ここは冒険者ギルド。その受付のカウンターの奥の部屋。この部屋は、ギルドマスターの部屋だ。

 そこにはグレイフェズとドルバドスがソファーに座り話をしている。

 そうドルバドスは、このギルドのマスターだ。

「グレイ。更新手続きの前に、聞きたいことがある」

「……。ルイのことか?」

 そう聞き返すとドルバドスは頷き真剣な表情になる。

「単刀直入に聞く。あの嬢ちゃん聖女か?」

「いいえ、それは違います」

 ドルバドスはそれを聞き首を傾げた。

「違う? どういう事だ。あのプレートに表示されている内容は、どうみてもこの世界のものと異なる」

「その事なのですが……」

 そう言うとグレイフェズはその理由を説明する。

「……なるほどな。そうなるとあの嬢ちゃんは、巻き込まれて召喚されちまったってことか」

「ええ、ただ気になることが」

「気になること?」

 そう問い返すとグレイフェズは、そのことについて話し出した。

 そう、ルイがなぜ聖女召喚に巻き込まれたのか、過去にも似たようなことはなかったのかと……。

「過去にか……。まさか、そのことを調べろってことか?」

「調べろ、というか。情報通のドルバドスさんなら、知ってるかと思ったのですが」

 そう言われドルバドスは難しい表情で考え込む。

「いや、聞いたことがねぇな。もし過去にも同じことがあったのなら、どこかに文献が残ってるかもしれんが」

「そうですね。ただ、それがどこにあるか……」

 グレイフェズは俯き一点をみつめる。

「そうだな。……で、どうする? 依頼してくれれば、調べられるが」

「確かにその方が早い。それでは、お願いします。自分でも調べてはみますが」

 それを聞きドルバドスは、ニヤッと口角を上げた。

「じゃ、とりあえずお前の更新が先だな」

 そう言われグレイフェズは、プレートをドルバドスに渡しみせる。

 その後、しばらくして更新を終えると依頼の手続きをした。

「これで、手続きは完了だ。さて、嬢ちゃんを一人にしておくのも心配だし、そろそろ行くか」

「そうですね。何をやらかすか分かりませんし」

 それを聞きドルバドスは「ガハハ」と笑い、自分の膝をパンッと叩く。

 そしてその後、二人は部屋を出ていった。



 ――場所は移り、ここはギルドの掲示板から少し離れた場所に設置されているテーブル――


 テーブルに寄りかかり、退屈そうにしている少女が一人いる。そう、魔族の姫メーメルだ。

「はぁ~退屈じゃあー……」

 そう言いながらテーブルの一点をみつめる。

(それにしても、なぜじゃ? ドルバドス(ここのギルマス)は妾が魔族だと分かっていながら、冒険者登録を許可した。事情を話したも、それを踏まえて了承……。
 うむ、何を考えておるのかよう分からぬ。しかし、悪い者でもなさそうじゃしな。それに仕事ができるお陰で、お金も手に入り欲しい物を盗まずとも堂々と買える)


 そうメーメルは、あれからこの町に来ていた。その後、持っていたこの国のお金を使い過ぎてしまい底をつく。その時、冒険者ギルドの存在を知る。

 冒険者ギルドに来たメーメルは、登録をするもすぐにドルバドスに魔族だと気づかれた。プレートに隠蔽(カバー)の魔法を使ったにも関わらずにである。

 ドルバドスはその後、メーメルを自分の部屋に連れて行く。そこで詳しく事情を聞くと魔族であることを隠し通せと言う。そしてどんな仕事でも断らないことを条件に提示する。

 勿論、自分でも仕事をみつけても構わないとも伝えた。

 それを聞きメーメルは感謝し了承する。


「……感謝せねばならぬな」

 そう考えがまとまると掲示板の方を向いた。

「ほう、珍しい。まだ若い女性のようじゃな。あの者も仕事を探しに来ておるのか?」

 そう思いながら掲示板の前に居る泪をみている。

(うむ、話しかけてみようか? だが、警戒されても困る。どうしたものか……)

 そしてその後、メーメルはしばらく悩んでいたのだった。