ここはカロムの屋敷の裏口にある門の外側。そこには荷馬車が用意されていた。

 あれからここにくるとカロムとラグロは、泪とメーメルを荷馬車に乗せる。

 その後マリリサが御者と護衛を連れてくるのを待っていた。

 その間二人は、沈黙を続けている。そう話すことが、尽きていたからである。

 一方、荷馬車の脇にはキルリアが居て二人のことを警戒していた。

 そう泪の影に潜むためである。

 (どうやって潜り込もうかしら? あの二人が近くにいるから……)

 そう思いキルリアは、どうしようかと困っている。

 そうこうキルリアが考えていた。

 するとカロムとラグロは、マリリサの姿がみえ門の方へと向かう。

 キルリアはそれをみて、瞬時に動き荷馬車の中へと潜り込む。すると泪の影に、スッと溶け込んだ。

 その後マリリサは、御者と護衛の三人を連れてきた。

 御者は痩せ型の男性で、護衛の男性が二人共に体格がいい。そして護衛の一人は、スキンヘッドである。

 「三人共、話は聞いているな」

 そうラグロが問うと御者と護衛の二人は頷いた。

 「ラグロ様、安心してください。この三人には、話をつけてありますので」

 「そうか……それなら大丈夫だな」

 そう言いラグロは、三人を順にみる。

 「では、自分の持ち場についてください」

 それを聞き三人は、持ち場についた。

 「さて、行くか。それと金の方は、いつも通りティハイド様の所に振り込んでおく」

 「分かりました。道中、お気をつけてください」

 そう言いカロムは、軽く頭を下げる。

 それをみたラグロは、手を軽く上げたあと荷馬車に乗りこんだ。

 その後、荷馬車は動き出した。

 (やっと行ったか。あとは……一週間後だ)

 カロムはそう思いながら屋敷の方をみる。そして門から屋敷の方へと向かい歩き出した。

 それをみたマリリサは、カロムを追いかけるように屋敷へと入る。



 ――場面は変わり、泪の夢の中――


 「……」

 私は何をみせられているのかと絶句した。……言葉がでない。余りにも、酷すぎる光景をみてしまったからだ。


 これってメーメルから聞いた勇者と聖女の話だよね? そうだとしたら……でも、そもそもなんでこの光景をみてるの?


 そう考えながら私は、美咲さんと司さんがしていることをみている。


 ……――美咲さんは、誰かに手紙を書いている。

 『バウギロスがこの手紙の内容を読んで、なんって思うだろう。でも……早く司を止めないと。このままじゃ……』

 そう言い美咲さんは、手紙を持ってみつめていた。

 美咲さんはその後、その手紙に書かれている魔法陣に手を添える。すると、パッと手紙が消えた。

 『……お願い。司を止めて……』

 そう言いながら美咲さんは、手を組み目を閉じている。


 ……――それをみた私は、悲しくなってきた。


 もしこれが本当のことなら……。それに、この光景を誰かが私にみせている……多分。でも、なんで?


 そう考えていると急に私の意識が、その光景の中へと吸い込まれる感覚に襲われた――……。