。それもみたこともない場所……ううん、ここはさっきみていた景色だ。

 そう思いながら私は、木の枝にとまる。そして自分の姿を見回した。

 「……!?」

 私は驚く。そう自分の体に、モフモフの白い毛が生えていたからである。


 これって、どういう事? まるで鳥……。


 何がなんだか分からなくなり困惑してきた。

 すると木の下から声が聞こえてくる。その声に聞き覚えがあった。

 そう声の主は美咲さん。私は下をみる。その後、美咲さんの肩へ降り立った。


 ▼△★▽▲☆▼△


 ここは遥か約数千年前のスルトバイス。そのセルフィルス大陸にあるアドバルド帝国の名もなき村……いや、ログロスの村である。

 この頃は、村に名前があった。しかし現在に至るまでに、なんらかの理由で名前が消されたのである。

 そしてこの村には、勇者と聖女が滞在していた。勿論、自分たちの素性を隠してである。


 ここまでの経緯を語ると長くなるのだが、気になるだろうから簡単に語ろう――……


 勇者が大国……いや、サウザマグナ国のバスチーナ城を怒りのまま消滅させ後二人は各地を転々とした。

 それから約三年後、この村にくる。


 ……――本当に簡単だがこんなところだ。


 因みに勇者の名前は久遠(くおん)(つかさ)、二十歳。聖女の方は龍凪(りゅうなぎ)美咲(みさき)、二十歳である。

 そうこの世界に降り立った時は、十七歳だった。それから色々なことがあり今に至る。


 現在、美咲は木に寄りかかり考えごとをしていた。

 (ここにくる間に、色々あったなぁ)

 そう思いながらお腹を摩っている。


 本来なら美咲は司の子供をこの村で産むはずだった。

 この村に着くなり司は、この世界に復讐すると言いだす。

 それを止めるため美咲は、龍神バウギロスに手紙を書いて送る。

 だがその数日後、旅の疲れと心労もあり流産してしまったのだ。


 そうこう考えていると、一羽の白い小鳥が美咲の左肩にとまった。……その小鳥は、泪である。

 「わぁ~可愛い。みたことのない小鳥、この辺に多いのかなぁ」

 そう言い美咲は、泪を自分の右手の甲にとまるように促した。

 泪は言ってることを理解し美咲の左肩から右の手に移る。

 「人懐っこいね。どっかで飼われてたのかな?」

 そう思い泪をみていると首輪が付いていることに気づいた。

 「やっぱり誰かに飼われてたんだね。首輪のプレートにルイって書いてある。名前まで可愛い、でもなんでここにいるの? 聞いても分からないよね」

 「ピヨ、チュン――……(私にも分からないんです!)」

 そう泪が言うも美咲に鳥語は理解できない。……まぁ当たり前なのだが。

 「なんか言いたそうだね。言葉は理解してるっぽい。そのうち言葉を話してくれるかなぁ……って、あり得ないか」

 そう言い美咲は、ニコッと泪に笑いかける。

 (これって……過去に来ちゃったってことだよね。でもなんで? 多分、誰かが私をここに……。それも、美咲さんの下に)

 泪はそう思いながら美咲をみた。

 「ねぇ、聞いてくれる? 私ね……本当なら今頃、司の子供を産んでこの手で抱いていたかもしれないんだ。でも……」

 そう言い美咲は、涙ぐむ。それでもその話を続けた。

 その話を聞き泪もまた泣く。そして飛び立ち美咲の頬まできた。すると泪は体を美咲の頬に、スリスリする。

 「慰めてくれるの? ありがとう……」

 美咲はそう言うと涙を拭った。その後、再び自分の右手にとまらせる。

 そして泪は、しばらく美咲の話を聞いていたのだった。